映画「空母いぶき」を観る | 世日クラブじょーほー局

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 公開前からネット上で物議をかもした本作。いぶきは架空の存在だが、リアルにおいて、海自のいずも型護衛艦を改修して、垂直離着陸機F‐35Bを艦載する実質空母が誕生する予定。その全貌はいまだ不明だが、いぶきはそれを先取りし、スキージャンプ台式の甲板を備え、F‐35Bを15機艦載できる設定。

 

 ストーリーは、近未来において日本固有の領土である波留間群島の初島(架空の島)が、東亜連邦という3年前にアジアに建国された島嶼国家に占領される。これを受けて、いぶきを旗艦として、護衛艦4隻と潜水艦1隻よりなる第5護衛隊群が編成され、調査目的として現場へ向かう。その間、戦後初の防衛出動が出されるが、敵機動部隊を相手にいぶきはいかに戦い、果して、初島奪還はなるかというもの。

 

 当方は否応なく、4月に鑑賞したハリウッド映画「ハンターキラー」と見比べてしまったが、緊張感、スピード感、CGの完成度、キャスティングと、全てにおいて、見劣りしたと言わざるを得なかった。とりわけ主人公である、いぶき艦長、秋津竜太役の西島秀俊の間延びしたセリフ回しはどうにかならなかったか。ただ、近未来に起こり得る日本有事において、政府の対応、最前線に立つ自衛隊の戦いぶり、国民の反応など、思考実験にはいい材料かなと。

 

 もっとも、敵が一方的に侵略してきて、わが領土を蹂躙したにも拘わらず、なかんずく海上警備行動から防衛出動のフェーズに至ってもなお、ここまで相手を慮り、抑制的であらねばならないという自衛隊の立場に唖然とする。劇中の佐藤浩市扮する垂水首相が語るセリフとして「日本は、二度と戦争はしないと国民と約束した」にそれが集約されている。物量を別にすれば、自衛隊が持つ装備、現場に立つ自衛官の技量、熟練度、士気が相手を完全に凌駕するものであることがわかればわかるほど、口惜しい思いに駆られる。

 

 これではっきりした。専守防衛は役に立たず、一刻も早く憲法を改正し、自衛隊を国防軍に格上げして、有事に備えなければ取り返しが付かなくなる。加えて、本格的な諜報機関の創設や外交をアップグレードすることこともぬかりなく。要はわが国の安全保障に関して、戦後70年のくびきからの完全な解放を果たすべきで、当然そこには、核保有も選択肢に入る。むろん、米国の核の傘を前提とした日米安保を基軸とした上でだ。

 

 それはそうと、領土問題は実効支配した方が勝ちで、よって一刻を争う。島奪還まで24時間がタイムリミットで、米海軍第七艦隊が出てこないというのもポイントだった。ただ、原作では、敵ははっきりと中国人民解放軍となっており、尖閣、多良間島、与那国島が占領される設定。それを映画化するにおいて、ぼかしてトーンダウンせざるを得ず、自衛隊の協力も得られないという状況が日本の現実を表しているといえる。

 

(出演)

西島秀俊、佐々木蔵之介、本田翼、小倉久寛、高嶋政宏、玉木宏、戸次重幸、市原隼人、斉藤由貴、藤竜也、吉田栄作、佐藤浩市、村上淳、堂珍嘉邦、片桐仁、和田正人、中村育二、益岡徹、中井貴一ほか

(監督)若松節朗