今年度に入って将棋界の主要対局のクォリティが爆上がりしているが、今日の叡王戦第3局もランク入り確定の激闘。この将棋に関していえば、伊藤匠が終盤力で藤井を上回り、逆転勝ち。藤井がタイトル戦におけるカド番はもとより2局消化以降で負け越すのも初めて。凄いものを目撃した思いだ。

 

 指し手の感想の前に雑感。

 

・終局後の感想戦、盤側でないところに佐々木勇気と糸谷が座っている。盤側まで移動して、あれこれ入ってもいいと思うのだが、藤井の対局の感想戦で非対局者が割り込むのを観たことがない。気圧されているの?

・A級、ちょっと前までA級だった棋士が遠慮モードだったところで、勝又がどっかり座り込んだのが目についた。その彼もやはり控室の検討を差し挟んだりはしない。それをしないのであれば、なぜそこに座るの?とは思った。

・対局者の盤側に置かれた主催者不二家のカントリーマアムの『じわるバター』。。。袋が開封された様子がない。そこは主催者をリスぺクトして対局者は一つでもつまんでほしい。他方、10時と15時のおやつは別室でいただくのに、このお菓子はどこで食べるのだろうか?という疑問はあった。マアムをその場で食べていいのであれば、2回のおやつも対局場でいただいてもいいのでは?

 

 内容については、今日は触りだけ。

 

 1図直前からの伊藤の踏み込みが素晴らしい。後手陣には傷が多くあり、勝ち目がなさそう、と私は感じていたが、敢えて角を飛車取りに移動させての桂打ちからの猛攻を敢行。先手には相当な駒が渡るが、なるほど先手玉に肉薄していた。

 

 普通の人であれば2図は本譜通り、銀を打つ。正着とされる▲7九桂△6八歩成▲7七銀打の順を人間が指せるとは思えないが。。。感想戦でも両対局者はこの手順を認識していないようで全く盤面に出てこない。そして盤側にいる棋士達は質問をしない。何のために君たちはそこにいるの? ちなみに両対局者は2図の前の局面を掘り下げていた。

 

 

 3図で受け止めたかと思われたが、伊藤の△8八銀打が継続の好手。7六馬さえ盤上に維持できれば攻防で手段に困ることはないとの判断が素晴らしい。

 

 玉の頭を抑えられ、万事休したかと思われた先手は4図の桂打ちから犠打を繰り出して、6六歩の除去に成功する。この攻勢防御を藤井はどの段階で構想したのだろう。

 

 

 竜と馬が先手玉上空に居座っているが、手番は後手、駒も大量に入手した後手が勝ちやすいのは間違いない。とはいえ、具体的手段がいくつも思いつきそうで実戦としては、特に秒読みでは判断が難しそう。。しかし伊藤は正着の△6七歩を指す。以後も渋滞なく押し切った。

 

 

 伊藤は立ち居振る舞いも落ち着いており、1局藤井に勝利した効果もあるのか、風格も感じさせる。何か急激に強くなっているのでは? 次局まで間隔が空いたが、竜王戦1組3位決定戦等主要対局はあり、緊張感をもってこの間を過ごせるはず。次局は先手番だし、相応の期待勝率になっていそう。

 

 断固テレワークにしよう。