昨日、将棋王座戦本戦1回戦開幕戦があった。カードが羽生ー佐藤なので、名人戦の余韻と疲弊感のある中ではあるが、耳目を集めたはずだ。日経もタイムラインを逐次提供しており、この映像とYoutubeの盤面表示サイトを併用して私も適宜観戦していた。

 

 

  夕食休憩時点では互角だったが、この時点では後手番佐藤が相掛かりを受けているのが目を引いた。駒組も8五飛車系のスマートなもので、もしや研究?と想像できる。会長職を離れて自前での検討が深くなっているのであれば、観戦応援側としてもうれしい。

 

 私自身の夕食が終わって、局面をみるといきなり佐藤勝勢になっていた。

 

 普通は△3六桂と縛るか。以下、▲2一竜△6二玉▲7三銀△同竜▲同歩成△同玉▲3七銀△2七歩▲2九歩△7二銀のような進行になるのだろうが、後手が相当に手厚い。馬で桂馬を取れるし、後手玉への寄り付きが見えない。

 

 しかしAIは△3二竜を推奨しているようである。『これはまたリスキーな手だなぁ。残り時間も少ないし、読み抜けが心配なので、その手は人間は採用しないのではないかなぁ』と感じたのだが、佐藤はこの路線に踏み込んだ。

 

 上記リンクを引用すると、こう記載されている。

 

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【午後9時】華麗な詰み
△1六桂(80手目)が華麗な一手で詰み筋に入った。気づきにくい詰み手順で、解説陣も感嘆の声をあげる。

【午後8時45分】決め手
△3六桂が手堅い攻めに見えたが、佐藤九段は30分以上の考慮で△3二竜とした。竜を捨てる派手な一手で、決め手のようだ。先手がその竜を取ると、詰みがあるということとみられる。深浦九段は「かっこいい手ですね」と感嘆の声をあげ、具体的な詰み手順を探している。

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 羽生は▲同竜を着手する前に相当に考えていた。観戦側からすると奇異であるが、他に変化手順もなく、羽生は竜を払った。即座に佐藤は△2八銀。▲同玉に△1六桂もノータイムで『お前は既に死んでいる』感が満載である。

 

 実際はタイムラインの記事は誤りで詰みはないが必至がかかるということらしいが、▲1七玉△2五桂▲2六玉△3六金▲2五玉△1四銀▲2四玉△2三歩▲同竜△同銀▲同玉△4五馬▲3四歩まで滞りなく進んだ。

 

 私の脳裏では佐藤勝ちが所与になっていて、二回戦以降の対戦相手を想像したり、羽生さんを時々駒沢公園の朝ランで見かけたりするのだが、負けた翌日の明日でも来るのかなぁ?などと考えたりしていた。

 

 

 AIは△1二飛推奨。なるほど。△3三飛でも勝てそう。

 

 ところが△4一角としたので、▲2二玉△3二飛▲1一玉と隅に逃げ込まれ、△3四馬▲2二歩△3三飛▲1二香△1三飛と追撃しても▲2四桂が妙手でもう届かない。

 

 羽生は長考の時にどこに助かる変化があるか精査していたのだろうか。佐藤サイドからしてみれば、胸が潰れてしまう。自分自身がこういう負け方をすれば(何度もあるけれど)、3日くらいは悔しすぎて寝られなくなりそう。。。orz

 

 最近は大逆転事例も目につくようになったのだが(日曜日放送のNHK杯戦も相当に強烈だった)、本局は格別。将棋は怖い、言い古されたセリフだが、頭の中でリフレインしている。