シニアライフ・相続研究所 30代から考える老後設計 金澤宏冶 -13ページ目

シニアライフ・相続研究所 30代から考える老後設計 金澤宏冶

シニアライフ(セカンドライフ)や相続の問題について書き綴ります。
年金、退職金、少子高齢化、健康保険、後期高齢者医療、介護保険、
相続、終活、老後破産(老後破綻)に備える方法などについての考え方
を読者の皆様と共に考えていきたいと思います。

 日本には少なからず「持ち家信仰」があります。

 それはバブル崩壊以降、ずっと土地の価格が低下している現在でも変わっていないようです

 持ち家=資産あるいはステータス

 という考え方のもと、賃貸住宅を避ける方が多いように思います。




 はたしてその考え方は正しいのでしょうか?

 日本では中古住宅の価値が正当に評価されず、売ろうとすると建物が木造であれば25年で土地だけの価格で評価されるなんて言う事例が多いです。

 ひどいケースでは更地にして売った方が高く売れるケースもあります。

 買ったときは高かったのにいざ売却するという段になってその査定額の低さにびっくりするケースもよくある話です。

 これも「新築信仰」といえるかもしれません。




 また、リタイヤした時点で

 持ち家の査定額<住宅ローン残高

 となっていれば売るに売れず、年金収入からローン返済を続けなければならない状態になります。




 日本の人口はとっくにピークを過ぎ、これからは下り坂です。

 そんな中で不動産の価格は上がるでしょうか?

 どう考えても都心の一等地は別にして下がっていくことが予測されます。

 「遠」(駅から遠い)、「高」(価格が高い)、「狭」(狭い)の三拍子揃った不動産ではその傾向が強く現れます。




 このように考えると賃貸住宅も悪くないのではないでしょうか?

 確かに家賃をいくら払っても賃貸住宅は資産になりません。

 しかし、好きな所に住むことができますし、引っ越しも容易です。

 固定資産税も修繕費も家主が払ってくれます。




 老後のことを考えると「持ち家派」と「賃貸住宅派」それぞれメリット、デメリットがあります。

 老後のライフプランを考えながらどちらにするか決めていきましょう。
 現在の年金制度では将来、支給額が減っていくことがほぼ間違いありません。

 なぜなら高齢化率(人口に占める65歳以上の方の割合)が2015年で26.7%と高く、今後も上昇していく中で保険料(額)は2017年度以降は上げないと決まっているからです。

 これを「保険料水準固定方式」といいます。

 現役世代の保険料負担を2017年まで段階的に引き上げたうえで、それ以後は上げないと2004年(平成16年)の法改正で私たちは決めてしまったのです。

 決められた保険料の中で高齢化率が上がれば支給額は減らすしか方法がありません。




 先日可決された年金改革法(年金カット法)もこの流れに乗ったものだといえます。

 しかし、私はその程度の改革では年金制度は維持できないと思います。

 更なる年金カットがこれからも続いていくものと予測しています。

 つまり、年金制度を維持するために、老後に最低限必要な収入は確保できないまでに調整されていくと思われます。

 いわば「制度残って支給額無残」という状態に陥るでしょう。




 日本の年金支給額が低く、今後も下がっていくと予想されるのは国民負担率(国民所得に占める税と社会保険料の割合)が2013年度で41.6%とスウェーデン(55.7%)、ドイツ(52.6%)、フランス(67.6%)に比べて低いのが原因の一つです。

 年金支給額を上げていくには税と社会保険料を上げるという選択ができるかどうかです。

 消費税率を上げるのが適当と思われますが、消費税増税のデメリットもあります。

 少子化対策が一番重要なのですが、これは一朝一夕に解決できる問題ではありません。




 私は景気を財政出動によって良くしたうえで消費税の増税を敢行すべきだと考えます。

 さらに少子化対策に予算を傾斜配分していくべきだと思います。

 
 2014年(平成26年)の推計では、経済成長が続いた前提でも約30年後には公的年金の支給水準が2~3割低下するという試算が出ました。

 そこで政府は個人型確定拠出年金の対象を広げ、事実上、今の現役世代に「自助努力」を求めています。

 普及を促すため、税制面で様々な優遇策を設けています。

 掛金は全額、所得控除の対象で、運用益も非課税、受取時にも公的年金等控除や退職所得控除を受けられます。





 しかし、注意しなければならないのは個人型確定拠出年金は自分で行う運用である以上、元本確保型を除いて運用損が出る可能性があることです。

 運用とは関係なく口座管理料や信託報酬(投資信託で運用した場合)もかかり、必ずしもトータルで考えた場合、お得かどうかはわかりません。

 もちろん、元本確保型の定期預金や保険も用意されていますが、それらはほとんど運用益は期待できません。

 プロ中のプロである年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)でさえ、運用損を出す時代に個人で立ち向かえというわけです。

 経済成長が続いた時代はとっくに過ぎ去り、これからの経済成長は日本銀行のゼロ金利政策でも不透明な状態です。

 そのような時代に株や債券は運用益を出せるかは「わからない」としか言えないのです。




 つまり、政府では公的年金の委縮は止められないから、私たちは「自己責任」の海に放り出されたのです。




 問題の本質は「少子高齢化」なのです。

 現役世代が減り受給者世代の割合が大きくなりすぎているのです。




 私はなぜ、少子高齢化対策をもっと推し進めないのか不思議でなりません。

 確かに少子高齢化対策といってもすぐに効果が表れるものではありません。

 今、子供が生まれても年金保険料を支払うようになるのはかなり先の話、即効性はありません。

 だからと言って避けて通れない問題なのです。

 子どもを産めば生むほど生活が楽になるような社会を作らなければ年金問題は解決しません。

 年金改革法(年金カット法)で受給者世代と現役世代が年金の取り合いをしている場合ではないのです。