将棋王将戦第3局2日目。今日の私は茨城県常陸那珂市に出かけてフルマラソンを走っており(この件については別途エントリーを書くが、12月の大壊滅、年末の体調不良からどうにか復活して3時間23分で仕上げ、まずは満足している)、局面にアクセスできたのは14時半頃だった。

 

 64手目△5六歩と藤井が垂らしたところで、もしかするととっくに終わっているのではないかと懸念はしていたが、菅井は持ち堪えていた。評価値は藤井68%くらいだっただろうか、意外に伸びていないが、局面を冷静にみると評価値はどうであれ先手の展望が見えにくい局面ではあった。遅い昼食を取りながら経過をみていると、菅井は歩を成り捨て、5筋に歩を謝る。紛れの可能性を自ら捨てるか・・・AIがどういっているのか私は確認できていないのだが、人間の将棋であればこれはないわ・・・ここから先は無惨で菅井は歩切れに追い込まれ、藤井のと金製造を防げなくなり・・・いいところなしであった。12月中旬以降、菅井の成績が急下降しており対戦相手が厳しいこと(藤井、渡辺、伊藤、藤本)を考えればありえなくはない展開なのだが、内容がどうもよろしくない。藤井と仕合うからこうなるのか、不調モードになりかけたところで藤井と仕合う羽目になったのが不幸なのか。大昔の番勝負を引用して恐縮だが、中原誠の名人防衛1期目の対戦相手が加藤一二三で、全くいいところなしにストレート負けを食ったのだが(一度も有利な局面がなかったと記憶している)、あれと似たくらいのレベル差を感じる。叡王戦の善戦で評価が激上がりした菅井だが、今回の戦いぶりはプロ間ではどう評価されるだろうか? ※ストレート負けでも三浦が羽生に名人戦で敗退した時は三浦の評価は下がらなかった。

 

 将棋の内容に入る。昨日の記事でも触れたが、1図の踏み込みがまずもって素晴らしい。▲6六銀では△6三金と上がられ、以下△7三桂以下△6五歩等の圧迫が見えるし、そもそも何のために銀を出撃させたのか訳が分からなくなるので、菅井は▲同銀。こういう形になりやすい戦型なのだが、いかにも重い。本譜は△8六歩が入り、藤井が先制した。

 

 

 本譜は▲7五飛△5七角▲7六飛△8七歩成と進行した。AI推奨手順でもあるというのだが、後手はゼロ手で角打ちと歩成ができたようなもので、人間目線では耐えがたい。▲6三銀成とどうせお荷物にしかならない自軍の銀を始末してしまい、△同金▲7一飛成とするのは論外なのだろうか? まだ歩成りや角打ちが入っていないので、戦いようがあるような気がする。

 
 本譜はさらに▲8三歩△7二飛で封じ手になる。

 

  

 

 もはや銀の自爆はできないので▲7三歩で一度は銀を助け、△6二飛に▲5五歩は飛車の可動域を拡大し、持ち角の設置場所も増えるのでいい味ではあった。しかし△8四角成と腰を落とされると7四銀のお荷物感は払拭できない。

 

 菅井は▲5六角と銀の顔を立てようと苦心の一着を捻りだした。3図で藤井が△5六馬と精算して△9二角としていればそれまでだったようだが、本譜は△6五歩。▲同角△7三桂と桂の活用と歩の除去はいかにも本筋の駒運びであり、この局面では最善手ではないとしても、アマとしては見習いたい発想ではある。ただ菅井も▲8七角とと金を除去できて、かつ角が後手玉に間接照射できる位置に移動できたのは好材料であり、やや形勢は盛り返した。

 

 問題は4図で、本譜は▲5三歩成△同金▲5八歩と雌伏モード。冒頭の感想になるわけである。 

 

 △6七飛▲9六角で角が急所から外れる。△6六飛成で銀を脅かされ、▲6三歩△同金▲同銀成△同竜と銀は救出したが歩切れになり、▲5九金左△6七歩に受ける歩がない。▲5五角、▲4六角、▲5三歩成△同金で▲3二角成以下の突撃とか、勝てないまでもあやがありそう、もしくは見栄えがましな棋譜になりそうな手順はあったと思うのだが、よりにもよって雌伏モードか。。。勝てないよなぁ。

 

 ということで、第4局に向けての好材料は皆無。31日のA級順位戦8回戦一斉対局では菅井が佐藤天彦に勝利しないとほぼ挑戦権は決まり、降級争いも佐藤が脱出と、最終戦向けの興趣が削がれてしまうのだが、日時の間隔が乏しい。菅井に回復できるような材料が間2日で準備できると言い切るのは相当に難しい。