(引用)「信長も秀吉も、まちがいなくすごい男なのである。・・・しかし、彼らも血の通った人間である、ということを忘れてはいけない。彼らを叙述するにあたって最も気を付けなければならないことは、彼らを英雄視しすぎて超人のように扱ってしまうことである。」
という本書の「おわりに」の指摘を理解して余りある良書。
本書では信長の意外な優しい一面や、ものすごい努力家としての秀吉などを史料に基づいて紹介。しかも、「この説はドラマではよく出るが、後世の創作と思われる」、「これはかつての通説だが、こういう研究も出てきてて・・・」など丁寧かつ初心者にも大変分かりやすく解説してくれているので、長く手元に置いておきたい一冊となった。
詳しくは本書を読んでのお楽しみなので、深くは立ち入らないが、従来あまり注目されてこなかった信長・秀吉の家臣についても紹介されており、オタクな人も十分満足できる内容ではないだろうか。
1つだけ疑問点を。
本書全体が武将の事績とその歴史的な意味を紹介しながらも、その人となりや人間味についても解説しているせいか、関ヶ原の戦いを石田三成への感情的な反発勢力とお仲間勢力との戦いと捉えることは、狭くなっていないだろうか。家をかけての天下分け目の戦いで、当時はどちらが勝つか分からなかったのであり、しかも長期の戦いになることも予想されていたなか、人間関係で敵味方が決まるほど単純でもないのではないか、やはりどこか合理的、あるいは打算的な判断が働いて東軍西軍と分かれたのではないかと私は思う。
おそらく本書で紹介しきれなかった人物も多いので、ぜひ続編を待ちたいところ。
信長・秀吉と家臣たち (学研新書) (2011/07/20) 谷口克広 商品詳細を見る |