中学校2年生の時。
6月の梅雨の、肌寒い日のこと。

国語の時間に先生から、前後で話し合うように言われました。
私は一番前の席だったので、椅子を引いて座ったまま、左側から脚を出して、後ろを向きました。

私の、後ろの席の女の子の、左側に、ちょうど誰かが立っている位の頭上に、「真っ黒いもの」が浮かんでいました。

私は驚いて、じっと、それを見つめて何も言えませんでした。
重い気持ちになりました。
少し縦長の丸い、真っ黒なものです。

後ろの席の子に「どうしたの?」ときかれましたが、私は空中を見つめたまま、「うん。」と言うだけにしました。

後ろの席の子には、あまりにも似つかわしくない黒い影です。

私が、空中を見つめたまま、話し合いの時間が終わりました。

前に向き直ると、すぐに、前の入り口をノックする人影が見えました。

あっ、来た!と思いました。

後ろの席の女の子の、おじいさまが亡くなった、という知らせでした。

入り口の所で、知らせを聞いた彼女は、呆然として
席に立っています。

私は、彼女の机の物をまとめ、「机の中の物、出して」と声を掛けました。



真っ黒い影は、おじいさまが来ていたのでした。
死の知らせとして、真っ黒い顔で現れたのでした。