映画「宇宙戦艦ヤマト 4Kリマスター」を観る | 世日クラブじょーほー局

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 西暦2199年。地球は突如、ガミラス帝国の遊星爆弾による無差別攻撃を受け、海は干上がり、地表は放射能汚染で赤く染まった。強大なガミラス艦隊の前にそれを迎え撃つ地球防衛艦隊は奮闘もむなしく、壊滅の危機に。人類は地下都市を築き、なんとか生き延びているが、その滅亡の時は刻々と迫っていた。そんな折、地球から14万8000光年のかなたに存在する惑星イスカンダルからメッセージが届く。

 

 そこには放射能除去装置であるコスモクリーナーDを供与する旨とワープ航法を可能とする波動エンジンの設計図が納められていた。地球防衛軍はこの設計図をもとに、大東亜戦争の末期、鹿児島沖に沈没した戦艦大和に似せた宇宙戦艦ヤマトを建造し、イスカンダルへ向かうことを決意。沖田十三を艦長として、古代進、森雪、島大介ら総勢114名の乗組員は1年という限られた猶予の中、人類の希望を一身に背負い、「必ず帰ってくる」と往復距離29万6000光年という命掛けの旅に出発する…。

 

 1974年にテレビシリーズがはじまった「宇宙戦艦ヤマト」。毎回エンディングの「地球滅亡まであと○○日」のカウントダウンのフレーズに、手に汗まで握ったかどうかは定かではないが、強烈なインパクトを残した。当時は戦後30年にならんとする時期。高度経済成長もひと段落し、国民サイドはいよいよ戦争の記憶も薄れつつあった。そこへ「大和よ再び」だった。

 

 当初のテレビシリーズは不発だったようだが、再放送で人気が噴き出し、若者を中心にファン層を獲得していく。そして熱狂的ファンの要望に応える形で77年に本作が公開され、観客総動員数230万、興行収入21億円を記録したようだ。本作はテレビシリーズを切り取って繋げただけの急ごしらえで、場面が飛躍したり不満な点もあるが、大スクリーンでのヤマトの勇姿には代えられなかったろう。残るフラストレーションは次作「さらば宇宙戦艦ヤマト」の完成度で満たされるであろう。

 

 さて、本作のモチーフとなった戦艦大和は、それまでの大艦巨砲主義を究極の形に体現した当時世界最大の戦艦で、1940年の8月8日に進水式を迎えたが、その後、大した戦果も挙げられぬまま、時代は航空主兵に突入する。はからずもそれは、わが日本海軍による真珠湾攻撃が証明してみせた。もはや無用の長物と化した大和は大戦末期、菊水作戦のもと、沖縄救援のため出撃し、鹿児島の坊ノ岬沖において、米空母の艦載機による波状攻撃を受け、撃沈。時に1945年4月7日。

 

 「歴史通」(WAC)2010年9月号には、大和には、歯ブラシや女性用品の美顔クリームとメンスバンドまで搭載していたことが証言されている。3000名余の乗組員が大和とともに散った。この悲劇を忘れてはならない。劇中、完成したヤマトが坊ノ岬沖に眠っていた大和の下からその古い殻を破るように姿を現すシーンは、3000名の御霊と共にあるという思いが込められていよう。加えてささきいさおの勇壮な歌声のテーマ曲は、在りし日も今現在も国を守る者の魂を揺さぶるはずだ。

 

 君は大義のために自己犠牲を払う覚悟があるか。かかる価値観を持ち合わせているか。そしてそれを決断するに足る自分の「ヤマト」は何か。今、本作を通じて、自問自答したい。

 

(企画・原案・製作・総指揮)西崎義展

(美術・設定デザイン)松本零士

(監督)舛田利雄

(キャスト)

・沖田十三(納谷五郎)・古代進(富山敬)・島大介(中村秀生)・森雪(麻上洋子)・古代守(広川太一郎)・徳川彦右衛門(永井一郎)・真田志郎(青野武)・加藤三郎(神谷明)・佐渡酒造(永井一郎二役)・アナライザー(緒方賢一)・デスラー総統(伊武雅之)・スターシャ(平井道子)ほか、ナレーター:木村幌