3月末、JR北海道根室本線の一部、富良野-新得間が廃線になります。
私が幾度となく北海道を彷徨していたころ、根室本線は札幌から帯広/釧路方面を結ぶ幹線でした。特急や急行列車が何本も走り、均一周遊券では特急には乗れなかったので、小樽発釧路行の夜行普通列車にも何度も乗りました。
富良野-新得間、最大の難所は狩勝峠越え。
1966年、新狩勝トンネルができるまでは、SL列車が活躍していました。
(↓の写真は、根室本線旧線の新内駅跡に静態保存されている蒸気機関車)
1981年のTVドラマ「北の国から」第1回、五郎・純・蛍を乗せた気動車が画面の向こうから布部駅に入線するシーンから、このドラマは始まりました。
布部の駅前から、草太(岩城滉一)のおんぼろトラックで一家は麓郷に向かいます。
第3回でも布部駅は登場しました。
麓郷の暮らしに耐え切れず、雪子(竹下景子)に連れられ東京に戻る純。
見送りにきた清吉(大滝秀治)の名セリフがありましたね。
「おまえら負けて逃げるんじゃ、わしらを裏切って逃げ出していくんじゃ」
第17回、富良野を去る令子(いしだあゆみ)が乗ったのは、根室本線の急行狩勝。
蛍が泣きながら列車を追いかけ、令子が窓から身を乗り出して手を振るシーン、覚えている方も多いでしょう。
「北の国から」の放送が始まった1981年10月、根室本線は、10/1に開通した石勝線に札幌-帯広/釧路間の主ルートを奪われ、富良野を通る急行は1990年に廃止、富良野は鉄道で行くのは不便な町になっていきました。
根室本線も通学の高校生が目立つローカル線に変わり、ドラマの中でも登場機会は減っていきました。
「'92巣立ち」では、まだ、蛍は勇次(緒形直人)に会うために、休みのたびに、旭川から富良野を通って帯広まで根室本線を使いますが、
「'95秘密」では、れい(横山めぐみ)は富良野から高速バスで札幌に帰りますし、蛍が駆け落ちして落石に向かう時には、新得駅まで純が車で送っていきます。
根室本線が、もう一度、映画の主役になったのは1999年「鉄道員(ぽっぽや)」。
幌舞線の終着駅「幌舞駅」として撮影された幾寅駅でした。
駅内シーンは当然スタジオ撮影ですが、駅前のだるま食堂・井口理容店、雪子(広末涼子)が乙松駅長についていってもらうトイレなどのセットは残っています。
幾寅駅前の朝。まもなく始発がやってきます。だるま食堂の脇には、旧塗装の朱色に塗り替え、映画の主要な役を演じた気動車キハ40-764の姿も。
乙松駅長は駅舎を出て、ひとり、ホームに向かいます。ほら足跡が(笑)
やがて、遠くから聞こえてくるキハの汽笛。
雪煙を上げながら、上り始発がやってきました。
乗り降りする客もなく、無人駅のホームで見送るのは私ひとり。
幾寅駅を最後に訪れたのは2016年3月。その5ヶ月後の台風10号で線路は寸断、それ以来、このホームに気動車が戻ってくることはありませんでした。
かなやま湖近くの国民宿舎に、「鉄道員」の記念ボードが飾ってあります。
この宿は、1999年1月の幾寅ロケでスタッフの宿舎として使われました。
それから25年、高倉健さん、志村けんさん、奈良岡朋子さん、田中好子さん、そして降旗康男監督、この映画に登場する多くの方々が旅立たれました。
そして、映画の幌舞線を追うように、根室本線も1907年の開通から117年目で終焉の時を迎えます。さようなら根室本線、様々な思い出をありがとう。
※この記事の写真は2014年~2019年に撮影したものです。
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(この稿おわり)