土曜日の叡王戦第2局、藤井のタイトル戦連勝ストップ/伊藤匠の対藤井戦&タイトル戦初勝利でいつも以上に話題になっている。将棋の内容もすっかり解析されているようだが、素人目線でも述べることもあろうと思うので、臆せず書かせていただきます。

 

 戦型は伊藤の角換わり志向に対し、藤井が3三金型で応じて、定跡を外れることになった。(とはいえ、この二人であれば、AIとみっちり行き届いた検証をしていると想像する)

 

 まず注目されるのが1図。まだ昼前の局面だが、緊迫している。アマであれば、▲5五角、▲8二角の飛車香両取りから検討を行うだろう。実況サイトには本譜との比較評価が全く行われていないので、両取りの角打ちがどれほどダメなのかも分からない。(この局面、私はAbemaで視聴できていませんので、悪しからず)

 

 自分なりに読んだが、▲5五角には△6四角と打ち返すのだろうが、▲同角△同歩にもう一度▲5五角と打てば、▲6四角の味が非常に良いように思う。とはいえ、藤井がこんな単純な変化の評価を誤るわけもないので、何か後手に良い展開があるのだろうか。ここは専門誌の解説を待ちたい。

 

 本譜の▲8三角はもとより馬の守備力に期待したものであるが、この馬が標的になる(棋王戦でもあった)展開もありうるので、伊藤はとことんまで見極めて『そうはなりにくい』と判断しての着手だったはずだ。

 

 

 

 2図の局面も興味深い。アマであればまずは金を取ってから考えるよね、というのはあるが、△3三同桂となるとこの桂馬が中央に働いてくるので、金がいた時よりも後手の駒の効率が改善されているとの評価もできそうである。後手を持っているのが藤井なので、人読みも入り、なおさら警戒したくなる。正着は▲3七銀上だということだが、『そこまで防御を考える必要があるのであれば、そもそも▲7六歩と歩切れになるのを厭わず打ってわざわざ後手の飛車を六段目に誘導したのが、どうだったのよ?』と指摘したくもなる。

 

 

 本譜は後手の中段の戦力が増えて、形勢が後手に傾いた。しかし既に双方残り時間が乏しい。藤井はここで17分を割いて△6六飛とした。AbemaのAI評価を待たずとも、私が驚いたところである。解説の本田も同様の反応だったと記憶する。△4七銀、△4五銀、△2七銀、本譜、△8七歩成を藤井は比較検討したということだが、

 

・△4七銀、△4五銀の比較であれば、前者の際に▲4一銀の切り返しの有無を考えるまでもなく後者を普通は選ぶはず。前者は馬当たりでしかないが、後者は馬銀の両当たりであり、馬の10時方向の進路を塞いでいるので、深読みしなくても判断はつきそう。

 

 

・普通の人なら本譜もほとんど考えないか。この飛車は先手の金に一手かけて取ってもらえば十分に後手に貢献したと評価できるし、その一手を利して攻撃をする方が速度で勝っていそうでもある。

・△8七歩成は即時的な効果が良く分からないし、具体的な先手の手順は予想しきれないものの、わざわざ歩切れを解消させてやるの?と考えるので、直ぐには指したくない。

・藤井が指したかった△2七銀は飛車当たりにになっているメリットはあっても馬を存分に掣肘しきれていないのが気になるので却下か。

・ということで、ノーマルアマであれば△4五銀が選択肢になりそう。

 

 レベル違いでも、アマならアマなりに指し手の構想を巡らせるのはいい練習になるはずだ。

 

 4図も難しい局面で、▲3三歩も視野に入るが、この手のみが勝ち筋というのだから恐ろしい。(▲3三歩△同玉▲4一飛△4二銀打で厄介という)

 

 終盤の伊藤はほぼノーミスだったようで、強かった。

 

 これで、伊藤も眼前の霧が晴れた感覚があるのかもしれないなどと想像するのも傍目からは楽しい。もとより当事者はそういう境地ではないだろうけれど、将棋界がこれでさらに活性化するだろう。