シニアライフ・相続研究所 30代から考える老後設計 金澤宏冶 -12ページ目

シニアライフ・相続研究所 30代から考える老後設計 金澤宏冶

シニアライフ(セカンドライフ)や相続の問題について書き綴ります。
年金、退職金、少子高齢化、健康保険、後期高齢者医療、介護保険、
相続、終活、老後破産(老後破綻)に備える方法などについての考え方
を読者の皆様と共に考えていきたいと思います。

 日本人の寿命が伸び続けています。

 明治時代には男42.8歳、女44.3歳でしたが、1970年には男は69.31歳、女は74.66歳に延びました。

 その後も平均寿命は長くなり2015年には男80.79歳、女87.05歳となりました。

 国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口」(2012年)の中位推計では、日本の平均寿命は2060年に男性84.19年、女性90.93年になると想定しています。

 しかし、近年の医薬品や医療技術の急速な進歩や介護サービスの向上を見れば、平均寿命がもっと長くなって、多くの人が100歳くらいまで生きることができるようになるという可能性は十分にあるかもしれません。




 人生が長くなれば当然、公的年金の財政を圧迫し、支給額のカットや支給開始年齢の引き上げという「改悪」が論議されるのもうなずけます。

 20歳から年金保険料を納付しだして、65歳で引退して45年間の納付実績に対して、65歳から平均20年以上も年金をもらい続けるというのは無理があります。

 公的年金に全面的に頼ることができないとすれば自助努力によって老後資金を若いうちから貯めていくしかないわけです。

 さらに、それでもなお老後資金の足りない部分は、より長く働くという選択をせざるを得ないのではないでしょうか?




 国際的に、15歳から65歳までの年齢層が生産活動に従事する生産年齢人口と定義されています。

 しかし、高学歴化によって働き始める年齢は上がりました。

 一方で、健康年齢の上昇によって65歳以上でも十分働き続けることが可能になっています。




 65歳までの方々だけを労働力の対象にしていたのでは、人口減少社会の中で企業は労働者の不足に直面する恐れが大きいといえます。

 高齢者をうまく活用することは企業にとっても他社との競争や生き残りのためによい材料となるのではないでしょうか?

 高齢者に働いてもらって年金保険料を納めてもらうことは、社会保障財源の面からも望ましいといえます。




 現在、企業や公務員、私学教職員として働いて厚生年金保険の保険料を支払っているのは70歳までの方々です。

 自営業者向けの国民年金に至っては原則60歳までの方々です。

 いっそのこと、この上限を取り払ったらどうでしょうか?

 年金保険料をたくさん支払った分だけ受け取れる年金も増えるという状況になれば高齢者の労働意欲も増します。

 年金財政にとっても収入が増えて収支が好転するはずです。




 ちなみに私は体の動く限り働き続けたいと思っています。

 というのも働くということは生きがいに繋がるからです。

 輝きながら最期を迎えたいと思っています。
 育児・介護休業法が1月から改正されました。

 今までの育児・介護休業法は制度が硬直的で使い勝手が悪かった感があります。

 介護という問題は自分が対象家族を介護する側面だけではなく、自分が介護される側面もありますので中高齢者にとっても他人ごとではありません。




 改正前までは対象家族の一つの介護状態につき、原則1回93日までの取得でした。

 今回の改正では、介護休業を通算して93日まで、最大3回まで分割して取得できるようになりました。

 例えば1回目は対象家族が倒れた時に30日、退院して介護施設を探すときに30日、最期を看取るのに33日という風に取れるようになったのです。




 年間5日まで取れる介護休暇にしても取得できる日数は変わりませんでしたが、半日単位で取れるようになりました。

 これで例えば、半日は介護やケアプランナーとの打ち合わせ、残り半日は仕事に充てることができます。




 その他、介護休業と合わせて93日内で認められていた時短勤務等が介護休業と別になりました。

 利用開始から3年の間で2回以上の利用ができるようになったのです。




 さらに、介護終了まで残業免除を請求できる権利も明記されました。




 対象家族も変更点があります。

 今までは対象家族は、配偶者、父母、子、配偶者の父母、同居かつ扶養している祖父母、兄弟姉妹、孫でした。

 このうち祖父母、兄弟姉妹、孫について「同居かつ扶養」の要件が外されたのです。




 問題は企業の受け止め方にあるといえましょう。

 改正前でも介護休業を取得した従業員に対して解雇その他不利益な取り扱いをすることは禁止されていました。

 これからは介護休業、介護休暇、時短勤務等や残業免除を受け入れるために就業規則の改正など、法律で認められた介護のための従業員の権利をどのようにして企業に定着させていくかが企業の責任となりました。

 ケアハラ(介護ハラスメント)防止のための措置、社内教育、相談窓口の設置などが必要です。

 そうしないと企業が従業員から訴えられる可能性十分ありです。




 産前産後休業、育児休業と同じように企業も介護に対して予防法務の観点から自己防衛する必要があるようです。

 そのような観点から介護離職を防止していくことが企業の社会的責任となったといえるでしょう。

 今回の改正ですべて解決したとはとても言えませんが、社会全体として介護離職ゼロを目指しましょう。
 この1月に施行された介護福祉士の筆記試験の受験者は8万人弱でした。

 昨年度の受験者が16万人強だったので半減したことになります。

 3月に実技試験が行われますが例年合格率は6割程度です。

 仮に合格率が例年通りだとすると今年度の合格者は大きく減ることになります。




 介護福祉士になるには

 1.実務経験(3年以上)+実務者研修450時間(今年度新設)+国家試験

 2.養成施設(2年以上)

 3.福祉系高校(履修3年以上)+国家試験

 の三つの方法があります。

 約9割の方が1.の方法で資格を取ってきました。

 しかし、今年度の受験者数の大幅な減少は実務者研修450時間の新設が大きく響いたようです。

 実務者研修の大半は通信教育で受けられますが、約45時間分の介護技術とたんの吸引法などの医療的なケアも養成施設で受ける必要があります。

 実務者研修を終えるには最長で半年、費用も10万円~20万円も掛かります。




 待遇面で見ると平成27年度で平均月収が約24万円と全産業平均より約9万円も低いのが現状です。

 それでも無資格の介護職員より約4万円高いといいます。




 無資格の介護職員でも研修などを受ければ介護福祉士とほぼ同じ業務ができます。

 国が実務者研修を必修にしたのは介護福祉士の技能を上げ、介護現場のリーダー役にして無資格の介護職員と役割分担をし、待遇改善を図る意図があるようです。




 しかし、介護現場で働きながら実務研修の勉強をし、そのための費用も支出し、甲斐あって国家試験に合格しても待遇面で報われない現状はおかしいと思います。

 また、介護施設の側から見ても実務研修のために現場に穴を開けられては代替要員も見つかりにくいので実務研修を受けさせる余裕がない事情があるようです。




 ただでさえ、介護職員は不足しています。

 その背景には介護の仕事はきつくて待遇が悪いというイメージがあります。

 介護施設に空きベッドがあっても介護職員が足りないため、要介護者を受け入れできない現状の現場もあります。

 団塊の世代が全員75歳以上になる2025年には介護職員が推計で約38万人不足するといわれています。




 介護職員に産休ならぬ実務研修休を与え、待遇を改善しないと2025年問題は解決しません。

 介護職員に介護福祉士になる夢と希望を。

 そして仕事の内容に応じた待遇改善を。