アカデミー賞11部門ノミネートの本作。『グロい』という評価もあり、やや回避志向が私にはあったが、まぁ、観ておくか、と観に行きました。なんか凄いものを観たな、というのが正直なところで、大好きなものを観たとは言わない。

 

 

粗筋はこう。

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不幸な若い女性ベラは自ら命を絶つが、風変わりな天才外科医ゴッドウィン・バクスターによって自らの胎児の脳を移植され、奇跡的に蘇生する。「世界を自分の目で見たい」という強い欲望にかられた彼女は、放蕩者の弁護士ダンカンに誘われて大陸横断の旅に出る。大人の体を持ちながら新生児の目線で世界を見つめるベラは時代の偏見から解放され、平等や自由を知り、驚くべき成長を遂げていく。

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 現時点での映画COMの評価点は3.9。私は7/10。映画史に残る作品だろうし、アカデミー賞もいくつかの部門は取るだろう。主演女優賞(エマ・ストーン)は相当に有力だと思う。他方、この表現方法でないといけないの? もっとスタンダードに抑えてしかし神髄が見えるような描写はないの等々描写方法に対ししんどく思うところはあった。鑑賞中は原作未読でもあるので結末が分からないままであり、どういう風に落ちをつけるのか心配しながらの鑑賞になったので、これもしんどかった。落ちが分からないのでドキドキするタイプの映画ではないのだ。

 

 以下、ネタバレなしで感想を述べます。

 

 

・美術、衣装は素晴らしい。なぜあの衣装(前半、写真のようなゴージャスな衣装を常時着用:彼女、衣食住に関する通常の教育を受けていないらしいのだが)なの?とか現実的な疑問を抱いてはいけない。

・R18+指定映画を109シネマで鑑賞するのは初めて。滅多にないだろうな~ 要は成人映画指定ということですよね? エマ・ストーンが存分に体当たりの演技を繰り返している。

・一つ一つのシーンに籠められた制作側の意図は一見では良く分からない。好きな人はネット鑑賞が可能になったら分析すればよいのだろうが、私はそこまでこの映画の世界観にのめり込もうという意欲がないので、それはしない。

・主人公の周りにいる男性陣がそれぞれのフレームで主人公に接しようとして、どれもこれも主人公が乗り越えてしまうのがこの映画のカタルシスなんですかね? 主人公を外に連れ出すダンカン(マーク・ラファロ)が特に良い演技をしていて、アカデミー助演男優賞に選出されるのも当然か。

・魚眼レンズの多用には意味があるようで(主人公を制約しようとする思惑みたいなもの?)、意味もあるのだろうが、観ている方とするとややしんどい。

・この映画の主人公についていえば、『ザリガニ』(教育を受けていない女性がボーイフレンドに文字を教えられて爆発的な成長をみせる)『アルジャーノンに花束を』(脳手術を受けた主人公が短期間で天才となり、しかし手術の欠陥が表面化して急速退化する)を思い出させるものがあった。脳外科のシーンでは『ハンニバル』か。

・一見の価値はあると思うが、どうみても万人向けではない。それがこういうメジャー扱いされているのが奇異ではある。この監督(ヨルゴス・ランティモス)はそういう方らしいが、前作を全く観ていないので、この辺の映画界の評価が良く分からないでいます。

・同行鑑賞した妻は「ダリの絵やバルセロナの聖家族教会を連想させるものがあった」と言っていました。