妹尾昌俊 アイデアノート ~学校づくり、地域づくり、人づくり~ -26ページ目

妹尾昌俊 アイデアノート ~学校づくり、地域づくり、人づくり~

ちょっとしたアイデア、どんどんシェアします。
たくさんの学校や地域活性化の取組を見てきた経験や、4人の子育ての中での喜怒哀楽から、
よのなかがもっと面白くなるヒントをノートします。
☆学校づくり×地域づくり
☆子どもが大きくなったら語り合いたいこと など

オフィス近くの丸善でピラミッドのごとく積まれておススメされていた本、『ワーク・ルールズ!』は、読み応え十分だ。著者のラズロ氏は、グーグルで10年近く、人事部門のトップを務めてきた、その経験と彼の学識のエッセンスがつまった一冊と言える。約550ページもあるが、翻訳されているのはほんとありがたい。

働きたい会社、また働きやすい会社としても、さまざまなランキングでトップを続けるグーグル。この会社の何がどう、フツーの会社と違うのか?社員食堂が無料で美味しいことや、オフィスでマッサージを受けたりできること、また、とっても自由な社風はよく紹介されるけれど、それだけですごい会社になるはずはない。検索サイトに加えて、gmailやストリートビュー、crome、はては自動走行車など、革新的なサービスを生み続けられるのは、なぜなのか?

そうした疑問への回答は、ひとつや二つでは説明しきれないだろう。だが、本書では、著者なりの一定の回答が示されている。本書を通じて、印象深いのは、グーグルがいかに従業員を、人ととして大切にしているかという点だ。採用にも評価、育成にも、半端ない手間暇(当然、財務的な意味でもコスト)をかけている。手塩にかけるとはまさにこのことかと思う。

やっていることや考え方自体は、グーグルのサービスとは異なり、突拍子のないことではない。たとえば、管理職向けに、部下へアンケートした結果をフィードバックする仕組みがあるが、これはグーグルでなくても、すでにいろんな会社でとっくに導入されていることだろう。

では、違いは何か?さまざまな制度、仕組みを非常に丁寧に運用していることと、改善を続けていることだ、という印象を本書を読んだ感想としてはもつ。具体的には、採用ひとつをとっても、次のような徹底ぶりだ。

○採用面接は、面接官が最初の10秒間で得た印象を確証するために、残りの99.4%の時間が費やされるとの研究結果がある(グーグルについての研究ではなく、心理学のある研究成果)。この点に留意して、グーグルでは、面接でどのような質問を投げかけたらよいのか、面接官向けにガイドを示している。

 ちなみに、地頭力を測るとされている質問(例:マンハッタンにガソリンスタンドがいくつあるか当ててください)は、著者によれば、訓練すれば改善できる個別のスキルに過ぎず、評価するには役立たない。上級幹部はこの手の質問への回答結果は無視しているという。

○採用では、さまざまな階層から面接をして資質を確かめる。たとえば、その人が採用されたら部下になりそうな人が面接官をやる。また、直接関係ない職務の人も面接をする。

○丁寧に面接等をしても、採るべき人材を採れていなかったのではないか、常に自問する。グーグルでは、不採用だった人を二重盲検法で採用し、彼らの仕事ぶりを観察することによって、採用慣行をテストしている。(p211)


また、業績評価についての章(第7章)も大変興味深い。業績評価は、個人や部門、チームの成果を評価して、処遇等に反映する制度で、期首に目標設定して、その達成状況を評価するといった取組は、日本では、企業のみならず、自治体や学校でもかなり行われるようになっている。

しかし、業績評価はカタチを整えるのはできるが、運用はなかなかうまくいかない。下手すると制度導入の目的とは逆の効果(達成容易な目標設定になってしまうとか、評価の結果に納得がいかず、社員のモチベーションを下げてしまうなど)を生むこともある。日本では、かつて富士通の人事評価の問題が社員の暴露本で紹介されていた。業績評価制度をやめる会社もある。グーグルでは、どうしているのだろうか?

○グーグルのシステムでさえ完ぺきにはほど遠かった。業績管理の満足度は、グーグルガイストとい年1回のアンケート調査でつねに最低ランクに位置していた。

○グーグルの業績管理も、目標設定から始まる。OKR(objectives and Key Results)と呼ばれ、具体的で計測可能で検証可能な結果をコミットする仕組みだ。

○ただし、グーグルでは、すべての社員のOKRを社内のウェブサイトで見ることができる。会社の方向性からあまりにもずれているチームは目立ってしまう。

○グーグルでは、2013年まで、4半期ごとに41段階(1.0~5.0)の業績評価を行っていた。しかし、3.3と3.4の違いは何なのか、意見の一致はみなかったし、評価にすごく手間がかかった。そのくせ、いざ昇給額やボーナスを決める段になると、マネージャーらは3分の2の確率で、業績評価の結果算定された金額を変更していた。

○2013年には、社員のほぼ15%に相当する6200人あまりを、半年ごとの5段階評価に移行させた。この実験結果を検証した結果、この仕組みへの変更を全社的に導入することにした。


このように、グーグルでさえ、業績評価は試行錯誤を繰り返している。本書でも何度も強調されているが、グーグルでは、実験をして(ある制度を導入したグループと、これとなるべく同じ属性やパフォーマンスをあげていたグループで、その制度を導入しないグループとを比較する)、その結果を検証したうえで、次に活かすということを愚直に行っている。

この企業文化は、改善や現地現物が重要な理念であり実践し続けるトヨタ自動車などに近いのではないかと思う。そんなことも考えながら本書を読むと一層面白いと思う。



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