昨日今日で行われた将棋名人戦第3局は藤井の圧勝で3連勝。名人防衛まであと1勝。これはもうこのままですかね。豊島、24年度に入って全敗で、この流れで突然、藤井に勝てるとは思えない。藤井サイドでいえば、24年度の対局はそれなりに苦戦していたのが、ここで黒雲を晴らすような快勝。藤井の性格からして一勝で何かが変わることはないと思いつつ、悪い気分ではなかろうと想像する。

 

 この将棋は1日目から豊島陣の組み立てが素人目にも難しかった。1図の段階で、後手は一手損しての角交換を強いられ、3筋に歩を謝るしかなく、玉形は居玉のまま、攻撃側の銀の出動も遅れている・・・感触が悪い。そして、素人目線だと後手の2筋がいかにも危ない。▲3五歩△4三銀▲1五銀からの2筋突破をまず防ぐべく、△1四歩と指したくなるのだが、豊島を含めプロはそういう思考はないみたい。1筋からの攻撃を誘発するからだろうか? でも本譜のようにストレートに銀出を許すよりは相当にましではなかろうか。

 

 

 豊島は考慮3分で△6四銀。。。このままこの銀を8六で交換しようとしても居玉であるので▲9五角の王手飛車があり、それには△7三角でいったんは返せるが角交換から再度▲9五角を食う、もしくはダイレクトに飛車交換に持ち込まれる等、変化が激しすぎる。それを3分で読み切れるとは思えないので、この時点では豊島はそこまで激しい手順に持ち込む必要なしと危機感がなかった? 私には理解できない。

 

 ▲7八金に△4一玉とわざわざ戦場に近づく。この手はいきなり107分の大長考。。。思考プロセスと時間消費がシンクロしていないような印象が出てくる。AI目線では悪手でないようなのが不思議なのだが、▲3五歩△4三銀▲1五銀とされると、人間目線では早くも先手リードであろう。(AbemaのAIでは先手53%程度だった・・・)

 

 △7五歩▲6六銀△7六歩▲2四歩△同歩▲同銀△2二歩で1日目が終わり、封じ手は▲1六角。

2筋を突破されて先手に竜ができることは確定的。豊島は藤井相手にこれだけのビハインドを背負うか。第1局、2局と苦戦の将棋を逆転するところまではこぎつけたが、本局はあやがなさすぎるのではないか? 換言すれば、ここまで3戦して1回も作戦勝ちになっていない。中盤の健闘は称賛できるが、藤井相手では厳しすぎる。

 

 右桂を起用し、持ち歩も増やし、先手盤石。この段階でもAIは先手60%程度の評価値でしかないのだが、訳が分からない。何か挽回できるような方針なり指し手が後手にあるのだろうか?

 

 以下藤井は角を3八に展開し、後手の7筋を穿りにいく。豊島は隠忍自重を重ねるが、ついに形勢の好転はない。4図の▲7二金が巧妙で当たりになっている7六銀を救済できる。ここまで激辛に徹されては豊島に打つ手は全くない。

 

 

 言いようのないくらいの完勝。この将棋は内容自体も残念だった。。。。。

 

 他方、竜王戦6組準決勝で奨励会三段の山下が井出を下して決勝で藤本渚とぶつかる。これに勝てば棋士になれ、かつ本戦にいける。藤本目線でも本戦進出がかかる。これは両者若いながらも人生がかかる大勝負。真向観戦します。