シニアライフ・相続研究所 30代から考える老後設計 金澤宏冶 -8ページ目

シニアライフ・相続研究所 30代から考える老後設計 金澤宏冶

シニアライフ(セカンドライフ)や相続の問題について書き綴ります。
年金、退職金、少子高齢化、健康保険、後期高齢者医療、介護保険、
相続、終活、老後破産(老後破綻)に備える方法などについての考え方
を読者の皆様と共に考えていきたいと思います。

 相続時精算課税制度とは贈与をするときには贈与税はかけないけれども、その分の税金は、相続税の申告時に清算するという贈与税の特例です。

 具体的には

 ●60歳以上の祖父母や親から、20歳以上の子や孫に贈与をした場合に2,500万までの贈与には贈与税はかからず、2,500万円を超える贈与には、超えた分の20%の贈与税を払う。

 ●贈与を受けた財産は、その贈与をしてくれた祖父母や親が亡くなったときに他の相続財産に加算して相続税を計算し、納税する。

 ●その際、相続時精算課税制度を使って支払った贈与税がある場合は、相続税から差し引ける。

 という仕組みです。




 ここで注意しなければならないのは、相続時精算課税制度は110万円の暦年贈与非課税制度との選択制であり、一度相続時精算課税制度を選択すると暦年贈与非課税制度は使えなくなります。

 そして相続時精算課税制度を使っても相続税が減るわけではありません。

 本当は非課税枠である110万円または贈与税の最低税率が適用される310万円までの贈与を毎年贈与していった方が堅実に相続税対策になります(相続税がかかる場合)。




 しかし、相続時精算課税制度には別のメリットがあるのです。

 それは、この制度を使って贈与をした財産は、相続を待つまでもなく、その時点で完全に贈与を受けた子や孫のものになるということです

 遺言で誰に何を相続させるかを指定することができますが、本当に遺言通りに分割されるかは断言できません。

 遺言の有効性が問題になることもあります。

 また、遺言に対する不満から遺産分割協議に移行することもあります。

 さらに、遺留分が問題になることもあります。

 そこで遺言に比べれば相続時精算課税制度を使えば確実に一定の財産を特定の相続人に移転できます。

 このように相続時精算課税制度は、相続税の節税ではなく、親が生前に考えている通りに確実に財産を渡そうとするときに使える制度なのです。




 私は、老後に子どもに経済的援助を求めなくてもよいように老後資金を貯めることを第一に考えていますが、そこは親心。

 子どもの結婚、育児資金、住宅資金の一部は渡してやりたいと思います。

 それに自分の死後、供養をしてくれる子にはそれなりに多めに渡してやりたいと思っています。

 子どもに渡す財産を考えることも立派な老後設計ではないでしょうか?




 そんな時にこの相続時精算課税制度を使えば自分の生きているうちに、確実に思った金額を思った推定相続人に渡すことができます。

 自分の死後、天国(地獄?)から子どもたちが揉めている姿は見たくないですからね。




 ちなみにこの相続時精算課税制度を使えば必ず贈与税の申告が必要になることは覚えておいてください。

 ただ相続税の申告は相続時精算課税制度によって贈与した財産と他の相続財産の合計が基礎控除以下であれば不要ですよ。

 介護職員が不足しています。

 厚生労働省が発表した資料によると、2025年には介護職員が約253万人必要になるとされています

 対して介護職員になろうとする人は約215万人と推計されています。

 約38万人の介護職員が不足するとのことです。

 2025年問題といわれている、この状況は団塊の世代が75歳以上になる年に介護職員が大幅に不足するであろうことをいいます。




 介護保険制度が施行された2000年当時介護職員は55万人でした。

 その後年々増加し、2013年には171万人まで増えてきました。

 しかし、それでも人手不足は解消されていません。

 施設によっては人手不足で倒産するところまで出てきています。

 なぜ、こんなに人手不足になっているのでしょうか?




 一つは少子高齢化によって生産年齢人口比率が下がっていることです。

 高齢者の増加とは反対に出生率は下がっています。

 日本の年間出生数は団塊の世代が生まれた第1次ベビーブーム期(1947年から1949年)で約270万人、その子供世代が生まれた第2次ベビーブーム期(1971年から1974年)で約210万人でした。

 それがどんどん減っていき、いよいよ昨年は100万人を割ってしまいました。

 生まれてくる子供が減るということは生産年齢人口(15歳から64歳の人口)の低下を招きました。

 総人口に対する生産年齢人口の割合は、1995年の69.5%をピークに年々減少し、2025年には、58.7%に下がるという予測もあります。

 働く人口そのものが減少しているのです。




 二つ目は定着率が悪いことです。

 全産業の勤続年数は平均12年であるのに対して、福祉施設の介護職員は平均7年、訪問介護員は5年と短い年数です。




 三つめはネガティブなイメージの蔓延です。

 人手不足の現状や低賃金・重労働というレッテルを貼られ、若者が介護職を目指す傾向が低くなってきています。

 つまり新卒者の採用が難しくなっています。

 現場で働いている介護職員も人手不足のしわ寄せがきて苦しんでいます。

 新人は入ってこず、同僚はやめていく。

 その分だけ仕事量が多くなっています。




 ではどうしたらこの人手不足を解消できるでしょうか?

 一つは介護職員の待遇を良くすることだと思います。

 賃金の面はもちろん労働条件全般について改善が必要です。

 賃金もせめて他の産業並みにする。

 夜勤にはもっと加算を付ける。

 頑張っている方には手当を加算する。




 二つ目は経営層の意識改革です。

 現場で頑張っている方に対してその功績に報いることが必要です。

 介護現場は民間の会社でいえば立派な中企業といえるでしょう。

 それにふさわしい人事マネジメントを経営層は学ぶべきだと思います。




 三つ目は働きやすい環境作りです。

 これは介護の現場だけに限らず、言えることだと思います。

 結婚しても、子どもが生まれても、親が介護状態になっても働けるような環境づくりをしていくべきです。




 介護のイメージが良くなれば自然と離れていった職員も戻ってくるでしょう。

 新たに介護を目指す若者も増えるでしょう。




 介護の問題は現在の老人だけではなく、将来の老人=今の現役世代の問題でもあります。

 日本の介護システムが安定して機能していくように社会全体で考えましょう。

 「サービス付き高齢者向け住宅」とは、高齢者単身・夫婦世帯が賃貸などの形式で居住できる住まいです。

 平成23年の「高齢者の居住の安定確保に関する法律(高齢者住まい法)」の改正によって創設された比較的新しい登録制度です。

 所管官庁は国土交通省と厚生労働省です。




 高齢者にふさわしいハード面(バリアフリー構造、一定の面積、設備)が確保されています。

 また、ソフト面は(安否確認サービス、生活相談サービス)が付帯されています。

 登録は、都道府県・政令市・中核市が行い、事業者に指導・監督を行っています。

 家賃やサービスなど住宅に関する情報が開示されることにより、自らのニーズに合った住まいの選択が可能となります。

 安否確認・生活相談サービス以外の介護・医療・生活支援サービスの提供・連携方法については様々なタイプがあります。

 危険や不便が少ないハード面の安心、高齢者だからこそ必要なサービスを充実させたソフト面の安心、さらに地方公共団体が登録、指導・監督を行うという安心、このように多くの「安心」を備えていることが「サービス付き高齢者向け住宅」の特長です。




 注意していただきたいのは有料老人ホームのように「利用権契約」ではなく、サービス付き高齢者向け住宅では「賃貸借契約」であること。

 つまりアパート・マンションと同じ契約形態であることです。

 それと安否確認サービス、生活相談サービスは必ずついていますが、食事サービスや介護サービスは別契約であることです。

 人員配置については有料老人ホームでは24時間配置ですが、サービス付き高齢者向け住宅では日勤配置となっており、夜間は任意となっています。




 いずれにしても、ハード・ソフトの最低基準は法令で定められていますが、施設の運営姿勢・衛生管理や職員の人員体制・教育方針、入居している方々への職員のサポート体制は様々です。

 実際に入居の判断を行うには、現場に行って設備・職員・入居者の様子を見てみないとダメですね。

 費用面についても高額な入居一時金は必要ありませんが賃料のほかに食事代や、介護保険の自己負担分、介護保険外の費用などを含めるとそこそこの金額となります。

 いろいろな施設を見学して状況を把握し、十分に納得の上、契約することをお勧めします。