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地方の政治と選挙を考えるミニ講座

勝負の世界には、後悔も情けも同情もない。あるのは結果、それしかない。 (村山聖/将棋棋士)


いろいろな方が相談に見えますが、

前回落選し、再起に向けて現在充電中という方が一定の割合で存在します。

このような方々と話を始めるときは、

当たり前の話ですが、落選した選挙を省みることから入ります。



落選の理由には各人各様いろいろとありますが、

落選者の大半の方は後援者名簿の数が微少です。

中には名簿など作っていないという例もあります。

そこで話をよく聞いてみると、努力したけど名簿を作れなかったというのではなく

名簿の重要性にまったく気づいていない。

つまり、名簿なんか必要ないという認識を持っているんですね。



選挙の現場ではよく、名簿を洗うという言葉が聞かれると思います。

これは支持者の各々が集めてきてくれた名簿に対し、

電話や訪問で、支持が本物であるかどうか確かめることを指していることが一般的です。

これをやると必ず何件かはガセがあることが解ります。

しかしこのようにガセを名簿から外し、支持者をあぶりだすだけでは

相談に来られる方の認識通り、

名簿なんか有っても無くてもいいものなのかもしれません。



私の名簿に対する考えかたは、ガセを消去することが大切なことではありません。

視点を変えて、これは支持者になりうる見込み客名簿だと定めれば、使い方が見えます。

要は、この名簿から確実な支持者を何人ピックアップできるかが、

陣営がやるべき運動であり努力であり、紹介者へ対する義務であると思うのです。



実際、上がってきた名簿に対し陣営からのお礼の電話だけで済ませるのではなく、

候補者本人の電話や訪問によって、支持の枝葉がさらに広げることができます。

つまり名簿の中には、ガセもあるかもしれませんが、

その先に10件も20件も紹介を出してくれる大口客も眠っているわけです。

また、入会お礼の電話の反応だけではガセと判断される情報も、

見込み客を支持者に変えるという接近の仕方によっては、

重要な支持者から運動員へと成長することもあるわけです。



特に選挙までまだ23カ月以上もある時期では、

候補者の周囲だけは戦闘モードでも、有権者にとって選挙はまだ遠い先のことで、

ビラまきや駅立ちという、浮動票を掴むような戦術は効果がありません。

こういう陣営がまだ忙しくない時にこそ、固い支持者を一人でも多く獲得すべきです。

薄い縁でも無いよりはまし。

縁のあった有権者の一人一人に丁寧に接し、関係を深める努力をしてください。



そして固い名簿があるということは、選挙戦の終盤で効果を発揮します。

選挙終盤の常とう手段である「最後のお願い」や「あと●●票の上積み」を頼め、

本当にあと数票をたたき出せるのは、貴方の確固な支持者です。

「最後のお願い」はメールでも発信することができるようになりましたし、

以前からも電話での選挙運動は制限なく自由です。



名簿がない陣営は、告示後だんだんやることがなくなり選挙期間が長く感じますが、

名簿があればやらなくてはいけないことに追われるようになります。

陣営のムードが尻上がりに良くなるのは、

確固たる支持者たちの励ましや声援があるからこそなんです。

投票数日前だというのに電話をかける相手もいない陣営では、

支持者の励ましや声援を聞くことなく、日程が消化されて終わりです。



顧客名簿を粗末に扱う商売人が、成功したためしがないというのと同じことです。

後援者名簿を粗末に扱う政治家が大成したという例は、

青島幸男氏のような特殊を除いて、きっとないと思います。

自民党が圧勝、そして共産党の健闘躍進が目立った参院選の結果となりました。

報道の通り、共産党の躍進の陰には

非自民の受け皿である民主党の凋落と、第三極の不振もあったとは思います。

しかし、共産党のネット上での戦いぶりには目を見張るものがありました。



私は前回記したように、ネット選挙で最も大切なことは

「支持者を運動員へと進化させる」ことだと感じておりますが、

政党という単位でそれができていたのが共産党であり、自民党であると思います。



共産党と自民党が執ったネット戦略の共通点は、20代をターゲットにしたことですね。

観察記3で取り上げた山本太郎氏や、三宅洋平氏も20代をターゲットにしています。

そしてなぜ20代をターゲットにしたことが奏功したかというと、

「支持者を運動員へと進化させる」作戦に最も呼応したのが、

20代の平均的なネットユーザーだったからではないかと、私は見ています。



ツイッター等SNSのユーザーは、特に20代に偏って多いわけではありませんが、

高齢になればなるほど、書き込む内容が専門的になってくる傾向があります。

男性ではビジネス、趣味。女性では子育て、ペット、美容…。

このようにユーザー自らカテゴリにはまり、

高齢の人ほど同じ思考の人と繋がり、異質と線を画し、保身的になる傾向があります。



それに比べ若い人の場合は、他愛ない日常を書き込んでいる人が多く、

交友や恋愛、学問から趣味、芸能界のことからスポーツ、政治経済のことまで、

気になったことを誰に遠慮するわけでもなく、自由気ままに発信しています。



この特性の違いこそが「支持者を運動員へと進化させる」に

難か易かの差になったのではないでしょうか。



自分の個性を守りつつ、読み手に与える心象も考え、言葉を選んで書き込む中高年では、

物議の発端になりうる選挙の話など、持ち込まないのが普通です。

私もかつて、友人との交流のためにフェイスブックに参加していましたが、

プライベートアカウントを使ってまで、特定の候補者を支援することはないし、

頼まれたってそれは受けられないと思います。

それをしがらみと言えば聞こえは悪いですが、社会とコミットしている人ほど、

周囲に敵も味方もいるわけで、自由に発言できないしがらみが付いて回るものです。



一方で若い人の場合は、

「俺は山本太郎にかけてみる。比例は三宅洋平だ!」と書いても、

「やっぱり景気回復最優先だろ、アベノミクスを見守ろう!」と書いても、

なに不自然なことはありません。直球の言葉は素直に人に伝わります。

さらに言えば、普段から政治的な書き込みばかりの論客よりも、

政治にそれほど固執がない人の書き込みや拡散の方が、新鮮で熱があり、

多くの枝葉をつけて、より広く遠くに伝わっていたと思います。



かつて他人に投票依頼をするとか、候補者の政治信条を代弁するには、

ポスティングをしたり、電話をかけたり、という労働が伴いました。

しかし体力を消費することなく、紙面と等量以上の情報を瞬時に廻せることになった。

これはやっぱり凄いことです。

そしてその主役はしがらみのない若年、とりわけ上司も取引先もない学生です。



そして政党の執った作戦に注目してみますが、

もともと共産党は学生へのアプローチに執心な政党です。

ある程度の規模以上の大学では、今でも学生会が存在していると思います。

私も九州から大学入学のために上京した際、

心優しそうないでたちの上級生からの勧誘に遭いました。

当時は「新入生歓迎100人コンパ」だとか、「青空集会・討論会」みたいな催しがあって、

講義が始まる前には、催事のビラが大量に撒かれていたのを思い出します。

ですから共産党のネット選挙は、「青空集会・討論会」の舞台を

ネット上に設定しただけで、共産党にもともと備わる活動形態が、

ネットを使いこなす基礎になっていたと言えます。



自民党の場合は、ここ数年でずいぶん若年層に対する態度が変わりました。

かつては地域支部と職域の支部を縦横に広げたのが組織の基本形でしたが、

これでは、地域と縁の薄い単身サラリーマンや学生との接点がありません。

よって最近では青年局の活動も活発ですが、特に学生の参加の呼び掛けには、

かなり力を入れているようです。

今回の選挙ではビッグデータを活用し、有権者の関心ごとを一歩先回りして捉え、

新鮮な情報の発信に役立てたと、私は自民党所属の某県議から聞きました。

これによって与党批判を繰り返す野党との差別化に成功したというのが、

自民党側の言い分です。



ネット上で拡散しやすい言葉は、端的で分かり易いことが条件ですが、

それを党本部が、ビッグデータから得たキーワードを組み合わせて、

端的で分かりやすく、若年に浸透しやすいフレーズを作り、各選挙事務所に配信した。

共産党との違いはあれ、こちらも自民党にもともと備わる組織力が、

ネットを使いこなす基礎になっていたと言えます。



さて、初のネット選挙ですからこの参院選の一回分のサンプルしかありませんが、

「支持者を運動員へと進化させる」ことがまず大事。

そしてネット上で運動員になれるのは、しがらみのない若い人たちであるという、

どうやらそういう傾向は導けたのではないかと思います。



これから先、地方議会議員選挙の現場でネット対策を講じるならば、

若い人を重用し、好きなようにやらせるのが一番いいかもしれません。

そういう若いスタッフに恵まれず、

しかも貴方が、山本太郎のパフォーマンスを見て不快に思うタイプなら、

ネット選挙なんかには、わざわざ参戦しないという選択もありです。



ポスターでも名刺でも、創るなら全候補者中一番のものを作るのが私の考えです。

ネット対策も他候補に劣るような中途半端なら、やらぬが一番です。

それにしても参院選の17日間は長いですね。やっと終わったという感があります。

そして、結果を受けての各党・候補者の動きと、この選挙の総括が、

あらゆるメディアで表わされています。

やはり注目すべきは、ネット選挙解禁がもたらした影響であると思いますが、

調査では「投票にネットからの情報は参考にしない」という回答が大多数の中、

ネットを効果的に利用し、勝利を手中にした候補も出ました。



東京選挙区の山本太郎氏もその一人と言えると思いますが、

私はネットの行使以前に、「定数5の選挙区」という日本に一つしかない選挙区の特性を

最大限に分析し活用した戦術が、際立つ選挙だったと思っております。



ふつう国政選挙というのは、選挙区内すべての地域、有権者すべての年齢層を対象に

支持拡大を進め、弱点・取りこぼしが無いように企てますが、

山本陣営の場合は、大都市と若者に偏向した活動を展開しました。

山本氏を嫌う保守層と年代層には全く媚びずに、「定数55番目」の狙い撃ちです。

結果は4位でしたが、この基本姿勢こそが当選の源かと思われます。



皆さんも山本太郎氏や三宅洋平氏の選挙フェスを、チラリとはテレビで見たと思いますが、

あのパフォーマンスを見てどのように思われたでしょうか。

私はあれこそが「大都市と若者に偏向した活動」だと思うのですが、

48歳、オッサンの私の正直な感想は、思わず目を避けたくなるほどの嫌悪でした。

山本太郎氏の不敵な笑みには、寒気を覚えるほど不快に感じました。



彼らからすれば、私のような頭が固まり始めた中高年から嫌われることも、

計算づくでしょう。

端から理解しあえない相手とは一線を画すことを徹底していましたし、

守旧派の中高年、差別主義が行き過ぎた右翼からの反発こそが、

若い革命分子を一層活発にすることを悟っているかのような戦いぶりでした。



そして当選への天下分け目となったのが、投票45日前に大々的に報じられた

「山本太郎・鈴木寛、熾烈な5位争い」との新聞大手数社の記事です。



地方選挙の経験は豊富なものの、国政選挙ではまだ経験が浅い私でも、

追う立場の新人陣営にとって、「当選圏内が見えた」という報道が、

どれだけの追い風になるかぐらいのことはわかります。

この記事を書かせるにことに成功した山本陣営のプレス対策には、

全くもって見事であったと称賛します。

もちろん、小技で書かせたのではなく

世論調査でそれ相応の結果を出すまでの、地道な運動が実を結んでのことと思います。



この記事が出てから、山本太郎氏を支持する書き込みが

堰を切ったようにネット上に溢れ出しました。

とりわけ、普段は政治のことなどつぶやかない人種がここで合流したことが大きい。

それまで傍観者であった支持者が、運動員へと進化し、

ひょっとしたら棄権していたかもしれない浮動票を、ある程度拾ったと思います。



一方防戦を強いられた鈴木陣営はと言うと、

一般論では「山本太郎・鈴木寛、熾烈な5位争い」と書かれれば

組織がぐっと引き締まるのですが、民主党はその組織がボロボロ…。

昨年の総選挙では、25ある小選挙区中当選したのが長妻昭と長島昭久のたった2名。

比例返り咲きを入れても、海江田万里・松原仁・菅直人とプラス3名の計5名。

都議選でも獲得議席15と、地域単位の組織を牽引する人材がいないわけです。

またネット上でも「山本よりは鈴木」という類の書き込みこそあれ、

純然たる鈴木寛氏の支持者の書き込みにはほとんど遭遇しませんでした。



しかしこのような見方をすると、

ネットも単体では選挙を制する方便ではないと、今の段階では言えると思います。



山本氏の場合でも、山本太郎という元々のネームバリューがある。

そして反原発の旗頭として活動してきた履歴、実績もある。

さらに、戦力分析と戦略があった…。

だからこそ、選挙終盤の勢い、書き込みの増幅、拡散が起こったと思います。

ここで比較対象を出すならば三宅洋平氏がふさわしいと思いますが、

彼が叩き出した数字そのものは大健闘であるものの、

落選の最大原因は「緑の党」にネームバリューや信用がなかったことです。

緑の党がもう少し政党としての活動実績と機動力を備えていれば、

当選していたかもしれません。



その他にもネットでの政治活動、選挙運動に特化した候補者がいたようですが、

ネットだけでは無理、政党の看板に寄りかかっても無理。

自己陶酔型の、生徒会のような選挙運動ではなおさら無理です。

実績に裏打ちされたメッセージと、他を圧倒するほどの運動量とが形になって

有権者が動き出し、支持者が運動員へと進化し、ようやく当選が見えます。



以上のように、ネット選挙で最も大切なことは、

「支持者を運動員へと進化させる」ことだと思っているのですが、今回はこれまで。

次回、共産党と自民党の例をあげて、私のネット選挙観察記をまとめたいと思います。

「個別訪問」という政治活動の手法があります。

選挙運動では公選法が戸別訪問をはっきりと禁止していますので、

これはやってはいけないことですが、告示前の支持拡大を意図した政治活動としては、

最もスタンダート、最も基本的な活動であると言えます。



しかし公選法の戸別・個別訪問の部分に対する捉え方は各人各様で、

特にごく普通の市民の常識では、戸別訪問も個別訪問も、

これが告示前だろうと後だろうと公選法違反であると曲解している人が多く、

「個別訪問をやらない選挙=きれいな選挙」と刷り込まれている場合もあります。

私のところに相談に来る候補者の場合でも、

「個別訪問は旧い選挙手法の象徴であり、時代に合った手法で選挙を戦いたい。」

と、持論を述べる人も少なくありません。



ところが「見える票を獲る」ということを重要であると認識し作戦を立てると、

個別訪問以外に有力な方法はないことに気が付きます。



陣営側からの視点で票というものを捉えると、票は大きく分けて二種類、

まず、戦略的に得ることが易しい票と難しい票に分けられます。

もう一つの分け方では、陣営から見える票と見えない票があります。


地方選挙研究会/吉村慎治の小さな選挙を制するためのミニ講座
http://www.senkyo21.com/strategy/  


そうすると「得るに戦略が易く、陣営から見える」類の票があることが解りますが、

その「得るに戦略が易く、陣営から見える票」を獲る手段が個別訪問なのです。

言い換えれば、「最も簡単に確実な票を獲る手段が個別訪問」です。


ですから私は先に例を出した候補者のように、

「個別訪問は旧い選挙手法の象徴であり、時代に合った手法で選挙を戦いたい。」と

持ちかけられても、容易にその考えを認めることはありません。

最も確実に成果が上がる方法を案内するのが、コンサルタントの務めですからね…。



さて、個別訪問の重要性はご理解いただけたと思いますが、

次に大切なことはその方法です。ただ訪問を連続すればいいわけではありません。


まだ2~3年前の話ですが、つくばまで来てくれた相談者の一人Aさんが、

「ビラを配りながら自転車で市内全戸を個別訪問する」と持論を展開し始めました。

私は「ちょっと待て、何をやるにしても順番と方法がある」と諭したのですが、

持論に酔っていて、まったく聞く耳を持ちませんでした。

コンサルティングの契約をすることなく、じゃあやってみろと突き放したのですが、

やはり結果惨敗でした。



Aさんの地元は人口5万人を切る小さな市で、

市内の一部は、山中に孤立したような小集落が存在するようなロケーションです。

農村であれ漁村であれそこに住む人というのは、概して朗らかで人に優しいのですが、

信用され、認めてもらうまでにはそれ相応のプロセスを経る必要があります。



釣りをする人には通じやすい話ですが、

魚というのは餌がどちらからどのように流れて来るのかを知っています。

ですから、反対から餌を流しても釣れることはありません。

不自然な餌の動きには警戒し、決して手(口)を出しません。

集落の人も、大切な話や安全な話はどこからどのように流れて来るのかを知っています。

近所のよく知った人であれば、勝手口から入って来るものの、

正面玄関で呼び鈴を鳴らしている段階で、まずこの客は怪しい。

次に選挙の話であれば、例えば区長であったり、政党の支部長であったり、

「選挙と言えばこの人」を通じてこないのは、まったくもって怪しいわけです。



集落の人を魚に例えるのは失礼かもしれませんが、

釣り師もフィールドをよく研究し、水の流れを読み、魚のつもりにならなければ、

釣果が得られないのと同じことです。



Aさんが「私はどこの集落へ行ってもお年寄りに好かれるんですよ」と、

得意げに話していましたが、

大きな屋敷を昼間一人で守っているお年寄りにとっては、

とりあえず見ず知らずの訪問者には、愛想よく振る舞うのが身を守る術なんですね。

ですから決して歓迎されていたわけではないのです。



つまり集落でも団地でもマンションでも、その状況に応じた攻略法が必ずあるわけです。

それをまず研究しなければならない。

案内人をつけられれば問題は簡単に解決しますが、それが叶わないのであれば、

できるだけ魚に怪しまれないように川面近づくのと同じで、

同級生や恩師の名前を使うとか、

アンケートをポスティングした後に回収を兼ねて訪問するとか、

何がしかの相手の警戒を解く方法を工夫しなければなりません。

とにかく、集落のお年寄りにしろ団地の主婦にしろ、

相手がびっくりするような訪問だけは絶対にしてはいけません。



私には金にとことん困った時期があり、

リフォームと害虫駆除の契約を、訪問で獲りに行く会社にいたことがあります。

社員の8割強が1年以内に辞めるブラック企業でしたが、3年弱勤めました。

ですから、正しい方法で訪問を続ければ、必ず拾ってくれる人があり、

縁のない集落や団地でも、必ず突破口があるということが解っています。



個別訪問は最も効率のいい集票術ですが、

勢いに任せて実行しないように注意してください。


どんな職業でもそうですが「向き」というものがあります。

当然、政治家にも向いている人と向いていない人がいます。

「政治家に向いている」という条件があるとすれば、

責任感が強いとか、弁が立つとか、リーダーシップがあるとかが挙げられます。

このように、羅列する形で条件を挙げはじめたらきりがないと思いますが、

条件を一つに絞り込んでいくと、

「長計が立てられるか否か」というところに行きつくのではないかと、

私は考えています。



議会は多人数で組織されていますから、いろいろな人がいて然りなのですが、

長計を立てる能力のない議員は短命であるか、長く議会に居座ったとしても、

議長等の要職に縁がなく、重鎮と評価されることなく終わる人です。



逆に長計を立てる能力を備えた人は、

早くから議会にとって必要不可欠の位置を仕留め、要職に就き、権力を蓄え、

周囲の御膳立てによって、上級選挙への道が開かれる人です。



この長計を立てられる能力を言い換えると、未来を創造する能力です。

政治というのはもともと未来を築き上げる仕事です。

具体的に言えば、マスタープランを作り、予算を立て、業務を割り振り、

担当する人材を動かすというような、司令塔的な大きく構える仕事になります。

猪突猛進的な行動力よりも「石橋をたたいて渡る」慎重さが求められます。

仕事の性質を例えて言うと、戦略家であり経営者です。



ところが政治という仕事に対し選挙という試練は、現在を制するものであり、

今日やるべきノルマを確実にこなしていかなければ、先へ進めないものです。

例えて言うと陣営は、現場に位置する営業所であり、

特に候補者自身は、常に最前線に立ちつづけ売り上げを積み続ける

トップセールマンであることが求められます。

理屈をこねるより先に「石橋をたたく前に渡る」フットワークが求められます。



ですから社会経験が豊富で、未来を創造する能力があり、

いかにも即戦力と自他ともに認められる候補が

市区町村議会議員の小さな選挙で案外苦戦するのはこのためです。



私のコンサルタントとしての経験からも、

行政職のOBや大企業を定年された方、士業等の先生と称される方の多くは、

自身が策士となってしまい、雑兵的な動きができないタイプが多く、

個別訪問やミニ集会の開催という当たり前のこと課しても、

言い訳ばかりが先行して、結果ノルマを果たせません。

若い候補の場合でも、自身が選対会議に出席し口を出さずにいられないタイプの人は、

やはりやるべきことが果たせないスパイラルにはまります。



要は郷に入れば郷に従えと言う、ごく当たり前のことを敢行するだけなのですが…。



もしあなたが、「石橋をたたいて渡る」人ならば、大いに政治家向きの人です。

しかし選挙の時は自分を殺さなくてはなりません。

まず、社会経験豊富な人にありがちな

「最小の力で大きな力を産む」ことへの執着を捨ててください。

そして運動量で他に勝ることが最も重要であり、

それでも足りない部分を補うのが戦略であることを理解してください。



有権者の多くは小賢しい策士よりも

勢いのある「石橋をたたく前に渡る」即断即決のキャラクターが好きですから、

長計を立てられる能力のある議員が、国会でも少なくなっているのが現実です。



選挙の時だけは石橋をたたかずに渡れる人になってください。