今日の画像は、スイスアルプストレッキンのスナップ『ミューレンからの下山道風景』、北大路欣也主演の『藤沢周平原作・三屋清左衛門残日録』、徳島県の岩島・大辰巳島の『前人未踏の辺境クライミングルートを登る麻莉亜』。そして、色鮮やかな『ルピナス』と『マーガレット』です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■■今日の少年たちとは逆に、清左衛門たちは道場の前の道に出ると真っすぐ北にむかって歩いた。日雀町を通り抜け、つぎの釣瓶町で丑寅に方角をとると、やがて正馨寺という禅宗の寺の門前に出る。寺守ちの老人だけが住む大きな荒れ寺の塀に沿って裏に回ると、そこがひろい野原になっていた。

 

片隅に湿地帯があって、夏の間はそこの葭原に巣をかける葭切りの声が絶えない原っぱは、ふだんの遊び場所というわけではないが、今日のような揉めごとの決着をつける場所として、大ていの者が知っていた。そういう場所は、ほかにも2、3カ所あった。

 

清左衛門たちが原っぱに踏み込んだ日も、暑い日だった。膝まである草をわけて、湿地の反対側にある地面が露出している場所に歩いて行くと、草いきれが顔をつつんで来た。しかし原っぱを照らしているのは、ねっとしとした晩夏の光で、草は穂を垂れ、葭切りはもう啼いていなかった。

 

『日が暮れないうちに決着をつけよう。いいな』

葭原の陰に落ちかかる日をにらんで、佐伯熊太がそう言った。熊太はその頃から音頭取りが得意で、世話好きだった。

 

『おれはいつでもいいぞ』

落ちついたしぐさで、腰の小刀をそばの少年にわたしながら、吉井彦四郎が言った。

小沼金弥も刀をはずそうとしていた。だが金弥は手がふるえて刀をはずせなかった。

『どうした』

 

その頃はまだ清之助といっていた清左衛門が声をかけると、金弥は顔を上げて清左衛門を見た。そして笑ってみせようとしたようだが、うまく笑えずにべそをかいたような顔になった。手はさらにはげしくふるえて、腰から刀をはずすそれだけのことが、金弥にはどうしても出来ないのだった。

 

■■<シャープ液晶『遅すぎた撤退』>シャープはテレビ向け液晶パネル生産からの撤退を発表した。1991年に量産を開始して以降、主に液晶パネルで計上した連結最終損益の赤字は合計で1兆9,000億円を超える。『世界の亀山モデル』は一世を風靡したものの、海外勢との競争で後手に回り、中国のパネルの生産能力は日本の10倍以上になった。遅すぎた撤退戦が始まる。

 

1991年春に、初の液晶パネルの専用工場として天理工場を稼働させて以降、30年以上にわたり液晶パネル事業を中心に計上した連結最終赤字は計1兆9,600億円。黒字の合計額、1兆1,200億円を差し引くと、8,400億円のマイナスだ。

 

2012~16年に陥った経営不振を独力で立て直すことは出来ず、16年に台湾の『鴻海精密工業』の傘下に入った。パナソニックなどが撤退した後も国内で唯一テレビ向けパネルの生産を続けた裏には、シャープのブランド力を評価した鴻海側の意向があったとの見方もある。

 

米調査会社によると、23年のテレビ用液晶パネル市場の世界シェアはBOEが26.5%で首位。5位のシャープの7.9%の3倍以上のシェアを握る。日本勢と中国勢のテレビ向けパネルの生産能力は現在15倍程度の差があるとみる。

 

テレビ大手がBOEなどの上位メーカーから優先的にパネルを調達し、シャープは補完的な調達先に甘んじるケースもあるもよう。この結果、堺工場の直近2年間の月間稼働率は一時1割程度まで下がり、投資家や金融機関から撤退を望む声が高まっていた。

 

シャープは社名が『早川電機工業』だった1964年に国内初の電卓を発売した。カシオ計算機としのぎを削り、日本の液晶や半導体産業の発展に寄与した。カメラ付き携帯電話も他社に先駆けて2000年に発売した。

 

1990年からの20年間、シャープは宣伝文句は『目の付けどころが、シャープでしょ。』だった。液晶パネル事業を見切る時期は誤ったが、鋭くエッジの効いた技術で存在感を高めた時期は確かにあった。時代を切り開く新製品の開発が業績回復の近道になる。

 

◆確かにねえ、『目の付けどころが、シャープでしょ。』はシャープだったがねえ。一本足打法で壊滅したと思われるねえ。電機業界も東芝を始め混乱の時期に突入している気配があるなあ。

 

■■<朝日歌壇>

 ・谷川岳の麓を流れる湯檜曽川

   轟音立てて雪代奔る (前橋 男性)

 

 ・先住の穴より蛇の出てみれば

   大騒ぎされる新興宅地 (神戸 男性)

 

 ・日本のソメイヨシノがキーウにて

   白く咲きおり人集いおり (水戸 女性)

 

 ・甲冑の修理に大童

   今年から五月になった相馬野馬追い (福島 男性)

 

 ・オートバイもうやめなさいと妻の言ふ

   月光仮面老いて従ふ (加東 男性)

 

 ・六十を人生の秋だとすれば

   もう来ないのかこの次の春 (さいたま 男性)

 

 ・濡れ草の印せる桜花びらを

   黒靴に駅の階段昇る (鹿沼 男性)

 

 ・『よろしくね』桜の下で自己紹介

   これから始まるキャンパスライフ (東京 女性)

 

 ・この国が影を失いゆく姿

   買い物難民書店難民 (観音寺 男性)

 

■■<ルヴァン杯3回戦 結果】J1王者神戸、下剋上のJ3富山に散る>JリーグYBCルヴァンカップでは、1stラウンド3回戦が22日に各地で行われた。

 

J1リーグでも首位争いを繰り広げるFC町田ゼルビアと鹿島アントラーズの一戦は、20分にミッチェル・デュークが先制点を奪うと、36分にも再び追加点。後半に高校時代の恩師との対決を迎えた柴崎岳らを投入した鹿島の反撃を抑え、町田が2-0で上回った。

 

J1王者のヴィッセル神戸がJ3のカターレ富山のホームに乗り込んだ一戦は、19分に井出遥也がゴールネットを揺らして神戸が先制。対する富山は70分、右サイドのクロスから相手のオウンゴールを誘発し同点に追いつくと、試合は延長戦でも決着がつかずPK戦へ。神戸は1人目の宮代大聖が失敗したのに対して、富山は全員が成功。5-4でPK戦を制した富山が王者撃破を達成した。

 

前回覇者のアビスパ福岡は柏レイソルと敵地で対戦。開始10分に鵜木郁哉が先制ゴールを奪い柏が先制すると、一方の福岡も47分に井上聖也が決めて試合を振り出しに。試合は同点のまま推移し、延長戦に入るかと思われた後半アディショナルタイム1分に柏が野田裕喜のゴールで勝ち越し。2-1で勝利した柏がプレーオフラウンドへ。前回覇者の福岡は3回戦で姿を消すこととなった。

 

2回戦でJ1のジュビロ磐田を破ったJ2のV・ファーレン長崎は、J1の浦和レッズをホームに迎える。ゴールレスのまま迎えた後半、浦和は66分にオラ・ソルバッケンが途中出場で日本デビュー。さらに70分に長崎のモヨ・マルコム強志が退場したことで数的優位に。しかし、長崎のフアンマ・デルガドが78分にゴールを奪い、このゴールを守り切った長崎が2試合連続のJ1撃破を達成している。

 

1回戦ではJ2の徳島ヴォルティスを、2回戦ではJ1の京都サンガF.C.を連破したJ3のAC長野パルセイロは、J1の北海道コンサドーレと12年ぶりに対戦。当時は下剋上に成功。今回もその再現へ挑んだ一戦は18分に小西陽向がミドルシュートを決めて長野が先制に成功する。このまま逃げ切るかと思われた後半アディショナルタイム6分、札幌は家泉怜依が味方のミドルシュートを押し込んでなんとか同点に。PK戦までもつれこんだ一戦は札幌が5-3で競り勝ち、12年前の再現を許さなかった。

 

J1同士の対決となった東京ヴェルディvsサンフレッチェ広島は乱打戦に。大橋祐紀が序盤に2ゴールを決めて広島が先手を奪うと、東京Vは見木友哉が74分に1点を返す。直後に広島は川村拓夢が、東京Vは再び見木がそれぞれゴールを決めて2-3としたが、広島が逃げ切りに成功し、プレーオフラウンドへの進出を決めている。

 

ルヴァン杯3回戦の結果は以下の通り。

 

◆ルヴァン杯3回戦 結果

 富山 1-1(PK:5-4) 神戸      東京V 2-3 広島

 長崎 1-0 浦和             町田 2-0 鹿島

 横浜FC 1-3 名古屋         柏 2-1 福岡

 琉球 0-1 C大阪           秋田 0-2 新潟

 鳥栖 1-1(PK:4-5) FC東京   長野 1-1(PK:3-5) 札幌

 

◆まあカップ戦は、毎年波乱が起きるものだが、まっさかJ王者がJ3に破れるというのは、まさに大波乱だねえ。次の試合も頑張っておくれ、カターレ富山クン!