lec144.働かない男 | カウンセリングサービス 仙台オフィシャルブログ

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カウンセリングサービス代表の平準司です。

 

彼はとてもやさしくて、家事も育児も手伝ってくれます。

 

洗濯物などは取り込むだけでなく、たたんで収納することまでしてくれますし、掃除にいたってはエアコンのフィルターや換気扇の掃除もマメにしてくれます。

 

奥さまはいつも「あなたのだんなさまは、マメでいいわねー」と友だちから言われるのですが、そんなだんなさまにもものすごく大きな問題が一つあるのです。

 

そう、彼は働かないのです。

 

まったく働かないわけではないのですが、働き出しても長続きしないのです。

 

半年が過去の最長記録、ふつうは2・3カ月、早いときは2週間で会社を辞めてしまいます。

 

マイペースな彼は、自分のペースが崩れたり、人に合わせてなにかをしたりということが非常に苦手であるようなのです。

 

たとえば、働かないうえに酒を飲んで暴れたりとでもいうことなら、彼女も即刻、離婚を決意するだろうと思うのですが、先ほども書いたとおり、なにぶん“よい人”であるがゆえ、彼女も困ってしまうわけです。

 

彼はどちらかというと、男っぽいタイプではありません。

 

平和愛好家というか、争いが嫌いで、自己主張というものをあまりしません。

 

そんな彼にとっては、日常生活ではがまんすることが当たり前になっているのでしょう。

 

しかし、過度のがまんは彼には耐えられないほどのストレスになるようで、どうも、それが仕事が長続きしない理由であるようです。

 

もちろん、彼自身、そのことを気に病んでおり、愛する奥さまと一人娘のために、しっかり稼げるだんなさまやパパになりたいと思っていますが、それがうまくいかないわけです。

 

そんなわけで、現状としては奥さまがバリバリと稼ぎ、だんなさまは専業主婦さながら、炊事や洗濯、子どもの保育園の送り迎えなどを担当しています。

 

彼女は「これはこれで、いいのかな‥‥」と思う一方、彼が家庭的になっていくにつれ、男性としての自信を喪失していっているように見え、そこについては心配していました。

 

そこで、「さほど稼いでもらわなくてもいいから、なんとか男として自信回復できるよう、彼には外に出てもらいたい」と彼女は思ったわけです。

 

その彼女が彼をカウンセリングに連れてきたとき、たしかに、とても“いい人”だという印象を私は彼にもちました。

 

同時に、まるで少年のような雰囲気も強く感じたのです。

 

生い立ちを聞いてみると、彼は沖縄出身で、父親のいない母子家庭で育ったとのこと。

 

そして、おかあさんが留守の時間もよい子として育ってきたわけです。

 

話を聞けば聞くほど、いまの彼の生活環境が子ども時代とそっくりであることがわかります。

 

僕が家でよい子で待っていれば、おかあさんが「きょうもいい子にしていたわね」とほめてくれて、自分が役に立ったというかんじがするわけです。

 

おかあさんもいまの奥さまと同じく、とてもエネルギッシュな人で、そして、そのおかあさんが元気で笑顔であることが、少年のころの彼にとってのなによりの望みでした。

 

そのために、自分はよい子でなければあらないというのが彼のパターンを作ってきたようです。

 

一方、彼は自分の父親のことを知りませんでした。

 

つまり、大人の男性としてどうふるまうかという見本が身近になかったので、結婚してからも、少年のような愛し方でしか女性を幸せにする道がわからなかったようなのです。

 

しかも、彼は自分が大人の男になってしまうことで、おかあさんを捨てた見ず知らずのおとうさんのようになってしまうのではないかとも感じていました。

 

そのために、彼は自分の男性性を抑圧していたようなのです。

 

そこで、私は彼がもっているおとうさんのイメージが正しいかどうか、おかあさんに聞いてみることを提案してみました。

 

すると、なんと、彼のおとうさんも彼同様、とてもやさしく、どちらかという気の弱いタイプの男性で、おかあさんはそれが物足りなくて、おとうさんをふったというのです。

 

その話を聞いたとたん、彼の中にはものすごい感情が沸き立ちました。

 

「このままでは、おれは捨てられるかもしれん‥‥!」

 

もう少し早く気づいていただきたかったわけですけどね。

 

まもなく彼は現在の職に出会い、人生で初めて腰を据えて仕事をしています。

 

そのバイタリティの源が「捨てられたくない」という思いだというのは、とてもおもしろいことですね。