シニアライフ・相続研究所 30代から考える老後設計 金澤宏冶 -11ページ目

シニアライフ・相続研究所 30代から考える老後設計 金澤宏冶

シニアライフ(セカンドライフ)や相続の問題について書き綴ります。
年金、退職金、少子高齢化、健康保険、後期高齢者医療、介護保険、
相続、終活、老後破産(老後破綻)に備える方法などについての考え方
を読者の皆様と共に考えていきたいと思います。

 人生100年時代の老後資金対策の続きです。

 長生きをして莫大になった老後資金を賄うには公的年金だけでは足りません。

 そんな時、自宅に住みながら自宅を担保にして金融機関から融資を受け、自分が死んだ後に、その自宅を売却するなどして利用した融資を一括返済するリバースモーゲージという方法があります。

 日本では1980年代に一部の自治体や金融機関で導入されましたが、バブルの崩壊で担保割れが生じ、停滞していました。

 ところが10年ぐらい前から土地の評価が下がりにくい地域限定で、金融機関のうち一部ですが取り扱いが増えてきました。

 生活資金、ゆとり資金、リフォーム資金や高齢者住宅の入居一時金などとして利用されています。

 ちなみに事業用資金や投資資金は対象となっていません。




 リバースモーゲージで対象となるのは土地付き一戸建て住宅が一般的です。

 しかし、一部の金融機関では一部の地域に限りマンションも対象にするようになってきています。




 融資額は担保となる住宅の評価に応じて限度額が定められます。

 受け取り方としては、一時金としてまとめて受け取る方法、年1回または毎月、定まった金額を受け取る方法やあらかじめ設定された限度額の範囲内で、必要に応じて随時受け取る方法などがあります。

 融資に対する金利は変動金利が主流です。

 返済方法は利息のみ毎月返済する方法、所有者が亡くなった後に元利金を一括で返済する方法などがあります。




 また、契約者が亡くなった後、配偶者はその家に住み続けられるかもよく確認しましょう。

 金融機関によっては契約者が亡くなった後も同居していた配偶者が契約を引き継いで住み続けられる場合もありますが、そうではない金融機関もありますので要注意です。




 リバースモーゲージを利用すれば持ち家を活用しながら資金を調達できます。

 他のローンなどを利用して返済に苦慮する必要もありません。

 その代わり、所有者が亡くなった後は自宅を売却して融資金を返済するため、相続人に自宅を遺すことはできません。

 相続人に資金があれば現金で完済することも可能ですが、そうでなければ売却後に残った資金を受け取るだけになります。

 そのため、申込時に別居している子どもにもリバースモーゲージを利用することについて同意を得る金融機関がほとんどです。

 ですので配偶者はもちろん、相続人となる子どもたちとも十分話し合って利用を検討しましょう




 リバースモーゲージを利用するリスクとしては

 1.金利上昇リスク

 2.不動産価格の下落リスク(担保割れリスク)

 3.長生きリスク

 が考えられます。

 ですのでリバースモーゲージといえども人生100年時代に十分対応できるとは限りません。




 リバースモーゲージは各金融機関によって条件が様々ですので、よく理解してから利用することが大切です。
 人生100年時代の老後資金対策の続きです。

 長生きをして莫大になった老後資金を賄うには公的年金だけでは足りません。

 子どもの家に世話になったり、介護施設に入ったり、より小さな家に住み替えたりして空いた自宅を賃貸に出して活用する方法もありですよね。

 賃貸にすれば、毎月安定した収入を得ることができ、老後資金の一部に充てることができます。




 さらに、自分が死んだ後に賃貸に回した不動産を子どもに相続させることもできます。

 なお、相続にあたって建物を賃貸に供していた不動産は一定の軽減が受けられ、相続税の負担が軽くなります。




 最近は、高齢者の住み替えや相続によって空き家が増加していることが社会問題になっています。

 人が住まない家を放置しておくと倒壊などの恐れがあったり、防犯、防災面で危険です。

 地域の景観も損なうことになります。

 自治体が特定空き家(周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切な状態にある空き家等)と判断すると、修繕、解体を勧告・命令されたり、行政代執行で除去されることもできるようになりました。

 さらに、固定資産税・都市計画税の軽減措置の対象外となり、税額がアップすることもあります。

 住んでいた自宅を賃貸で活用することは、空き家の発生の抑止にもつながります。




 自宅を賃貸するにはどのような方法があるでしょうか?




 1.リフォームして賃貸する

  今の状態で賃貸することが難しければリフォームして賃貸することも考えられます。

  ただ、リフォーム費用をかけすぎて老後資金を大きく減らしてしまうのでは本末転倒。

  合理的な範囲で、なおかつ借りてもらえる程度にリフォームすることが必要です。

  家賃等の条件は周辺の相場をよく調べて賃貸仲介業者に募集を依頼しましょう。

  管理は自分でできなければ管理会社に委託するのが良いでしょう。

  募集から管理まで一括して委託できる会社もあります。

  そうした業者に委託するには条件や地域によって異なるため、複数の業者に当たって、比較検討して決めましょう。




  なお、一般社団法人 移住・住みかえ機構の「マイホーム借上げ制度」もあります。

  これは原則として50歳以上の方を対象として、子育てを終えて不要になった広い家を借り上げてもらい、子育て中の若い世代に転貸するものです。

  同機構と終身借家契約を結べば、入居者の募集や建物の管理は同機構が行ってくれます。

  最初の入居者が決まった後は、空室になっても家賃保証があり、3年ごとの更新時に合わせて借家契約を解除することもできます。

  なお、この制度はまだ普及が進んでいません。




 2.賃貸マンション・アパート・複数の戸建てに建て替える

  敷地に余裕があれば賃貸マンション・アパート・複数の戸建てに建て替えることも考えられるでしょう。

  いずれも1部屋または1件当たりの家賃は安くても、複数からの家賃が見込めるため、毎月の収入は安定しやすくなります。

  ただ、この方法は投資額が大きくなりすぎるという欠点があります。

  おのずと借り入れを起こすということになりがちです。

  この方法は家賃下落リスク、金利上昇リスク、空室リスクなどがある点に注意です。

  賃借人の募集や管理については上記1.と同じように賃貸仲介業者・管理会社を利用することができます。




 3.更地にして土地を貸す。

  この場合、かかる費用は自宅の解体費用と整地費用だけで済むことが多く、賃貸住宅として貸すよりも手間がかからない利点があります。

  将来の相続を考えた場合、手軽な方法になる場合が多いです。

  貸ガレージや定期借地契約で貸す方法が無難でしょう。

  しかし、住宅を解体してしまうと固定資産税・都市計画税・相続税評価額が大幅に高くなる点には注意です。



 いずれにしても土地を売らずに収入が見込める点は魅力的です。

 公的年金と自宅を賃貸に回した収入によって余裕のある老後を過ごしたいものです。

 
 定年退職してからの老後の期間が長くなっています。

 65歳で退職して年金暮らしを始めるとしましょう。

 しかし、年金は現在でも十分ではありませんし、今後減っていくことが予想されます。

 ということは退職までに貯めた老後資金を取り崩しながら生活していくことが通常考えられます。

 しかし、人生の三大資金といわれる教育資金、住宅資金、老後資金のうち後手後手に回ってしまいがちなのが老後資金です。




 十分な老後資金を用意できない場合、あるいは予想以上に長生きした場合(長生きリスク)、老後資金が枯渇してしまうこともあります。

 そのような場合、自宅を売却することも考えざるを得ません。

 自宅が先祖伝来の土地である場合、あるいは子どものために遺してやりたいなど、事情はあるとは思いますが平均寿命が大きく伸びてしまった今日、自分と配偶者の寿命が尽きるまで老後資金が持たないケースが往々にしてあり得ます。

 そこで自宅を売却して現金化し、そのお金で老後資金を賄う方法を考えてみます。




 ●子どもの家か介護施設に住み替える場合

  この場合は売却して得られた資金は子どもの家のリフォーム代金や介護施設の入居一時金に充てることができます。





 ●小さめの家を購入する。

  今の自宅が夫婦二人では大きすぎる場合、小さめの一戸建てやマンションに住み替えることも考えられます。

  新たに購入する家の価格を売却代金より小さくすれば買い替えによってある程度の資金が手元に残ることが期待できます。

  ただし、今の家の売却と、新しい家の購入は時期をよく考えて行うことが大事です。

  先に売却先が決まった場合、引き渡し時期によって住み替え先が決まるまで今の家の引き渡しを待ってもらうか、一旦仮住まいへの転居が必要になります。

  逆に先に購入する家が見つかった場合、手元資金で買えるのか、売却先が決まるまで「つなぎ融資」を利用するかを考えなければなりません。




 このようにして生み出した現金は、生活費の不足分に充てたり、旅行や趣味に使えたり、病気や介護に備えて貯蓄することができます。

 ただ、注意しなければならないのは気持ちが大きくなって金遣いが荒くなったり、子どもが親のお金を当てにしてくることもあります。

 お金の管理や使い方には自制心を持っていくことが必要となります

 そのためには夫婦のどちらかが100歳まで生きるものとしてライフプラン表を作っておくことをお勧めします。

 そうするといかに老後資金が莫大な金額かを知って驚かれると思います。




 自宅を売却するにあたっては、事前に周辺の同程度の売却された物件の相場を調べ、適正な価格で売却することが大切です。

 そのほか、国土交通省の「土地総合情報システム」を利用して、インターネットで周辺地域の不動産取引価格を調べることもできます。

 また、国税庁の路線価や市町村の固定資産税評価額も参考にします。




 さらに、今の家を譲渡して利益が出ると所得税や住民税がかかることがありますが、居住用不動産には「3000万円の特別控除」などの特例がありますので事前に税務署などでよく確認しておきましょう。