昨夜、久々に二葉百合子さんの「岸壁の母」を聴き、今から212年前、台北市南京東路の、とあるショーパブでの出来事を思い出した。



店名は失念してしまったが、団員はすべて男性で、皆女装してショーを繰り広げる(注)彼らはゲイではない。



ある演目で、老婆に扮した団員一人が「岸壁の母」を口パクで歌い、ステージから杖をつきながら客席ひとつひとつを練り歩くシーンがあった。



歌詞の意味がわかっているのであろう。なんと、感極まって老婆扮する彼は、堪えきれなくなり、涙をこぼすのであった。



1日、少なくとも2ステージはこなす彼ら、毎日その都度いちいち泣いていられないだろう。第一身が持たない。



あの涙は演技ではなく、偶然にもこの時、歌の情感が彼に入り込み、魂が揺さぶられ、心底溢れてきた涙だと信じたい。



二葉百合子さんは、今年87歳を迎え、元気な姿で今も現役で歌っている。聴く者を魅了して止まない、あの力強い声量には感動すら覚える。



シベリア抑留から還らぬ我が子を待つ、母親の切なる思い。実話を基にした歌詞には情感に訴えるものがあり、



きっと、あのショーパブ団員の彼の心にも響いたのであろう、歌詞の本意が。そう思うほうが自然だろう。



岸壁の母と台湾、一見結びつきそうにない二つの線だが、実はこの曲を歌い、歌詞に込められな背景をも理解している台湾の人がいるのである。



そんな台湾が、愛おしくてたまらない。