今日の日曜日もまた藤井祭り。午前中は将棋NHK杯戦決勝を観戦、これから棋王戦第4局を通しで観戦するのが正しい過ごし方であること、論を待たない。まずは結果が明らかになったNHK杯戦について感想を述べます。

 

※この将棋の結果については、Youtube界隈が非常に煩わしいことになっていて、観たくもないのに目に入ってきてしまった。最初に言及したとされる人物、それを止めなかったと推測される周囲の人々は軽率だろうが、拡散してはならない情報をPVが欲しいのか「批判殺到」とか「ネタばれ」とか言い募る将棋系Youtuber達も真っ当とは思えない。本来は非表示手続きをしたいところだが、その手続きをしにいくだけで、さらに観たくもないものが目に入りそうで、この1週間はYoutube自体からも私は遠ざかっていた。言い切るが、二度と目の前に出現してほしくない輩なので、これから一つずつ非表示にするつもりだ。

 

 そういうノイズが一杯あったが、この将棋は二年連続の同一対局者による決勝戦であり、羽生の解説もありでと、真摯に観戦できる建付け。内容も高水準で、良い勝負だった。

 

 戦型は角交換腰掛銀で、佐々木が自分の研究をぶつける展開。1図の段階でも佐々木は考慮時間に移行していない! △2四銀はやや捻った受け方で、普通の人なら角当たりになる△2二銀と打ちたくなるのだが、人読みをしたのだろうか? ここで佐々木は考え込む。羽生は「考慮時間を全部使ってもいいくらい」と解説していた。
 

 

 佐々木は▲7一と(!!)△8二飛▲7二と(!!!)△同金。と金を捨てる発想が凄いが、とにかく飛車の横利きか縦利きの何れかを消去すれば楽になるということで、これは白地では思い浮かばない。羽生も驚いていましたな。

 

 ところがそれだけ凄い手順を出せるのに▲2二歩とは何たることか? この手はアマでも一定の心得のある人なら絶対に指さない、排除から入る類の手である。この手では勝てるはずがないから別の手を探すしかない→香車を逃がすのがよいかなと着想→▲1四歩で時間を稼げるな・・・と考える。▲1四歩△同歩▲1三歩△同銀▲同角成△同玉▲3一桂成でどうか?と読んでみて、△9八桂成▲同香とか△6六角とか後手の手段候補があるが、これをどう評価するかという筋道を辿るか。本譜よりは相当にマシな感じはする。なお、△7二同飛であれば飛車の縦利きがないので、先手玉の脅威は減り、▲2二歩はあったが、この局面での▲2二歩はいくらなんでも暴挙であった。

 

 

 藤井のラッシュが始まり、△9八桂成▲同香△9九角▲7八玉△6六歩と追撃がきつい。

 

  ここで▲8六歩と堪えていればまだしもだったが、佐々木はド利かされの▲5六銀。△3一金▲同桂成で角の補充があって、△6七角を食らってしまっては▲5六銀は一手の価値はなかったです、と告白するに等しい。大差でリードしていたはずの残り時間は逆転し、佐々木が先に考慮時間を使い切る。▲同銀△同歩成▲同玉△8七飛成▲5八玉△6七銀▲4七玉△5六銀不成▲3八玉と追い込まれ、NHKのAIは藤井に98%の評価をしていたと記憶するが、ここで藤井が珍しく△5五角成の大落手。角を成り返るなら△6六角成と金当たりにしておけば同じ詰めろでも厚みが違った。

 


 佐々木は瞬時に▲2四飛と進出。これで先手玉に2九の逃げ場が確保された。△3七金▲2九玉△2八金▲同飛△同馬▲同玉△2六飛▲3九玉△2七竜▲3八銀△2八竜▲4九玉と進んだところで、藤井は何か打開策がないか歩の成捨てを繰り返し模索する。まさに身悶えと形容して支障ないくらいの様子である。この人にとって敗北をここまで受け入れがたいからこそ、見えないところでの努力もあるのだろうか、と思わせるくらいの風情であった。

 

 策が尽きて、△3六歩と突きだして詰めろをかけるが、5図の角打ちが絶好の返しとなって、佐々木の勝利が我々の目にも明らかになった。

 

 
 佐々木勇気については小学校3年生から4年になる時の春休みに小学生名人を取って以降、ずっと気にかけてきたので、全棋士参加棋戦優勝、しかも藤井を倒しての優勝ということで、よかったね・・・と喜んでいる。周りの人達の喜びも理解はできるが、次回同様の状況ではよくよく弁えていただければ幸いです。