連休明けの今週は主要棋戦の進行があって、結構意外な結果でもあった。振り返りたい。

 

 まずはA級順位戦だが、19日に行われる現時点でトップの豊島と最下位の広瀬戦を除く4局が進行し、全局星で劣る棋士が上位棋士を撃破した。現時点では降級争いは大激戦になりつつあり、挑戦権は1敗がなくなったため豊島が相当に有利になっている。2年連続名人戦挑戦の記憶も新しい斎藤と前期プレーオフまで行き、藤井の覇権確立に最も顕著な抵抗を示した広瀬が9位、10位とはかなり意外。広瀬が豊島を破るようだと、上下がキュっと締まり、挑戦権、降級争いともに一気に活性化するが、この一戦は豊島が先手番なのでまずは豊島が勝つだろう。

 

 まずは渡辺―菅井戦だが、中盤で典型的な銀ばさみが成立してしまう。A級でここまでひどい展開はなかなかないものだが、菅井に何か錯覚があったのだろうか。以下なす術もなく敗北し、2敗に後退。無冠になって以降、精彩のなかった渡辺は一息入った。

 

 

 2敗でどうにか食いつきたかった永瀬は対戦成績で有利な稲葉が相手。後手番でも順当に勝つだろうと予想したのは私だけではないはずだが、2図の▲6九飛が絶妙の自陣飛車で形勢は稲葉に傾いた。順位が下の稲葉にとっては実に大きな1勝。

 

 

 2勝4敗同士の一戦の斎藤対中村は、斎藤が先手なのと、中村の現時点の実力がどうなのよ?(今年負け越しているし、A級棋士なのに竜王戦は5組だし(竜王戦が5組のA級棋士って加藤一二三くらいしか思いつかないが、他にもいたのだろうか?)、C2棋士にコロコロ負けているし、レーティングは30位台だし)ということもあり、流石に斎藤が勝つだろうと予想したのだが、この予想も外れる。

 

 3図の▲8二角打の発想がよろしくない。21世紀になった頃の横歩取り8五飛戦法で先手がこの位置に角を打つとまずは勝てなかったのだが、その記憶通りであった。中村の応戦にも遺漏がなく、そのまま快勝し、貴重な3勝目を上げる。

 

 

 10日に行われた佐藤―佐々木は大激戦で12日の3局よりは遥かに高品質。観戦した人々も堪能したことだろう。4図の銀打ちで佐々木の攻勢を止め切った佐藤がこれも貴重な3勝目。佐々木は4図前に△4八角成を先に決行する機会があったが、2回とも見送ってしまった。この将棋に限っていえば、終盤の手の作りがどうも重かったような印象である。佐々木は今期、まずまずの活躍はしているが、連勝と連敗がアルタネートになっているところもあり、突き抜け切れていない。小学生名人になった頃からその軌跡を注目していた私としてはもう少し弾けてほしいものだが。

 

 その他、竜王戦では佐藤康光が広瀬に勝利して、本戦まであと1勝。強かったですね。但し、準決勝は伊藤匠になりそうで、これは中々に興味深い。会長業務から開放されて研究時間が増えたという話も聞こえており、そろそろ成果が出てもよいかも、と期待している。

 

 また今日の朝日杯本戦はまず永瀬が準決勝まで勝ち上がった。順位戦の敗北の影はなさそうな良い勝ち方であった。明日は藤井が登場するので、観戦で盛り上がるだろう。良い日曜日になると思う。