今日の将棋は朝日杯で藤井が登場、NHK杯は羽生対永瀬と濃厚。NHK杯をビデオ録画すれば、朝の10時から16時までぶっ通しで高レベル将棋を堪能できる建付けだった。私自身は色々と運動系の用事があり中抜けがあったが、それでも大宗はカバーできたので満足している。(※今日は女流名人戦もあったが、流石にそこまでは回らない。大半の将棋ファンもそうだろう。なぜここまでの重要対局集中をよしとするのか・・・合理性が見いだせない)

 

 朝日杯は藤井が1回戦の斎藤に快勝、2回戦の増田は大激戦(去年の同じところでの激突を思い出す)も切り抜け、無事に準決勝に進出した。準決勝の相手は糸谷がデフォルトだろうが(他の3人は申し訳ないがレーティングが低すぎる)、これも日本シリーズ決勝の激闘は思い出されるものの、スイープだろう。決勝の相手は反対の山で有力な順に永瀬、渡辺、近藤だろうか。ここは誰か気合を見せてほしいところだ。

 

 将棋の内容だが、斎藤ー藤井は斎藤が先手番となり(これで興趣が少し高まった)、予想通りの角換わり腰掛銀に対し、藤井が早繰銀を起用。こういうこともするんですね。速やかに△7五歩と仕掛けたいが、2筋の継歩で反撃されるので、△5四歩を角交換形なのに突かなくてはならず、少し損な戦型ではないかと思うのだが、プロ目線ではどういう評価だろう。藤井が採用した以上は見所があるかも、と研究が進むのだろうか。

 

 焦眉は1図。ここまでも相当に傾奇いた展開で、藤井は3筋突っ掛けで斎藤の飛車を浮かせて3筋に移動を強いた上での△2八角打。香車は取れるが、▲3四歩~▲7一角~▲4四角成が強烈に感じられ、ノーマル以上の棋力の持ち主なら切り捨てそうだが、これが後で検討してみると非常に難しい。

 

 1図ではアマでもプロでも▲4五桂と一気の攻略を目指しそう。斎藤もそう指したのだが、AIはここでは▲1七馬(!!!!)と溜めることを推奨している。うーん。。。。この手は教えてもらってもちょっと指せないわ。。。馬を下げた後、4五には歩が進むのか桂馬を跳ねるのか? 斎藤が指せないくらいだしなあ・・・という感想しか出てこないです。藤井がこの戦型にどの程度の見通しを持っていたのか、許してもらえるなら取材したいくらいだ。

 

 2回戦は増田戦。この将棋は藤井が先手番になり、あっさり押し切るかな、と予想したファンは多かっただろうが、A級昇級目前で最近は特に勝ち込んでいる増田(年度勝率は特に良いというわけではない)は上手く布陣して、少なくとも開戦時点では互角の形勢を維持していた。

 

 形勢が揺れながらやってきた2図。この直前、藤井は敢えて守備に貢献していた6六金を5五に押し上げている。指し手の一貫性を踏まえると3五歩を支える▲4五金でないとおかしいのだが、ここで藤井は▲2五銀打の強攻。藤井にしては珍しい判断ミスで、馬と銀二枚が交換されてみると、後手玉を捉えるのは容易ではない。

 

 

 しかし、▲3四角に対し増田は△2四玉と下がってしまう。局後に本人も悔やんでいたようにミスで何が何でも△3五玉しかなかった。この手はアマでも中々選択しない手で~誰だって玉を下にいかせたくなくて、本能的に上に出たくなるのだ~増田がこの後の指し手選択を連続して誤ることになった点でも深刻だった。△3五玉なら▲4五角△6三桂▲5六金と桂馬を取られるが、△4四歩と叱りつければ後手玉は容易には捉まらない。

 

 本譜は今度こそ藤井が▲4五金として3五歩を安定させ、勝利に大きく前進。▲2五歩があるため増田は△3六銀と応じたのだが、構わず▲2五歩が見舞われる。これに対し△3三玉と再度玉を下げたのが、将棋を指す人間の本能に全く悖る着手で、普通なら△同銀として▲2六歩に根性で△3六銀と下駄を預けるところだった。直前の△2四玉による動揺が作用したか。

 

 増田は実力は見せた。惜しい内容だったが、対藤井において善戦と勝利の間には相当な距離があることを本人だけでなくファンにも実感させた一戦でもあった。本当にこの人に勝つのは至難の業である。