シニアライフ・相続研究所 30代から考える老後設計 金澤宏冶 -3ページ目

シニアライフ・相続研究所 30代から考える老後設計 金澤宏冶

シニアライフ(セカンドライフ)や相続の問題について書き綴ります。
年金、退職金、少子高齢化、健康保険、後期高齢者医療、介護保険、
相続、終活、老後破産(老後破綻)に備える方法などについての考え方
を読者の皆様と共に考えていきたいと思います。

 制度創設の背景(平成29年5月29日から運用開始予定)

 不動産の登記名義人(所有者)が死亡した場合、所有権の移転の登記(相続登記)が必要です。

 しかし、最近は相続登記が未了のまま放置されている不動産が増加し、これがいわゆる所有者不明土地問題や空き家問題の一因となっていると指摘されています。

 そこで、法務省において、相続登記を促進するために、法定相続情報証明制度を新設することになりました。




 制度の概要

 相続人が登記所に対し、以下の書類をはじめとする必要書類を提出することになります。

 1. 被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍関係の書類等

 2. 上記1.の記載に基づく法定相続情報一覧図(被相続人の氏名、最後の住所、生年月日及び死亡年月日並びに相続人の氏名、住所、生年月日及び続柄の情報)




 制度のねらい

 本制度により交付された法定相続情報一覧図の写しが、相続登記の申請手続をはじめ、被相続人名義の預金の払戻し等、様々な相続手続に利用されることで、相続手続に係る相続人・手続の担当部署双方の負担が軽減されることになります。




 法定相続情報証明制度の手続の流れ

  1.申出(法定相続人又は代理人)

   1-1 戸除籍謄本等を収集

   1-2 法定相続情報一覧図の作成

   1-3 申出書を記載し、上記1-1、1-2の書類を添付して申出

    ・提出された戸除籍謄本等に記載の情報に限る(放棄や遺産分割協議は対象外)

    ・(数次相続発生の場合)一人の被相続人ごとの作成

 2.確認・交付(登記所)

   2-1 登記官による確認、法定相続情報一覧図の保管

   2-2 認証文付き法定相続情報一覧図の写しの交付、戸除籍謄本等の返却

    ・交付に当たり、手数料は徴収されない

    ・偽造防止措置を施した専用紙で交付

 3.利用

  各種の相続手続への利用(戸籍の束の代わりに各種手続において提出することが可能に)

   ・この制度は、戸籍の束に代替し得るオプションを追加するものであり、これまでどおり戸籍の束で相続手続を行うことを妨げるものではない。

   ・放棄や遺産分割協議の書類は別途必要




 私は、この制度ができることにより、「認証文付き法定相続情報一覧図の写し」の交付がされることで相続手続きが一部簡素になると思います。

 なぜなら戸除籍謄本等を、各登記所、各金融機関に各々提出する必要がなくなるからです。

 しかし、相続手続きで一番難しいのは遺産分割協議書です。

 その作成のための協議が一番大変なのではないでしょうか。

 よって、相続手続き簡素化の決定打とは言えないと思います。




 さらに言えば遺産分割協議書を不要とするため、遺言書を書いておくことが被相続人となる人の責任なのではないでしょうか?

 今の時代、遺産分割協議はなかなかまとまりません。

 円滑な相続の為にエンディングノートとセットで遺言書を遺しておきましょう。



 エンディングノートも知名度は徐々に上がっていますが、購入したものの実際に書いたという方はわずかです。

 公正証書遺言も最近は作成される方が増えていますが、まだまだ少数派です。

 配偶者や子どもたちが困ることを考えて是非、エンディングノートとセットで遺言書を遺しましょう。

 それが遺された者への愛ではないでしょうか?

 現代では、家意識の希薄化に伴い、かつての〇〇家先祖代々という墓から様々なカタチが生まれています。




1.お墓

 平安時代に仏教伝来ととともに供養塔が日本にもたらされました。

 そして、江戸時代になり檀家制度が確立されて、人々に先祖供養が定着し、皆が墓石を建てるようになりました。

 当初は個人各々の墓石でしたが、家制度の確立とともに、家単位で建てられるようになりました。

 現在では、その形は様々なものがあります。

 また、家単位であったものが、跡継ぎの問題などで、家単位ではないこともあり、永代供養も出てきました。

 また、社会変化に伴い、改葬(お墓の引っ越し)をすることもあります。




2.散骨

 一般にはご遺骨をパウダー状(粉骨)にした後、海、空、山中でそのまま撒く葬送形式をいいます。

 散骨は解釈上「節度を持って行われる限りは違法性はない」とされています。

 ただし、市区町村で条例がある場合もありますので注意が必要です。

 また、陸地での散骨は散骨地の近隣住民とのトラブルになる可能性が高く、私有地では認められていません。

 よって、現状では海洋散骨が主流となっています。

 散骨ポイントは散骨を取り扱う企業、団体によって様々ですが、港湾、漁場・養殖場、遊泳可能地点、陸地から見える地点、大型船の航路などを除外して決められています。

 費用の安さ、死後お墓の問題で迷惑をかけたくないという故人の希望などにより、近年増加している供養の形です。




3.樹木葬

 墓地埋葬等に関する法律により、墓地として許可を得たところに遺骨を埋め、樹木を墓標として埋葬する方法です。

 埋葬地点に低木を植える植樹型、大木を墓標と見立て根元に埋葬するメインツリー型、埋葬地に杭やプレートを置く墓標型などがあります。

 宗旨宗派を問わず、継承者がいなくても購入することができる、費用もお墓より安いなどの理由から注目されています。

 ただし、土に還ることを目的にしているので骨壺から出して埋葬し、埋葬後の取り出しを断られる(改葬不可)こともあるので注意が必要です。




4.手元供養

 ご遺骨を少し取り分けて、形見として身近に置き、アクセサリーとして身に着ける供養の方法です。

 ご遺骨に手を合わせ、語りかけることによって心のつながりをいつでも確認することができるので近年注目されています。

 用途によって、納骨型(ミニ骨壺、フォトスタンド、オブジェ等)、ペンダント型(ペンダント、リング、ブレスレット等)の手元供養品にご遺骨を納めて供養します。

 また、ご遺骨そのものをプレートやダイヤモンドに加工する方法もあります。




 このように供養のカタチも様々に進化しています。

 要はカタチよりも故人を偲び、供養をする心が大切になっている時代なのでしょうか。

 終活とはどんなことをする活動なのでしょうか?

 一般的にはお葬式の準備をすること、お墓の準備をすること、相続の準備をすることなどをイメージされる方が多いと思います。

 いや、エンディングノートを書くことだと言われる方もいるでしょう。

 しかし、私はそれらがメインではないと思います。

 確かにそれらも大切な活動ではあると思います。

 人は必ず死ぬときが来ます。

 ある意味、生物として当然のごとく死ななければなりません。

 そうすると死ぬ準備をしておくということも大切なことでしょう。




 今までを振り返って自分の人生の棚卸をし、生きてきた足跡を書き遺し、家族への想いと感謝を書き、私という人間が生きてきた証拠を残すことが必要だと思います。

 さらに、介護が必要となった場合にどうしてほしいのか、終末期には病気のことを告知してほしいのか否か、延命治療を望むのか、尊厳死を望むのかも書いておいた方がいいでしょう。

 死んだ後、相続で困らないように財産(預貯金、有価証券、不動産、年金、その他)について、生命保険、損害保険についても書き遺しておいた方が良いでしょう。

 遺言についてもほとんどの場合、書いておいた方が良いと思います。

 遺言の保管場所、遺言執行人がいるならばその旨も書き遺しましょう。

 お葬式についての希望、お墓についての希望もそうです。

 さらに親、兄弟、配偶者、子供、孫への想いも遺しましょう。




 ただ、そういったことばかり考えているとどうしてもネガティブになってしまいます。

 そうじゃダメなんです。

 そういう死ぬ準備を通じて、自分を見つめ、これからの人生をどう生きていくかを考えることが大事なんです。

 残された時間をより自分らしく、より良く生きるということに重点を置くべきなんです。

 終活は後ろ向きの活動で終わらせるのでなく、前向きに生きるための活動なんです。




 終活とは「人生の終焉を考えることを通じて、自分を見つめ今をより良く自分らしく生きる活動」(終活カウンセラー協会の定義)です。

 私は親の死を経験して強く終活を考えるようになりましたが、最初は後ろ向きの考え方でした。

 でも、終活の本当の意味を知るにつけ、今を大事に生きなければいけないと思うようになりました。

 エンディングに向かって、強く活きたいと思います。