ベッキー不倫騒動の考察 | 地方の政治と選挙を考えるミニ講座

地方の政治と選挙を考えるミニ講座

勝負の世界には、後悔も情けも同情もない。あるのは結果、それしかない。 (村山聖/将棋棋士)

単なる芸能人のゴシップなのですが、この騒ぎ、収まりそうにありません。

もうかれこれ半月になるでしょうか、

MSNにしろYahooにしろ毎日毎時、

トップページの目立つところには必ずベッキーの顔写真があります。



もともと芸能ニュースなどには興味がない私ですが、

常時記事を目にしていると、

さすがに社会問題なんだと思えてきます。

特に昨日・今日の記事を読むと、

「ベッキー引退か」なんて言葉も飛び出しており

いつの世にも存在する芸能人の不倫という小さなネタが、

このカップルに限ってなぜ大騒動に発展してしまったのか、

ちょいと興味がわいた次第です。



というわけで今回は、

「人気商売」という芸能界との共通点を持つ「選挙策士」の視点から、

ベッキー不倫騒動を解いてみたいと思います。



まずベッキーという人の特徴を一言に要約すると、

バラエティーのわき役であると言い切っていいと思います。

レギュラーの本数も多いし、CM起用も多い売れっ子ですが、

主役を務められるタイプではありませんよね。

彼女の主な役割はMCを囲む何人かの補佐役のうちの一人で、

心温まる話題の時は、穏やかな笑みと黄色い空気を醸し出し、

悲しい事件が話題の時は、ブルーな空気やコメントを送り出す。

つまり「場」を作る要員であり、その道では一流の人なんだろうと思います。



ただ厳しいことを言わせてもらえば、

いくらでも代用が利くポジションでもある仕事です。

言い換えればベッキーがいなくなったところで、

番組の進行が止まるわけではありません。

売れている人であることは間違いなく、

芸能界において相応の役割を果たしている人ではあるけれど、

残念なことはこの事件がベッキーを

「唯一無二」の存在ではないことを証明してしまったことです。

そういう自分の立ち位置を理解していたかどうかを知る由もありませんが、

次々とCMが切られて、

休業に追い込まれるという結果に至ってしまったからには、

自戒の念や事後の対策が、充分ではなかったと言わざるを得ません。



さて、そんな厳しい寒風にさらされているベッキーに相反して、

正妻がありながら不貞を犯した、

同じ当事者でもこちらの方が重罪と思しき相手方の川谷氏は、

あまりさらし場に引っ張り出されていません。



ゲスの極み乙女。

普通このバンド名を聞いたら不気味に思います・

私はいくらか反社会的思想がある連中なのではないかと疑いました。

そして川谷絵音という、実に気持ちわりぃ芸名…。

とにかく私にはまったく良いイメージがなかったのですが、

世間の評価は高いんですね。曲は売れている、紅白にも出た。

茂木健一郎さんもその才能を絶賛しています。(サンスポ芸能社会欄)


この人たち、あくまでもバンド名からの印象ですが、

結成当初は異端児を演出していたのではないかと察します。

ところが才能が開花してメジャーになった。

そして独自路線を軌道に乗せることができ、大成功を収めた。



同じ売れている芸能人でも、

お茶の間と直結しているバラエティー番組のスタジオが仕事場のベッキーと

「自分達だけを観に来る」ライブの会場が主な仕事場の川谷氏では、

全く立場や性質が異なります。

ベッキーは目立ちすぎてはいけない、が、スタジオの華としての存在を求められ、

演出家から言動についてまで指示をうける「人形」ですが、

川谷氏の方の立ち位置は、己の好きな道で頂点を極めた「教祖様」です。

自身が言い放ったことがファンの間では正論であり、

異議を唱える者の相手はしなくてもいいという強い立場です。



だからこの不倫報道も、

川谷氏にとってはたいして痛みはないんだと思います。

だいたい、ギターを買ってバンドをやろうなんていうそもそもの魂胆は、

もっと女にもてよう、あわよくば成功して金持ちになろうというものです。

安全に就職する道を捨て、

異端児として成功を手に収めたんだから、

私はそれを心ゆくまで謳歌すればいいと思うんです。

こと、この人にとって社会一般の倫理観に合わせて品行を磨くなんてことは、

爺さんになってから考えればいいことです。



川谷氏の正妻も、ベッキーも、マスコミも言葉にはしないだけで

それがわかっているのではないでしょうか。

惚れた相手はもともと世間体の外で成功した人。

悪びれることなく開き直られたら、話は終わってしまう。

交渉の余地すら閉ざされてしまうとね…。



同じ芸能人でもこんなに立場が違う。

ベッキーはあたかもかごの鳥、かたや相手は自由な羽を持つ野鳥のようです。

かごの鳥とは不自由ではあるが守られていることを意味しますが、

芸能界の外にもかごの鳥はたくさんいます。

そして政治家にもかごの鳥と形容してもいい人たちがいるのですが、

この先はかごの鳥をベッキー型、野鳥の方を川谷型と名付けて解説したいと思います。



さて私が選挙コンサルタント業を始めて十余年。

この間の政界はずいぶんと若返りが進み、

国会議員・地方議員ともに平均年齢が下がったはずです。

しかし私は、政治の質が良くなったという実感を持っていません。

むしろ劣化しているかもしれないと感じているのですが、

その原因がベッキー型の台頭ではないかと思うのです。



よくないことの例えにベッキーさんを使ってしまい申し訳ないのですが、

ベッキー型とはかごの鳥、誰かに主導権を握られた操り人形、

傀儡政治家のことを言います。

自前で後援会長も立てられず、選挙スタッフも揃わず、金もなく…。

でも政治家になりたいと考える人の次なるアクションは、

人・信用・票・金銭等を他人から分けてもらうか借りることです。

この時スポンサーになるのは上位職(首長や県議、国会議員など)であったり、

政党や組織や市民活動団体であったりするわけですが、

最たる例では、資産家に生活費までも工面してもらっている奴隷もいます。

そのスポンサーが、

純粋に政治家志望の有能な若者を応援しているだけならいいのですが、

端から当選後には、

政治を陰からコントロールしようと意図している場合の方が多いのが現実。

最も清潔・清貧そうに見えた若き候補者が、

実は最も黒い奴だったなんて、実際に田舎ではよくあることです。



このベッキー型の人たちが政治家になると決心し行動を起こす。

その記念すべき第一歩がかごに入ることであり、

つまり思考そのものが他人依存であることが最大の欠点です。

もっとストレートに言えば身売りなので、ご主人様のいいなりです。

もともと身元を保証する後援会もなく、

風頼みの選挙で、支持者(ファン)との関係も薄いので、

何か不祥事を起こした時には主人を守ることに精一杯になり、

蜘蛛の子を散らしたかのように支持者(ファン)が去っていきます。

こんな不安定な基盤では、

政治家としてとてもじゃないが大きな仕事はできません。



一方で川谷型。

これはその人にしかないというほどの秀でた能力を持った人材です。

支持者を見ても単なるファンではなく、信者に近い。

こういう人は敵こそ多くても、「必要性」という尺度で見たら、

誰もがその価値を認めざるを得ないというタイプです。



私がこの商売を通じて出会った川谷型の人たちは、

相談に来る頃にはすでに選挙を仕切るスタッフが決まっています。

動き出したら周りがほっとかないというのが、

秀でた能力を持った人に見られる特徴です。

動けば動くほど人は集まってくるし、後援会は勝手に盛り上がります。

そして後援者に操られず、

自分が目指した方向に勝手に信者がついてくるのも

このタイプの特徴です。



芸能界・政界に限らず社会のどんな局面でも、

自分自身に軸がある人は自分を捨てる決断が即座にでき、勝負事に強い。

少々の風で飛ばされることはありません。



ベッキー型になるか川谷型になるかは、

あなたが政治家になろうと決めたその時からが勝負です。

ベッキー型になりたくなければ、

つまり条件付きの援助を断り、完全自前の後援会を作るには、

まずPTAでも町内でも青年会でも商工会でも、規模は小さくても構わないので、

コミュニティの中で「唯一無二」「いなくては困る」存在になることです。

駅立ちを始めたり、ビラを作ったり、街宣車を出したり…。

キャンペーンを始めるのは、

まだまだずっと先の話です。



後援会長がいないとか、推薦状がもらえないとか、

いわゆる基本陣形がまとまらないのは、

このプロセスが省かれているからであります。

そしてここに不備があるまま見切り発車すると、

必ず人・信用・票・金銭のうち何かを他人から借りるか貰うことになります。

よしんばそれで当選できても、

「誰かに主導権を握られた操り人形」になりやすいし、

この時に作った借りは、なかなか返済できない重荷になることが多いようです。



ベッキーの人気の正体、半分は自前の魅力かもしれないけど、

あとの半分は演出家の仕事の成果であるはずです。

そのベッキーが芸能界で今後も生きていこうと思うのであれば、

これを機会にスキャンダルとは無縁の「唯一無二のいい子」を徹底的に追及するか、

あるいは自分にしかできない芸当を身に着け一段格上の芸能人を目指すのか、

いずれにしても一つ試練をくぐらなくてはいけなくなってしまいました。



政治の場合もそうですが、早かれ遅かれ道を究めるためには、

どこかで「唯一無二」の自分を構築しなければなりません。

特に選挙・政治の場合は、即戦力を要求される世界ですから、

行動を起こすなら早い方がいい。



今は政治家になろうと手を挙げる者が少なく、選挙時の倍率も低いのが常ですが、

団塊とそのひと回り下という最大人口層が

次々と第二の人生をスタートさせています。

彼らは経験豊富であり、唯一無二を持った即戦力です。

しかも、特に地方の高齢化社会においてはまだまだ青年ですから、

彼らの台頭は、若い政治家志望者には脅威になるでしょう。

「若い人には伸びしろがある」

「当選してから現場で勉強すればいい」などという、

若者賛辞の風潮もすでに弱まりつつあります。



今回は芸能界の出来事という、

政治と関係なさそうな題材から書いてみましたが、

ひとたび選挙に出ると外に向かって公言してしまえば、

あなたには芸能人と同じような好奇の視線が注がれることになります。

世間で起こったことに対して世間がいかに反応するのか、

不祥事や悪評に対していかに対峙するのか…。

ゴシップの多い芸能界は、実は様々なトラブル対処法の宝庫であり、

処世術の実例も豊富なようです。



たまには三面記事から学んでみるのもいいかもしれませんね。

私には身になる経験になりました。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。