19時からのAbemaの藤井特集を視聴したばかりなのだが、2時間枠と番組表にあるのに90分で終わり、やや残念。前半1時間は縁のある人々のインタビュー中心の構成で藤井のコメントがほっこりしていい感じではあった。(加藤一二三は不要だったと思うけど) 解説された将棋は名人戦第5局。終盤入り口の渡辺の失速ぶりが再認識された。藤井の解説が超高速モードになったらそれはそれで面白いかな、と期待していたのだが、普通に中級者向けの設えであった。あれだけ語ってくれる藤井を見るのは初めてなので、満足はしました。
さて2023年の印象深い対局についても振り返りたい。といっても王座戦ばかりになる。
1位:王座戦第4局。異論はないだろう。八冠達成の一局が最終盤での大逆転。中終盤での捩じり合いは非常に濃厚で、先人達の名局に引けを取らない。敗着▲5三馬を指した際のAbema解説の木村のリアクション、直後の永瀬の落胆ぶり等印象に残る映像も多く、将棋史に残るだろう。
2位:王座戦2回戦村田対藤井。負け下組と目された村田の想像以上の善戦で『全冠制覇は1年先送りか』と誰もが目を瞑ったところでのよもやの△6四銀。これだけ劣勢でも付加価値の高い手を捻り出せる藤井の能力の高さに感嘆した将棋ファンは500万人はいるだろう。追撃の△5九金も凄くて、将棋史最高棋士の凄みを存分に味わえた1局。
3位:王座戦第3局。これも最終盤での大逆転。最後の城塞として戦った永瀬の実力、覚悟、準備が十分に伝わった一戦で、なおかつそれを乗り越えていく藤井の強さよ。
4位:叡王戦第3局。振飛車が戦える戦法であることを菅井の健闘ぶりは讃えられて然るべき。この将棋も十分に勝ち味があってもしかすると藤井に勝利できたかもしれない展開に持ち込んだのは素晴らしかった。▲2二角の強靭な粘りとともに記憶に残る両者の指し回しだった。
5位:王座戦挑戦者決定戦:八冠がかかったこの棋戦は他の棋戦に比べても、対戦相手の各棋士がポテンシャルの上限まで能力を絞り出したようで、この将棋の対戦相手の豊島も劣勢になっても腐らず最善手を続け、一度は逆転するところまで持っていった。双方の玉の捌き方が印象に残る攻防一如の激戦。
いずれも3年くらい経っても熱心なファンであれば2時間は語れる内容の濃さ。全局藤井絡みなのは現在の将棋界であれば当然で、来年も藤井を巡って同水準以上の熱戦に恵まれればと願っている。