シニアライフ・相続研究所 30代から考える老後設計 金澤宏冶 -4ページ目

シニアライフ・相続研究所 30代から考える老後設計 金澤宏冶

シニアライフ(セカンドライフ)や相続の問題について書き綴ります。
年金、退職金、少子高齢化、健康保険、後期高齢者医療、介護保険、
相続、終活、老後破産(老後破綻)に備える方法などについての考え方
を読者の皆様と共に考えていきたいと思います。

 確定拠出年金(DC)を受け取るときに悩むのが一時金で受け取るか年金で受け取るかということです。

 年金で受け取る場合、税金(所得税・住民税)の他に国民健康保険料や介護保険料が所得金額によって計算される市区町村が多いため、一時金で受け取る場合に比べて、実質の受取額が少なくなる傾向があります。

 実際にどれだけの差が出るかは税金についてはその多寡にもよりますし、国民健康保険料や介護保険料についてはお住いの市区町村によって変わってきますので、綿密に計算するにはそれらの条件を確定させなければなりませんが

 しかし、一時金で受け取る場合、日本では世界で類を見ないほどの優遇税制=退職所得控除がありますので税金は掛からないか掛かっても少額で済むケースが多いといえます。

 以上より、金額にもよりますが、ある程度公的年金を受け取る方、例えば公的年金等控除額を超える方などは税金、国民健康保険料や介護保険料を考慮した実質の手取りは年金より一時金で受け取った方が多いというケースがよく見られます。




 しかし、一時金で受け取った場合には「無駄遣いをしてしまう」という最大のリスクがあります。

 大金を手にすると気が大きくなって衝動買いをしてしまうというのが人間の性ではないでしょうか?

 そのような無駄遣いを防ぐためには、普段の生活費とは別の口座を設けて分別管理をしていくことが大切です。

 そして人生100年時代に突入しつつある現在、およそ100歳までのライフプランに従って徐々に取り崩していくという計画性が必要です。




 また、年金として受け取る方法も一概に損だとは言い切れません。

 公的年金は70歳まで受け取りを繰り下げることができますので、公的年金の受け取りを繰り下げ、公的年金を受け取るまでの間に確定拠出年金を年金として受け取ることにより所得の時間分散を図るという方法も考えられます。

 そうすることによって毎年の所得を抑えることが可能です。




 いずれにしても、実質の受取額の差だけで一時金で受け取るか年金で受け取るかを決めることはできません。

 自分のライフスタイルに合った受け取り方法を決める必要があります。

 それによっては二者択一ではなく、一部は一時金、残りは年金で受け取るという考え方もありかと思います。

 また、年金で受け取り、5年経過後に残金を一時金で受け取るという方法も可能です。




 いつまで働くか、健康状態はどうかなどによって老後資金の受け取り方は変わってくるはずです。

 まだ受け取りが先の方は急いで結論を出す必要はありません。

 制度改正もあるかもしれません。

 走りながら考えていきましょう。

 日本銀行によると、平成28年12月末の国内銀行のアパートローン残高は前年比4.9%増の22兆1668億円に拡大しています。

 この底流には相続税の増税と日本銀行のマイナス金利政策による金融機関の貸付攻勢があるものと思われます。

 ご存知の通り、更地に賃貸住宅(アパート、マンション)を建てると土地の評価が下がり、相続税の節税対策になります。

 これらの要因が賃貸住宅建設を後押しし、正に小さなバブルの様相を呈しています。




 しかし、日本の人口は既に減少に転じており、少子化の進行により、賃貸住宅の需要は減っております。

 加えて、既に空き家問題は深刻化を増しており、せっかく賃貸住宅を新築しても満室にできないケースが増えています。

 そして、賃貸住宅も競争の時代に入っています。

 どうせ建てるならば他の物件と差別化できるものにしなければなりません。

 設備を良くしすぎるとコストとの兼ね合いがありますが。




 いくら相続税対策とはいえ、いざ賃貸住宅を建ててみて、空室が多く発生し、返済に支障が出るようでは本末転倒です。

 金融機関にとっても融資の焦げ付きが発生すれば、その財務状況に悪影響が出ます。

 こうしたことから、金融庁は28年末から実態調査を実施し、銀行に融資審査で担保だけでなく事業の将来性を評価することなどを要請しました。

 日本銀行も金融機関への29年度の考査で、アパートローンの適切な審査や、組織的な採算性の検証が行われているかを点検する方針です。




 多くの土地所有者は賃貸住宅の建設を相続税対策とかねて老後の私的年金、自分年金、老後資金として考えていることが多いようです。

 しかし、それはあくまでも一定以上の入居率が確保できての話。

 賃貸需要を無視して、銀行がお金を出してくれるからというだけで賃貸住宅建設に踏み切るのは危険です。

 あくまでも自分で賃貸需要があるかどうかを判断し、十分事業計画を検討したうえで賃貸住宅建設事業を進めるべきです

 建設会社が家賃保証をしているケースもありますが、入居率が悪くなると、建設会社が家賃の値下げを提案してくることもあり、各地でトラブルが発生しています。




 土地を持っていない方が家賃を目当てとして収入を考えていくのであれば中古の賃貸住宅を購入することが中心となります。

 しかし、これは不動産投資家としての適性のある方の話。

 リスクとリターンを計算し、受け入れることができ、投資脳をもって行動していかなければなりません。




 賃貸住宅の建設、取得は私的年金、自分年金、老後資金として考える場合、事業家、投資家として十分ご検討の上、実行されることをお勧めします。

 本年1月から原則として20歳以上60歳未満のすべての人が利用できるようになった個人型確定拠出年金(愛称:iDeCo イデコ)。

 これは読んで字のごとく個人が確定した金額を拠出する年金制度です。

 運営主体は国民年金基金連合会ですが、実際には銀行、証券会社、生命保険会社などの金融機関が運営管理機関として窓口となります

 iDeCoのメリットとして掛金が全額、小規模企業共済等掛金等控除として所得から差し引かれ、節税効果があること、運用益に税金がかからないこと、受取時に公的年金等控除あるいは退職所得控除が受けられることが挙げられます。

 加えて年に1回、掛金額を調整できることもメリットといえるでしょう。

 さらに、受取開始時期を60歳以降70歳までの範囲で選べる、受取期間も選べるというメリットもあります。

 例えば60歳の定年時から公的年金の受給が始まる5年に分けて受け取るということもできますし、金融機関によっては終身に渡って受け取ることもできます。




 こう申し上げるとメリットばかりのように思われるかもしれませんが、60歳までは引き出すことができませんし、生命保険の契約者貸付のようにiDeCoを担保にしてお金を借りることもできません。

 さらに加入時の手数料や運営管理機関手数料、事務委託先手数料、国民年金基金連合会手数料、投資信託で運用するならば信託報酬も差し引かれます。

 さらに受取時にも振込手数料も差し引かれ、正に手数料のかたまりの様子を呈しています。

 従って元本確保型で全額運用した場合でも、手数料によって評価損が出る場合があります。




 このようにメリット、デメリットのあるiDeCoですので、他の老後資金の確保の方法も選択肢に挙げておきましょう。

 例えば、NISA、積立NISA、小規模企業共済(自営業者、小規模企業の役員)、国民年金基金(自営業者)、財形年金貯蓄(制度のある企業の従業員)、生命保険会社の個人年金保険なども視野に入れておくといいと思います。




 人生の三大資金である教育資金、住宅資金、老後資金ですが、特に老後資金は他の資金に隠れて後手後手に回りがちです。

 出来れば他の資金とバランスを取りながらなるべく早いうちから、具体的には30代から30年近くを掛けて積み上げていくべきものだと思います。

 公的年金での支えは侮れませんが、これからは徐々にその比率が下がっていきます。

 また、老後になって子供に援助を求めることはかなり無理があります。

 老後資金は自力で計画的に貯めていきましょう。