映画「一陽来復」を観る | 世日クラブじょーほー局

世日クラブじょーほー局

世日クラブ・どっと・ねっとをフォロースルーブログ。

 

 

 

 東日本大震災からまもなく7年を迎える。東京はじめ被災地以外ではもう何事もなかったかのように、特にテレビなんか愚にもつかない馬鹿番組が目白押し。だが、被災地ではそうはいかない。表面上、復興も進んできていることは事実(地域による濃淡はあるにせよ)としても、被災者は悲痛な思いを秘めながら、毎日を懸命に生きている。

 

 本作は、特に甚大な津波被害のあった宮城県石巻市、同南三陸町、岩手県釜石市と原発事故の影響が酷かった福島県川内村、同浪江町を舞台に、10ヵ月間のロケと100人以上の人との出会いを映し撮ったドキュメンタリー。ちなみに、3月2日の世界日報最終面で全面広告が掲載されました。

 

 地震のあと、家で子供三人の無事を確認して、知人の安否確認に向かったが、津波に子供らを家屋ごとさらわれ、取り残された夫婦…。震災5日前に結婚式をあげ、11日は入籍の日だったが、夫は津波の犠牲となり、その四か月後、女児を出産した母親と当の娘…。アメリカから語学指導員として来日し、幼稚園と小中学校で教えていたが、震災当日、教え子たちを無事避難させた後、自身は津波の犠牲となった米国人女性…。この女性の両親は全米から集まった寄付金を元に基金(テイラー・アンダーソン基金)を設立し、娘がすごした石巻市の被災者のサポートに尽力している…。そして政府から放射能汚染による殺処分の指示に反発し、いまだ330頭の牛を飼育し続ける福島県浪江町の畜産農家の男性…。そのほか涙なしには聞けないエピソードで綴られていく。

 

 あの日あの時、想像を絶する苦難との遭遇を余儀なくされた被災者たち。運命とはかくも苛烈で情け容赦ないものか。「なぜ?」「どうして?」「これからどうすれば?」―慟哭にも似た叫びも、自然が相手ではただ虚しく空を切るのみ。それでも被災者はこんにちまで一歩一歩、歯を食いしばって生きてきた。今では笑顔も浮かび、冗談も言える。

 

 7年の節目にあらためて思う。かかる苦難は被災者のみが引き受ければいいというものではない。われらは同胞であり、日本全体が運命共同体として痛みを分かちあうべきだ。そういう意味であの大震災には意味があった。単なる自然の猛威ではないし、またそうしてはならない。被災地の犠牲は、人が生きる真の意味を知るための産みの苦しみだ。それを知るきっかけが本作といえるかもしれない。1時間20分の短編映画で被災地のすべてをカバーできるはずもない。ただ、甚大な被害を受けた三県を均等に、そして語る人の言葉を意図して切りとらず、自然体の姿を収めることによって被災地の今の声を凝縮した作品となったといえよう。

 

 東京ではヒューマントラストシネマ有楽町にて午前中2回のみの超限定公開(いつまでかは不明)ですが、ぜひご家族で。

 

(出演)

遠藤伸一、遠藤綾子、夏原美智子、秋元美誉、秋元ソノ子、井出茂、奥田梨智、生駒文男、奥田江利香、前川智克、二本松富太郎、阿部憲子、伊藤俊、久保田芽生、柏崎久雄、佐藤紀子、佐藤知子、佐藤典明、小野寺京子、猪狩安博、鈴木堅一、Jean Anderson、Andy Anderson、吉沢正巳、後藤一麿、後藤清広、ほか

(ナレーション)

藤原紀香、山寺宏一

(プロデューサー)益田祐美子