わたくしがかつて留学していた台北の大学は、敷地内が誰でも入られる、いわゆるオープンキャンパスであった。


ある日、確か昼休みに学食へ向かうため、校舎玄関で学友を待っていた時だった。


そこへ歳の頃は25、6歳前後と思われる女性が現れ「ちょっとお時間いいですか」と声をかけられた。


台湾人のアクセントではなく、韓国人の話す北京語だった。


わたくしが「ちょっとだけなら」と返答すると、一見して宗教関連とわかるパンフレットのページをめくりながら、たどたどしい北京語で説明するその女性。


そのパンフレットに、統一教會と記されている四文字をわたくしは確認した。


日本で統一教会の邪教ぶりが報じられたのは1980年代からだったと思う。時同じくして日本のメディアを通してすでに台湾でも知ることになったので、すぐにピーンときた。


あなたは統一教會(トンイージャオホイ)の関係者ですか?とわたくしが尋ねると、その女性は「そうです」と即答した。


丁寧にわたくしに説明してくれたが、正直言うと、どんな内容だったかは、はっきりと覚えていない。


周りを見渡したところ、少なくとも他に2人の統一教会関係者がキャンパス内で学生たちに声をかけていた。その2人も女性であった。


統一教会の本国韓国から派遣されており、韓国で極々基礎的な北京語を学んでから台湾へ派遣されたという。


こちらから根掘り葉掘り質問をぶつけようしたが、その女性は短期間しか北京語を学んでおらず、深い内容の話はできなかった。


彼女らは3ヶ月間台湾で布教活動したのち韓国へ戻り、そしてまた別の者が台湾へ派遣されるという。そこまでは確認できた。


前述のとおり、すでに統一教会の邪教ぶりは知り得ていたので、勧誘には乗らなかった。


もし事前情報を知らず、言葉巧みに話しかけられたら、甘言の誘いに乗っていたかもしれない。



その後、旧統一教会関係者との接触はなく、それらしき人物がキャンパスに出没することはなかった。他へ渡っていると思う。


下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」で、手当たり次第声かけて数こなしていけば、誰かは誘いに乗るかもしれないが。


今にして思えば彼女らは2世信者だったのかもしれない。その中で目を覚まして脱会した人はいるのだろうか。


それとも未だ皆洗脳にどっぷり浸かっているのか。ならば、いい加減目を覚ませよ!と言いたい。



当時、知り合いの台湾人は、日本であの報道がなかったら統一教会の存在を知ることはなかったという。


わたくしが、まさか台湾で統一教会から声をかけられるとは、つゆほども思わなかったが。



世間を煙に巻くためか世界平和統一家庭連合と名を変え、一見すると旧統一教会とはわからない。判別がつかない。ご存知の通り、現にそれとは知らず会合に出席した議員が多数いたほどだ。




台湾では政党も抱える


2014年には台湾で天宙和平統一家庭黨なる政党も結成し、議員数ゼロだが、地方の台東市豐榮里の村長に就いている。


わたくしが台湾の友人たちに聞いた限り、この政党の存在自体知らない人が多く、認知度は低い。


尚、今のところ旧統一教会は台湾では邪教扱いになっていない。


台湾でどの位の信者数がいるか、そんなの知ったことではないが、政党を抱えているとは驚きである。

地方の村長席わずか1人に留まっており、政治的影響力は限りなく小さいと見ている。

雨後の筍の如く台湾には一万もあるといわれる宗教数。その数は増える一方なのだが、それに埋もれて旧統一教会は目立たない存在だというのが実情。



記憶の彼方から消えそうに

1980年代〜1990年代にかけて世間を騒がせ、邪教と言われようが、時の経過が過去のすべてを忘れ去り、記憶の彼方から消えようとしていた。

それが安倍元総理襲撃事件をきっかけに、数十年ぶりに耳にする統一教会の四文字に、わたくしがかつて台湾で体験した上述の出来事を想起させられたのである。

もし安倍元総理襲撃事件がなかったら、今再び旧統一教会に社会の目が注がれることはなかっただろう。わたくしも、こうしてブログに書くことはなかったと思う。


ここでふと思う。旧統一教会は、今でもあのような形で台湾で布教活動をしているのだろうか。