今日の画像は、スイスアルプストレッキンのスナップ『ミューレンからの下山道風景』、北大路欣也主演の『藤沢周平原作・三屋清左衛門残日録』、徳島県の岩島・大辰巳島の『前人未踏の辺境クライミングルートを登る麻莉亜』。そして、

絶大な人気を誇る『ネモフィラ』と、人気急上昇の『ファセリア ブルー・バル』です。いろんな種類の花が一気に咲き誇ります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■■清左衛門が顔を上げると、少年たちがいなくなっていた。殴り合っていた野添と戸川も見えず、少年たちは1人残らず姿を消していた。幻を見たようなあやしい気分が胸をかすめたが、よく見ると建物の影は荒れ地の中ほどまで這いすすみ、日のいろはすっかり衰えていた。清左衛門の放心が長かったのである。

 

草むらから逃げ出した光は、それまで気づかかなった荒れ地の隅にある木に這いのぼって、細い幹をわずかに光らせていた。そしてその木の後ろには緑の稲田がつづいていた。しかし穂孕み前の稲田は、日を受けながら日没のあとのようにいちめんに暗く見えた。

 

――吉井彦四郎は死んだ。

何の木か、頂に鳥の巣のような枝葉をひろげ、白っぽい幹を光らせている隅の木を眺めながら、清左衛門はぼんやりそう思った。

 

小沼金弥の代役で殴り合ってから、清左衛門は吉井彦四郎ともつき合うようになった。2人でよく釣竿をかついでおさん沼に行った。沼は城下の南に見える丘の麓にあって、昔おさんという娘が、領主に召されたが城に行くことを拒んで身投げしたというその沼では、鮒が釣れた。

 

吉井彦四郎は挙措の落ちついた少年だったが、無口だった。清左衛門は、彦四郎といて金弥と一緒の時のように声を出して笑うことはほとんどなかったが、並んで黙って釣糸を垂れているのも、それはそれで楽しかった。清左衛門の釣好きの嗜好は、その頃に培われたものである。

 

城下から沼のある丘の麓まで、ざっと小1里はあっただろう。途中に村が2つあった。その行き帰りの途中で、彦四郎が重い口をひらいて何か言うこともあった。

 

そういうつき合いが1年近く経った頃、2人は釣りの帰りに激しい雷雨に会った。遠くで雷が鳴りはじめたのに2人とも気づいて、それで帰り道についたのだが、空は2人が歩き出すのを待っていたかのように、みるみる暗くなった。ついさっきまで、あたりの木や草を日が照らしていたのが嘘だったような、急な変化だった。

 

■■<攻めるコープさっぽろ①『アマゾンより安く効率的に』>北海道で消費生活協同組合の『コープさっぽろ』が成長を続けている。組合への加入世帯数は北海道全体の7割を超え、食品宅配はは6軒に1軒が利用する。支持を広げている理由は何なのか。

 

その強さを支えるある施設を訪ねた。札幌市から車で30分。江別市にあるコープの物流倉庫だ。ジャングルジムのように立体格子状に積み上げられたコンテナ群の上を、70台の赤い箱形ロボットが滑るように走り回る。指定された商品の入ったコンテナを引き上げ、従業員の手元に届けた。

 

47万世帯の注文品を自動でピッキング(仕分け)する巨大システムだ。従業員が棚にある商品を探して歩き回る必要がなく、省スペースで多様な商品を保管できる利点があるという。

 

コープさっぽろは2018年にノルウェー製のこのシステムを道内で初めて導入し、食料品・日用品の宅配サービス『トドック』の取り扱い品数をそれまでの5千品目から4倍の2万品目に増やした。これは大型食品スーパーとドラッグストアを合わせた品数に相当する。今はさらに2万5千品目に増やした。

 

トドックはこの幅広い商品群を、離島も含む北海道全域に週1回配達するサービスだ。首都圏の『コープデリ』や『パルシステム』などと同様の宅配だが、全国の生協では3千~5千品目が一般的ななか、その商品数の多さは突出している。

 

配送料は1回220円だが、子育て世帯や60歳以上は免除なるなど、実際には利用者の8割超が無料配送の対象。それでいて商品の価格もネット通販大手のアマゾンより安く設定しているという。

 

大見理事長は『どんな「ポツンと一軒家」でも生活できる道内のインフラになっている』と話す。

 

道北部の猿仏村では、村内の食品小売りシェアの4割超をトドックが占める。村内にある小売店はミニスーパーとコンビニだけで、大型スーパーは車で1時間かかる隣の稚内市にしかないためだ。

 

1人暮らしの稲垣律子(71)は、『お米や水などの重いものも玄関まで持ってきてくれるし、薬や日用品もあって便利』と話す。

 

■■<楽天モバイルが強化する『スマホ直接通信』、スターリンクとの違い>楽天モバイルは、2026年にAST SpaceMobileの衛星を使ったスマホとの直接通信サービスを提供する。

 

楽天モバイルは、米AST SpaceMobileが展開する低軌道衛星を活用し、2026年にスマホとの直接通信を開始することを表明した。AST創業時には、楽天グループが約300億円を出資しており、戦略的パートナーに名を連ねている。

 

大手キャリアは、人口カバー率99.9%を実現しているが、これはあくまで、人が住む場所を基準にしたエリア。国土全体で見ると70%程度しかカバーしていない。低軌道衛星を使うことで、残りの30%をエリア化できる見通しだ。

 

◆『スターリンクとは何が違うのか』 楽天グループの代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏によると、'26年に予定しているのは『あくまでブロードバンドサービス』。『音声であろうがSMSであろうが、IoTであろうが、特定のサービスのこだわることなく、すべてが使えるようになる予定』だという。これは、KDDIが'24年に開始する、Starlink(スターリンク)とスマホの直接通信サービスを意識した発言とみられる。

 

サービスインはKDDIとStarlinkのタッグの方が早くなる見込みだが、Starlinkは当初、SMSなどのメッセージングに限定される。音声通話やデータ通信など、地上局と変わらないフルサービスは準備が整い次第とされており、時期は明言されていない。

 

これに対し、楽天モバイルとASTは、'26年とサービスインは後れを取る格好だが、スマホに必要な通信はまとめて提供する。SMSだけでなく、音声通話やデータ通信も提供する予定。災害時などに切り替えて使えるような運用を想定しているようだ。

 

すでにサービスを展開しており、5,000機を超える衛星が周回している点で、Starlinkの方が有利なように思えるが、スマホと直接通信するには、アンテナなどの機材を変更した専用の機器が必要になる。相対的にアンテナのサイズが大きい現在のハードウェアとは異なり、スマホは送信出力が限られる。そのままだと、電波が減衰してしまい、アップリンクが届かず通信ができない。この微弱な電波を衛星側でキャッチできるよう、アンテナの大型化が必要になる。米SpaceXが打ち上げた「V2 Mini」は、こうしたスマホ対応をした衛星だ。

 

一方で、三木谷CEOよると、ASTの衛星は『StarlinkやOneWebとは概念的にも構造的にも大きく異なる』という。具体的には、衛星のサイズが他社のものよりも『極端に大きい』。そのサイズは約25m四方。1機あたり、半径24kmをカバーできる。そのため、全世界でサービスインするための局数も『約90機』(AST SpaceMobile アーベル・アベラン会長兼CEO)と少ない。Starlinkは衛星の数を増やして容量を上げていく計画だが、仕組みが大きく異なると言えるだろう。

 

ASTが使用するアンテナは、他社のものと比べて巨大。これによって、地上のスマホとの通信を可能にする。その設計は、当初からスマホやIoT機器との直接通信をターゲットにしていたことがうかがえる

 

◆『音声通話で先行する楽天モバイル×AST』 すでにASTの衛星である『BlueWalker 3』」は展開に成功しており、通信実験にも成功している。'23年4月には、市販の『Galaxy S22』を使って音声通話を行なっており、6月には10Mbpsのデータ通信を、9月には5MHz幅あたり14Mbpsの5G通信も実現した。三木谷CEO自身も、通信実験の一環としてASTの衛星を介した音声通話を行なっている。

 

日本では、北海道で通信実験を行なう予定で『こうなると日本でちゃんと動くことが証明される』(三木谷)。これに対し、Starlinkの直接通信は実験もこれから。この点では、ASTが一歩リードしている。

 

◆『米国では、通信実験に成功している』 日本では、北海道で実機を使った実験を行なう予定だ。ASTやStarlinkの直接通信は、既存の周波数を使い、スマホ側には特別なカスタマイズを入れないことが想定されている。三木谷氏が『今お持ちのスマホがそのままつながる』と語っているのは、そのためだ。災害時などは、地上局からASTの衛星局に自動でエリアを切り替えるような仕組みを想定しているという。こうした柔軟な運用ができるのは、楽天モバイルが完全仮想化されたネットワークを採用しているからだという。

 

また、既存の周波数や既存のスマホを直接使った衛星とスマホのダイレクト通信は、各社が独自で拡張した仕組みを採用している。携帯電話の標準仕様を定める3GPPでは、NTN(非地上系ネットワーク)の通信仕様を策定しているが、これに準拠しようとすると、「Release-17」以上に対応したチップを搭載したスマホが必要になり、周波数も限定される。これに対し、ASTやStarlinkは、既存の仕様を拡張したものだ。

 

高速移動している衛星から地上に電波を飛ばすと、遅延が大きくなるほか、ドップラー効果が発生する。消防車や救急車が通りすぎたあと、サイレンの音色が変わるのがそれだ。衛星との通信では、これを補正する必要がある。3GPPのRelease-17では、これをチップセット側で行なう。これに対し、ASTやStarlinkの場合、端末にはカスタマイズができないため、地上局での補正が必要になる。

 

楽天モバイルのネットワークは、楽天シンフォニーが運営しており、自前でソフトウェアなどを開発している。ソフトウェアベースのため、専用機器を導入したり、外部ベンダーに委ねている他社より柔軟性が高い。三木谷氏も、『それを自分たちで握っていることで、地上局も合わせた最適化がやりやすい。ほかの技術でも不可能というわけではないが、よりやりやすい』と語る。

 

◆『“衛星”による通信・通話の可能性』 楽天モバイルのサービスとは別に、ASTの衛星通信と楽天シンフォニーのネットワークをセットで海外に展開していく構想もあるようだ。三木谷CEOは、『アフリカなどの国に行くと、電気もファイバーもないところが多い。そういうところで衛星をやりつつ、地上局は我々のO-RAN(仕様をオープン化した無線機器)で対処するということができる』と話す。ここでも、楽天流の“二毛作”が展開されるというわけだ。

 

とは言え、サービス開始はまだ2年以上先の話。料金プランも、通常のものに含めるか、別建てにするかは『今考えている』 (三木谷)ところだという。こうした点は、競合になるKDDIとStarlinkの出方を見ながら決めていくことになるはずだ。衛星の打ち上げが計画通りいかなければ、サービスを延期する可能性もある。その意味で、今後の進捗にも注目しておきたい。

 

◆楽天は、進出したスマホ事業で膨大な赤字を出し続けている。が、このような次世代の通信技術も視野にいれたビジネス展開をしており、さらに技術輸出ももくろんでいるところから、私は、楽天の苦境脱出は近いと見ているがねえ。さあ、どうだろうか。三木谷が孫正義の二の舞が踏めるか、な。