今日の画像は、スイスアルプストレッキンのスナップ『ミューレンからラウターブルネンへのトレイル』、北大路欣也主演の『藤沢周平原作・三屋清左衛門残日録』、徳島県の岩島・大辰巳島の『前人未踏の辺境クライミングルートを登る麻莉亜』。そして、旧山陽道の宿場町『矢掛町のたたずまいⅢ』です。山陽地方の川越になってほしいですねえ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■■どちらがうかび、どちらが沈むことになるかはわからなかった。それぞれが、30年前のように信念にしたがって派閥に賭けるほかはないのだと思いながら、清左衛門は気分がさっきよりいくらか重くなるのを感じた。こちらが勝つとは限らず、金井祐之進がうかび上がり、又四郎が沈むことも十分あり得ることだった。

 

町角をひとつ曲がろうとして、清左衛門はふと足をとめた。前方に、何か気になるものを見つけた気がしたのである。そこは店先に材木を立てかけた職人の家が2、3軒見えるばかりで、ほかには売り店というものは見当たらない。ひっそりとした町だった。

 

曲がろうとする道には傾いた日射しがなだれこむように射しこみ、目もあけられないほどの光が溢れていたが、清左衛門が歩いて来た道、その先にのびている道には、ところどころ切り裂いたように道を横切るほそい光が見えるはずのものの、大方は色青ざめて夕暮れのいろの中に沈みかけていた。

 

そのうす青い光の中に、もうとっくに家に帰ったはずの中根道場の少年たちがいた。10人ほどの少年は、それぞれに肩に竹刀と稽古着をかついだまま、町の隅にかたまって立っていた。何か言い争うらしい、険しい声も聞こえて来る。清左衛門を立ちどまらせたのは、そこから押し寄せて来るどことなく不穏な空気だったようである。

 

一度角を曲がりかけた足をもどして、清左衛門は目を凝らした。すると少年たちの真ん中に、さっき道場で土橋謙助に叱られていた野添と戸川の顔が見えた。清左衛門は元来眼のたちはいい方で、手もとの物こそ少し見辛くなって来たものの、遠くはよく見えて以前よりかえって眼がよくなったように思うことがある。

 

今も青ざめた顔で向き合っている2人の少年の顔が、はっきりと見えた。

 

■■<『石』に魅せられて⑩ 『日本の半導体事業の凋落』>東芝はその後、フラッシュメモリーを生んだ半導体メモリー事業を売却した。半導体事業は主に、電力の制御を行うパワー半導体のみが残る。東芝は多くの事業を手放した。かつて憧れた、未来の技術を生み出す会社はもうないのだと男性は思っている。

 

かつて半導体売上高で世界上位10社に名を連ねたNEC、東芝、日立製作所、富士通、松下電器産業、三菱電機。トップ10には今、1社も残っていない。

 

半導体は好不況の波が大きく、経営層からすれば、業績を計算しづらい。00年以降、半導体事業は『お荷物』とされ、切り離された。03年には日立と三菱電機が事業を分社化し、『ルネサステクノロジ』を立ち上げた。その初代社長を務めた日立出身の伊藤達(79)は『スタートはスムーズだった』と振り返る。当初は業績も好調だった。

 

統合による力の合算はしかし、次第に足枷にもなっていった。それぞれの工場は、全国に分散していた。新製品を出そうとしても、切り替えに時間がかかった。『やめるのは顧客に悪い』と、利益が少ない製品も作り続けた。

 

一方の海外企業は、少数の大規模な工場で生産。日本の文化は、弱点となっていた。『もう一歩踏み込んで劇的にやれば良かった』。ルネサスはNECの半導体子会社と合流後、13年に政府系投資ファンドの傘下に。今では黒字化を達成しているが、売上高は世界16位。日本の大手3社を統合した会社としては物足りない。

 

同じく3社の半導体メモリー事業が統合した『エルピーダメモリ』も12年に経営破綻。米マイクロン・テクノロジーに買収された。

 

◆思い出すねえ。このエルピーダ。広島の八本松に工場があった。まさか倒産するとは思わず、株式を購入した。相当の、一生に一度の、大損の結末となった。苦い思い出ではある。

 

■■<『草→牛→人 好循環に挑戦』サゴタニ農牧>広島市中心部から20キロ離れた里山に、マツダスタジアム7個分ほどの広さの牧場がある。屋号は『サゴタニ農牧』。久保宏輔(40)はその3代目だ。

 

現在、牛舎に120頭の乳牛がいる。その数を減らしながら、2040年までにすべて放牧に切り替えようとしている。牧草地1ヘクタール当たり2,3頭が限界とされ、実現のハードルは高い。

 

それでも挑戦するのは、生命の循環を可視化したい、との思いがあるからだ。放牧用の牧場では、土から草が生え、その草が牛に食べられて、牛の一部になる。牛の糞は堆肥となり土を豊かにし、再び草の栄養分になる。

 

人もその循環と無縁ではない。牛から絞られた乳を飲めば、それは自分の体の一部となる。牧場の土が、ひいては自分の体を作る。それを理屈ではなく、心から感じられる場を作りたいという。『一杯の牛乳を飲んで、「今日も生きている」と思えたら』。

 

幼い頃から愛犬と戯れ、牛の出産を手伝った。当然のように『将来は酪農家になる』と決めていた。だが、小学生の頃に動物アレルギーに。牛に近づくと身体に発疹が出て、鼻水が止まらず、息が苦しくなった。跡を継ぐ考えを捨て、大学を卒業後は東京でサラリーマン生活を送った。

 

転機は16年。飼料価格の高騰などから家業の経営が苦しいと知った。『牛と人が共に作る景色を、失いたくないと思った』。退職して牧場経営に携わることにした。

 

放牧は、すでに始まっている。今は7頭。『放牧すると、牛乳の味がその土地の味になる』という。それは、牛がその土地で育った牧草をじかに体内に取り入れ、草が血液になり、体を循環して乳房に入り、乳になっていくから。30年には、放牧した牛からも乳を搾る計画だ。

 

『放牧された牛は、目の輝きが違う。人によっても、人生を豊かにするには、自然との繋がりを絶たないkとおがきっと必要なんです』と語る。

 

◆私宅もこの『サゴタニ』の牛乳を飲んでいる。森永や明治に比べて多少高いが、うまさは一流で、コクがあるミルクになっている。これからも続けて食す予定だ。

 

■■<『これは褒めるしかないw』J1サンフレ新戦力新井の“ハットトリック完成> J1サンフレッチェ広島の新戦力新井直人が、ハットトリックを達成した。その締めくくりとなるFKに、ファンが驚嘆の声を上げた。

 

サンフレは2年連続でJ1を3位という好成績で終えた。今シーズンの広島は、タイトル奪還へ相当に気合いが入っていたはずだ。

 

良いスタートを切ったと言っていい。開幕戦は、待望だった広島市中心部に完成したサッカー専用スタジアム、エディオンピースウイング広島に浦和レッズを迎えて2-0と快勝。連勝はならなかったが、勝点を積み上げていった。

 

第11節まで無敗が続いていたが、第8節以降は4試合連続で引き分けていた。勝利から遠ざかっていると、初黒星を喫した第12節から連敗。しかも、ホームでの手痛い2連敗だった。

 

7試合ぶりの勝利を目指した5月19日の第15節、素晴らしい結果が手に入った。京都サンガF.C.相手に、5-0という大勝を飾ったのだ。ヒーローは、今季加わった新戦力だ。新井直人がハットトリックと、大爆発したのだ。

 

キャリアハイが昨季のリーグ戦3得点だった新井は、前節までに2得点。つまり、早くも自己最多得点を超えたことになる。その3得点とも、味わい深いものだった。すべて、まったく違うパターンで決めたものだったのだ。

 

1点目は、利き足ではない左足で決めた。左サイド深い位置からのグラウンダーのクロスに走り込み、丁寧に左足で合わせてゴール左隅を射抜いた。

 

 

2点目は頭で決めた。左CKの場面でニアサイドに陣取り、マークについた相手選手を力強く抑え込み、力強く頭で押し込んだのだ。

 

そして、後半34分の3点目だ。自身プロキャリアで初のハットトリックを、メンタルの強さも感じさせながらしっかりものにしたのだ。相手ゴール正面やや右からのFKというチャンスで、新井はゴールを見据えた。左足を用いてプレースキックを蹴る志知孝明もいたが、状況を見極める姿からは決意がにじんでいた。

 

志知の動きをおとりにつかうでもなく、新井は堂々と助走に入る。目の前には相手7選手が壁をつくっていたが、弾道はその右端ぎりぎりを通り過ぎた。コントロールのみならず、しっかりとパワーも乗った右足でのFKは、相手GKの手を弾いてゴールネットを揺らした。

 

◆『スーパー! ゴラッソ!』 この一撃がJリーグのSNSなどで公開されると、称賛の声が続いた。

『新井やばぁ』

『やばい!!!』

『スーパー! ゴラッソ!』

「いやうますぎだろ」

『これは褒めるしかないw』

『左足 頭 右足 “俺達の新井直人”』

 

新井の大活躍もあり、広島は7試合ぶりに勝利を取り戻した。J2からキャリアをスタートさせた27歳とともに、逆襲をスタートさせる。

 

◆このハットトリックには大変驚かされた。どの得点もフロックなものではなく、高度なテクニックのなせる技なのだ。1点目のミドルは、左斜め前からのグランクロスをミドルの位置から蹴り込んだもの。しかもこのクロス、小さくバウンドしていて、タイミングを合わせのが非常にやっかいに見られた。これをストライクシュートした荒井の技に感嘆。

 

2点目も相当な技だ。左コーナーキックから、前線に飛び出し140度くらいのスライスヘッドを決めた。この角度でヘッディングするのはとても難しい。これも新井の技のなすものだ。

 

そして3点目はもうこれ以上ないという、FK弾。クリーンにゴール右上に決めた。

 

少し京都のために弁護すると、ややGKの初動の反応に遅れがあったような気がする。特に3点目のFK弾はそう見れた。が、選手の壁があり、キックの瞬間に弾道を見極めるのは難しかったのだろうと思うねえ。それにしても、サンフレ、満田、塩谷、加藤、東のスタメンメンバー4人をベンチスタートとしたにもかかわらず、相手が京都とはいえ素晴らしい成果ではあったねえ。もう、優勝戦線から脱落した気配のサンフレだが、残り試合をファンが満足する戦いにしてほしいなあ