竜王戦:決勝進出で「棋士」まであと1勝、奨励会員・山下三段の進撃は続く…井出五段は勝負手放つも見切られる<6組・井出隼平五段-山下数毅三段> : 読売新聞 (

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 名人戦第3局のレビューの最後でも触れたが、こちらもかなり凄いことになっている。コアな将棋ファンであれば奨励会の成績表をチェックして、年齢の若い奨励会員や女流とのtwo wayで戦っている女子の戦況をフォローしているもので、山下は中2で奨励会三段に昇段、22年度後期、23年度の奨励会三段リーグを既に3期戦い、順に9-9、13-5(次点:2008/6/3生まれの山下はここで突破していれば15歳4か月未満で中学生プロになっていた)、11ー7で推移。これはいつかはプロになり、A級に到達する器ではあろう、という予断はできるな、という間合いだったが、今期の竜王戦6組での急速上昇。。。危ない将棋を拾って準決勝まで進出してきての、この勝利である。これで次戦に勝利すれば奨励会三段リーグの次点一回にカウントされるということで、既に次点を一つ持っている山下はフリークラス入りの権利を確保する。(今期降段点を取らないことも要件になるが、そこは問題あるまい)

 

 次戦はレーティング12位の藤本渚で、ここはモノホンの大勝負。今期竜王戦本戦出場者が次々と決まっているが、藤本より上のレーティングの持ち主で本戦に進出するのは佐々木勇気と斎藤慎太郎しかいない。藤本は現時点でも相当に有力な挑戦候補である。その藤本を撃破して、本戦進出ともなれば、一日ごとに棋力上昇しているであろう山下がトーナメントを重ねる内にさらに能力開花するのでは?とか現役奨励会会員(挑戦手合いの段階では上記記事の規定により四段になっているはずだが)が挑戦とか、いやいやフリークラス辞退して奨励会員のまま七番勝負に出たらどうなるの?とか、次期いきなり1組昇級とか凄いなぁ、とか妄想が膨らみすぎる。

 

 準決勝だが、相手が井出ということで、大方のファンは山下の勝利を予想したはずで、実際、そのように形勢も推移していたと思う。1図の直前、読売の記事にもあるように井出は大長考に沈んで△7五金の勝負手を決行したのだが、山下はノータイムで▲6一角で即詰みに仕留めた。井出は自玉の詰みを認識していなかったのだろうか? していれば△4二歩と一度は受けるところで、一体どちらが上級者なんでしょうか?という顛末ではある。

 

 

 山下は年齢差からすると藤井を仰ぎ見て修行をしてきた世代になる。藤井と互角に戦えるとはいわないが、好勝負を演じてくれる素材ではあろうから、暫く注目します。