厚労省若手チームの緊急提言について

 

8月26日、厚生労働省の改革若手チームが組織改革のための緊急提言をまとめました。

新聞、テレビ、webメディアなどで広く取り上げられたので、ご覧になった方もおられるかもしれません。

 

【若手チームの緊急提言(厚労省HP)】

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/youth_team.html



私自身も、若い頃から何度となく今回のような若手のチームに入って業務改善に取り組んできました。今や私は若手ではなくなったので、このようなチームに入ることはなくなりましたが、今回のチームの提言が前例のない内容に相当踏み込んでいることに心が揺さぶられます。

 

それだけ、ここ数年で組織が相当揺らいできているという危機感が省内に共有されていると思いますし、これを公表することを認めた幹部も若手の思いを受け止めて変えていきたいと思っているのだと思います。

 

 

1.崩壊前夜の厚労省

 

率直に申し上げて、厚生労働省は既にパンク状態です。おそらく大なり小なり他省庁もそうだと思います。

 

〇 仕事は増えているが人が増えない。

〇 限界まで働いて体調を崩す人が増えている。

〇 家族との関係を犠牲にしてしまう。

〇 残業できない子育て中の職員(特に女性)の十分な活躍の場がない。

〇 離職者が増えている。

〇 採用が困難になってきている。

〇 目の前の業務に追われて、国民のためになる政策を考える時間が持てない。

 

こうした構造の中、私自身も去年の後半から今年前半は、管理職になったにも関わらず、あまりにスタッフがいないので課長補佐や係長の役割もやらざるを得ず、作業をお願いできる職員もいない中、1日17時間くらいは働いていて、結局体を壊してしまいました。

 

若い頃に、当時の妻がツワリで大変な時期に法案作成を担当していて毎日タクシー帰りで、ほとんど妻の顔をみる時間も持てず、本当に苦しい思いをさせてしまいました。失った信頼を取り戻すのは難しく、結局離婚を経験しています。

 

そうした傷を自分自身も抱えていますし、様々な事情で同じような傷を抱えている職員はたくさんいます。

 

今から20年前、「24時間365日みんなが暮らすこの社会のことを考えていることが許される環境」を求めて、国家公務員を志しました。

 

そして、人の幸せは多様だけれど、どんな人にも必要な生きていく上でのコアなものがある。命があって、安全で、健康で、生活していくためのいくらかの収入がある、仕事がある、そういうことは誰にとっても必要だ。時代が変わっても、この国の人たちがそういうことからこぼれ落ちない社会を創り続けていきたい。そういう思いから厚生労働省に入りました。

 

職業人としては、自分の思いを素直に仕事に出すことができ、また組織の懐の深さのおかげで、他の人が誰もやらないような自分のスタイルを黙認してもらって、自由に動くことができました。組織の中にも外にもたくさんの仲間がいて助けてくれて、いくつか自分でないとできないものも作ることができました。本当に幸せな職業人生を過ごしてきました。

 

でも、この数年で、自分も年齢による体力の低下、立場の変化、余力が失われていく組織の状況などの変化の中で、仕事自体にも徐々に苦しさを感じています。

若い人たちにもっと話をしてあげたい、役所の外の素晴らしい世界を見せてあげたいと思いながら、雑談もできないような過酷な日々を過ごしていました。

 

 

2.何を変えたいのか

 

若手チームの提言にも明記してありますが、

私自身も待遇についての不満を改善してほしいとは思っていません。

確かに、大学の同級生は医者、弁護士、会計士、大手企業に就職した人ばかりで、彼らより給料は低いですが、生活に困ることはありません。

今や国家公務員の採用は3割以上女性ですし、子育て中の女性にもっと戦略として活躍してほしいということを考えると、深夜まで働くのが当たり前という環境は変えたいですが、長時間労働自体も個人的な思いとしては、体を壊さない限り、家族を守れる範囲である限り、仕方ないと思っています。

 

私たちが一番疲弊するのは、身を削って異常な働き方をしても、それが国民の役に立っていると思えない作業をしている時間が多いということです。

 

国民のために働ける組織に生まれ変わりたい。

 

若手チームも私も、そういう率直な思いを実現したいのです。

 

 

3.変えるために厚労省が必死にやること

 

この若手の提言の内容は、事務次官をトップとする改革実現チームで、実際に組織や業務の改善に取り組んでいくことになっています。

 

私自身は、そこに関わることはありませんが、幹部の人たちも余裕がない中で、若手が力を発揮できるように変えていこうという思いはみんな持っているので、きっと変わっていくだろうと信じています。

 

 

4.皆さんにお願いしたいこと

 

官庁というのは、自分たちの組織の改革でさえも、なかなか自分たちで完結しない構造があります。

 

例えば、我々専門家でなくてもできる業務を機械に置き換えたり、外注したりするにはお金がかかります。このお金は、売り上げの一部を回そうというようなことができません。税金を使うので、一つひとつ予算に計上し、財務省や国会、ひいては国民の皆さんの理解を得ていく必要があります。

 

なるべく、お金をかけずに改革していく知恵をしぼらないといけませんが、どうしてもお金がかかる部分が出てきますし、場合によっては厚労省を超えて全省庁で取り組む課題や国会についても国会のチェック機能を損なわない形で見直しをお願いしなければいけないこともあるかもしれません。

 

私たちが、本来やりたかったのは、

 

この国で生まれ育ち、働き、色々なものを抱えて生き、老いて旅立っていく、そういう人たちの暮らしが少しでもよくなるような政策を作る

 

そういうことです。

 

そういうことに、時間を割ける環境を作っていきたいと思います。

まだ、諦めたくはありません。

変えられないことなんて何もないと思います。

時間と仲間が少し必要なだけです。

 

心の中だけでも結構です。

全面的に賛同できなくても、数%でも結構です。

どうか、応援してください。