今日行われた将棋叡王戦第4局。藤井が初のタイトル戦敗北か、と注目もあり、相当数のメディアが集まったようだ。結果は後手番藤井がノーミスで走り抜けて快勝、戦績を2-2に戻した。最終局は6月20日、平日だがテレワークに持っていくように努めよう。

 

 今日の将棋は先手番が伊藤でもあり、作戦選択の主導権あり、作戦勝ちができそう。。。と見込まれたが、観戦しているとなぜか穴熊に潜ろうとしている。。この時点で「うーん」です。いや、もちろん伊藤匠が採用する以上、それなりの目算もあり、研究の裏付けもあるのだろうけれど、角交換しているところで玉を端に持っていく・・・金銀を同様に牽引すると角を打ち込まれるので、それはできない・・・堅くない・・・左翼で戦闘になると存分に戦えないのではないか?と連想してしまうのである。羽生ー渡辺の最初の竜王戦七番勝負第1局で後手番羽生が渡辺の穴熊を上から踏みつぶした対局を思い出す。

 

 2筋の歩交換に伊藤が出て、藤井に歩が入ったところで開戦となった。後手は下段飛車を最大限活かした布陣である。先手はやはり8筋、9筋が薄いが、大丈夫だろうか?

 

 

 ▲2八飛△6六歩▲同銀と銀が6筋に誘導されたところで△9五歩。ここはアマレベルでも▲同歩は△9七歩▲同香△8六歩▲同歩△9六歩▲同香△8六飛がいかにも筋なので、躊躇うところである。受けがイマイチなら攻めで緩和、と考えれば、▲5五銀左か▲7五歩が目に入る。

 

 

 感想戦では前者は取り上げられていて△6四歩に▲9五歩と手が戻っていた。これだと後手の持ち歩の数が違うので、本譜の攻撃はない。後者は藤井が「いやですね」とはいうものの手順の披露はないまま。本譜は上述の▲同歩を伊藤は選択し、△9七歩▲同香△8六歩▲同歩△9六歩▲同香△8六飛に▲8七角で防御。伊藤本人も不本意な風であったが、この展開を読めないはずもなく、実に不可解である。

 

 △8一飛▲8六歩△6四角となると、双方の角の機能差が大きく、形勢は後手に傾いたように感じるのだが、AI評価はそこまでではない。これも不思議である。

 

 ▲7五歩△6五歩▲7七銀で銀が7筋に戻り、先手が少し持ち直したか。△4六角で▲4八金と金が右側に動くのは痛いが、△6四角と戻ったところで▲2四歩。

 

 

 「この手はいい手に見えると、大盤解説会の佐々木勇八段」と実況サイトにはあるが、わざわざ飛車先を重くする点はどうなのか? △2二歩で後手は歩切れになるが、7筋で歩を入手できるので、意味合いが大きくない。この交換はしない方がよかったのではないだろうか。

 

 以下、▲4七金と飛車の横利きを通すのはポイントではある。△7五角と後手は歩切れを再度解消。▲9四歩△8五歩と合わせるのが急所か。▲7六角と事前回避したところで、△3五歩が「ここに指が伸びるんですか?」という一手。▲同歩△8六歩と取り込んで△3六歩による金の右辺追放の味が見えてくる。

 

 ここで伊藤は▲9三歩成とし、△3六歩に▲8二歩と叩くのだが、△3一飛と逃げられると▲9三歩成が無駄手になっている。恐らくは疑問手。

 


 

 ここから藤井の猛攻が始まる。伊藤陣の左翼は駒が少なく、粘れなかった。

 

 棋譜をさらってみたが、伊藤に結果的には無駄手が多かったというか藤井が無駄手を指させるように仕向けたという方が正確かもしれないが、そういう印象である。穴熊への玉の移動は十字砲火点への誘い出し、右金が5筋から右側に移動させられたのも同様。▲9三歩成は伊藤の咎になるのだろうが、藤井はこれをまさに打ち返して、△9三香とこのと金を奪って反攻している。

 

 相手の指し手を逆用する藤井の指し回しの見事さよ。これだけの品質の将棋を指されると、なかなか勝てない。名人防衛で何かが違ったのだろうか。