lec427.他者にはけっして入り込まれたくない部分 | カウンセリングサービス 仙台オフィシャルブログ

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カウンセリングサービス代表の平準司です。

 

私たち人間は、“パーソナル・スペース”と呼ばれるものをもっています。

 

他者にはけっして入り込まれたくない部分のことです。

 

パーソナル・スペースは、たいてい思春期に出現します。

 

子どものころの私たちは、親が「自分のすべてを知ってくれている」ということに大きな安心感をもっています。

 

ですから、学校から帰ると、その日の出来事をあれもこれも親に話し、知ってもらいたいと思うのですね。

 

しかし、思春期になり、男の子も女の子も体に変化が出はじめるようになったころから、「自分を隠す」ということをしたくなります。

 

自分の部屋がほしいとか、お風呂は自分一人で入りたいと思うようになるのもこのころからですよね。

 

親から自立し、一人の大人として、だれにも踏み込まれないスペースを守りたいと思うわけです。

 

すなわち、パーソナル・スペースです。

 

人は子どものころ、期待して、裏切られ、失望するという経験を繰り返します。

 

そして、何度も失望して傷つくと、やがて、自分にこう言い聞かせるようになります。

 

「もう期待しないでおこう。そうすれば、失望しないですむ。いいことがあったときだけ、ラッキーと思おう‥‥」

 

そして、とくに子どものころに失望した経験が多いと、心の中のパーソナル・スペースは大きくなるいわれます。

 

 

あるときのこと、自立的でパーソナル・スペースが非常に大きい男性が一人の女性と恋に落ち、同棲することになりました。

 

ところが、彼女と一緒だと、緊張して眠ることができません。

 

それどころか、まるで自分の体内にエイリアンが入ってきたような感覚があり、大好きな彼女に違和感をもつようになりました。

 

で、彼は感じます。

 

「一人でいるほうがラクでいいなぁ‥‥」

 

普通ならば、ここで彼女とお別れしたり、距離をおいた恋愛をしたりという選択をするのかもしれません。

 

が、残念ながら、彼はうちの受講生で、「なぜ、自分はこんなふうに、愛する人に気を遣うのだろう」と考えることになったのです。

 

カウンセリングを受けにきた彼に、私はこう言いました。

 

「それはね、きみが彼女にものすごく期待しているからだよ」

 

かつて、自分を失望させたおとうさんやおかあさん、自分のことをまったく理解してくれなかった学校のあの先生‥‥。

 

彼はそうした人々を彼女に投影し、そして、こんな疑いを抱くわけです。

 

「おまえもどうせ、おれのことをわかってくれないんじゃないかな?」

 

彼女を疑っている間、彼女への愛は止まります。

 

そして、愛していないモノのことを、心は敵と認知します。

 

つまり、彼女のことを疑っているかぎり、同棲することはすなわち、敵と一緒に暮らしたり、一緒に眠ったりすることになるわけです。

 

ぜったいにリラックスできないですよね。

 

彼は、昔々、ひどく傷つく経験をしたときに、「もう、だれも信じない。もう、だれもあてにしない」と決めたようです。

 

ところが、そんな彼の前に、彼女という「期待したい人、あてにしたい人」が現れて、心の混乱がはじまったというわけです。

 

そんな話をすると、彼は困り顔で私にこう聞きました。

 

「じゃ、どうしたらいいんですか‥‥?」

 

「そうですね、その話‥‥、傷ついた経験の話、だれも信じない、あてにしないと思ったときの話をぜんぶ彼女にしてみてください」

 

「そんなことでいいんですか?」

 

彼はそう言って帰っていったのですが、実際にその話を彼女にしようと思ったところ、なぜだかスムーズに話し出せずに固まってしまったのだそうです。

 

ようやく話しはじめたところ、彼自身、びっくりしたのですが、ものすごく大きな感情が動き出しました。

 

そして、泣きわめきながら、彼女に向かって、「ぜったい、おれから離れないでくれー!」と言う自分がいたそうなのです。