今回は私事から入ります。
もう半年近く前の話ですが、私はある人と絶交しました。
相手の方は、親子ほども年の違う大先輩で、立場もあり、
私からすれば、また客観的に誰から見ても敬うべき相手でした。
時々飯を食ったり酒を飲んだり、公私ともに親しくしていたのですが…。
絶交に至った理由の詳細は省きますが、
「超訳・ニーチェの言葉」という去年あたりによく売れた本の中に、
私の心情を代弁してくれるくだりがありましたので、引用します。
『土足で入る人とはつきあわない』
「親しくなれば相手の私事に立ち入ってもかまわないと考えているような種類の人間とは、
決してつきあわないことだ。そういう人は、家族のようなつきあいと称しながら、
結局は相手を自分の支配下と影響下に置きたがっているだけなのだ。 ~以下略。」
この本のなかにはさらに、私が絶交した相手の事情についても、
よく言い表した言葉ありましたので、これも引用します。
『政治家には気をつけろ』
「~中略~ 政治家は、有能そうに見える人々、世間で名が広まった有識者や有名人を
好んで自分の周りに置きたがる。
そして何がしかの仕事を手伝わせるのだが、それは政治をしやすくするためではない。
自分の空っぽをカムフラージュさせるためなのだ。 ~以下略。」
この人とのつきあいは10年近く続きました。
しかし、土足で入ってこられることが日常となったことがきっかけになり、
中身のない、空っぽなその人の素性を見てしまいました。
私は有識者でも有名人でもありませんが、
この人にとって都合のいい人間だったのでしょう。
「空っぽ」と知れてしまえば、そんな人物に支配されるのは御免ですからね。
故に絶交するしかなくなったというわけです。
ニーチェに限らず、この世に出回っている人生訓や成功の秘訣には、
人との付き合いを律するものがたくさんあります。
人といかに付き合うかは、その人の人生を決定づける大きな要因ですよね。
ところが選挙に出るとなると、「来るもの拒まず」が原則です。
人づきあいを成功させる術など、選挙の現場では通用しません。
相手の素性がどうであれ、にこやかに近寄ってくる相手には、
心を開いて出迎えなければなりません。
選挙事務所の扉をくぐる人間は、とりあえず中に入れるしかありません。
大きな選挙のきちっとした事務所では、
お呼びではない招かれざる客への対応ができるベテランなり、強面がいるものですが、
小さな選挙の若い新人の候補の事務所では、
活動の最前線にこそ人を配置するものの、事務所番などは置けない場合もあると思います。
しかし、そういう事務所の脆弱さを、
土足で入る人や、気を付けるべき政治家は少し離れた場所から見ています。
そしてある日、大いなる支持者のふりをして、事務所に訪れます。
この時世ですからよしんば金品を要求することはなくても、
彼らは選挙事務所を遊び場にし、選挙という娯楽を楽しむために、
中へ中へと入ってきたがります。
私がつきあいを絶った相手も、中へ中へと入ってきたがりました。
あきらめられない男女の情のようにあらゆる方便を使って、繰り返し接近を試み、
私のことを都合よく使おうとしました。
こんな時は、迷惑な相手を排することを企てるのも重要ですが、
そもそもなんでこんなのに取り憑かれたのかを検証してみるべきです。
私の経験から言わせていただくと、
招かれざる客は、「勝てそう」という空気が漂い始めた頃に来ます。
つまり慢心がこういう客を呼ぶのではないかと思うのです。
実際、政治活動や選挙運動が軌道に乗って一息つき、周囲の状況を振り返って、
「さて、誰が落ちるだろうか」「怪文書でも撒いてやろうか」と、
自分の選挙そっちのけで、余計なところに気が移ったとほぼ同時期に客は現れます。
「勝てそう…」
このいかにも峠を越えたような、甘い安堵の雰囲気は、
貴方が活動を始めたときから待ち望んでいたものであり、
その実感を得ると心が浮足立つのはわかります。
しかし、この気分の高揚こそが選挙事務所の死角です。
実際「勝てそう」という空気の出所はどこなのでしょう。
誰が発したかもわからない情報に右往左往するというのは、
その事務所とスタッフと候補者が未熟だからに他なりません。
そして未熟な選挙事務所が出入りを認めてしまった招かれざる客のせいで、
たとえその選挙に勝っても、勝利の喜びは半減します。
貴方が当選した後も、空っぽの招かれざる客はあなたのそばを離れずに、
いつも土足で上がってきては、貴方を利用しようとします。
私事の場合も、「私は頼りにされている」なんて自惚れていましたが、
相手が急に土足で入りこんで来るようになったときにようやく、
「利用されているだけ」ということに気が付きました。
もう大丈夫と言う自惚れ、まだまだ努力が足りないのにもう十分という錯覚…。
その自信の根拠はどこから…? 「勝てそう」という評判の源はどこに…?
そんな話に耳を傾けるのは、砂漠で見る幻の泉のようなものです。
さあ、あと数日です。
「勝てそう」を超えて、「勝った」と言えるまで緊張を保ち、
それまで絶対に、死角を見せないでください。
