今年度、7つ目のタイトル戦である王将戦七番勝負が始まった。昨日今日で行われた第1局は経過を見る限りは藤井の快勝だった。※棋譜はこちらで観ることができます。

 

 
※ 2021年の王将戦番勝負以降同じことを書いているが、8大タイトル中最小の賞金額のタイトル戦に相応しく主催者の毎日新聞は器が小さく、今回もAbema中継はなし、何か厳密なガイドラインもある。ガイドラインは法律ではないので、書かれている諸事項は『望ましい行為』という位置付けになる。個人的にはこれは各人を拘束するものではないと認識もするが、こういう左系のメディアはどういう言いがかりをつけるのか分からないので、私も盤面をエントリーで表示はしないでおく。
 
 戦型は先手菅井の三間飛車からの相穴熊。AIは振飛車にマイナス評価をつけたがるのだが、藤井が4枚穴熊に組み上げてから開戦して▲6六銀(57手目)を強いたところでは、先手目線ではこの銀の措置に困りそうで、居飛車穴熊党の私目線でも藤井に分があると判定した。
 
 そこから細かい応接が続くのだが、菅井は辛抱強く後手の攻撃の種を拾っていく。73手目▲7六飛の局面では左銀を5七に移動させ、後手の3五角にアタックも可能かつ▲4八銀と引き付けて先手も4枚穴熊に組み直せる態勢に持ち込み、これはなかなか良い指し回しと感心したのだが、藤井は△4五歩と菅井の銀進出を防ぐ。この辺、両者とも力の籠った指し回し。しかし、ここから菅井に具体的な疑問手もなさそうなのに形勢は藤井に傾いていく。
 
 まず遅そうな△8七歩が先手に速い攻めのないことを見切っている。以下と金を8六まで引き付ける。先手は自らが垂らした7三歩がそのまま(悪手ではないようだ)なので飛車の可動域が狭い。角が双方ぶつかった状態での△5七歩の垂れ歩に対し、菅井は角交換から攻撃を続行したのだが、平凡に▲5九歩と受けていてはダメだったのだろうか。解説が全くないので私には分からないのだが、それまで丹念に藤井の攻撃を拾ってきた経緯、発想と別物のアクションにやや驚いた。
 
 菅井は恐らくは本譜95手目も▲4四歩に期待していたのだろうか。これは素晴らしい手で、飛車をタダで取られるとしても守備の金が後手玉と反対方向に漂流するのでそこまで痛くはなく、5筋、4筋に2枚と金ができれば存分戦えるはずだった。
 
 しかし藤井はこの段階では飛車を放置し、△5八歩成を優先。菅井も▲4三歩成からの斬り合いに応じたのだが、藤井に△6四角と攻防の要所を抑えられると、形勢は大差になっていた。
 
 ここまで先手が押し込まれるようなクォリティの手順ではないはずなのだが、イコール後手の藤井の実力が顕現した結果ということか。序盤から全く隙がなく、この人に勝つのは本当に難しいといういつもの感想しか出てこない。