今日の画像は、スイスアルプストレッキンのスナップ『ラウターブルネンの谷の上にある標高1,600mのミューレン村』、北大路欣也主演の『藤沢周平原作・三屋清左衛門残日録』、奥穂のジャンダルムより厳しく、新潟魚沼の難ルート『麻莉亜の八海山トレッキング』。そして、春うらら『千田公園の風景』です。遅ればせながら、桜も開花。子供をつれた人達の憩の時間が流れます。

 







































■■そしてその日、清左衛門は藩屋敷を出る時に、ふと思いついて庭師の老人を呼ぶと、玄関わきの梅から手ごろな枝を2、3本手折らせ、松江へのみやげにしたのである。

清水屋の奥に通ると、松江はうす暗い障子の内側にひっそりと坐っていた。もう床はたたんであった。まだ白布はとれていないがもともと松江の傷は皮膚を破った程度で血脈をはずれ、寝ていなければならない病人でもなかったのである。浅くないのは心に受けた傷の方だった。

『ぐあいはどうじゃ』
清左衛門が声をかけると、松江は身体を回して一礼したが、眼は依然として遠くを見つめているようで、はたして清左衛門を認めたかどうかも疑わしかった。辞儀を終わると松江はまた身体の向きをもとにもどし、障子の一点に眼を向けた。自分が一番好む場所にもどって行ったように見えた。

その松江が首を回して清左衛門を見たのは、それから間もなくである。はじめて、清左衛門は松江の顔に表情らしきもの、物問いたげないろが動いたのを見た。小鳥が餌をさがすように、松江は眼を動かした。

『これかな』
清左衛門は手をうしろに回して、油紙につつんだ梅の枝をつかむと、松江にさし出した。
『お屋敷の梅だ。まだ三分咲きほどだろう』
『・・・・』
『後で活けてくれるように、この家の者に頼んでおこう』

松江は答えなかったが、膝の上でゆっくりと受け取った花包みを解いた。見ている方がじれるほど、まだるっこしい手つきだったが、とにかく包みを解いた。松江はまじまじとひらきかけている花を眺めた。一度顔を上げて清左衛門を見、次に顔を寄せて梅の香を吸った。


■■<米を目指す移民 死のジャングル④ 『まず南米に入国』>バホチキートから40キロ離れたサンビセンテでは様相が異なる。アジアや中東、アフリカからの移民が多いのだ。ビザを求めないエクアドルやブラジルに航路で入国して、米国を目指すようだ。ダリエン地峡を通過する人の出身地は70カ国以上にものぼるという。

バホチキートに着く移民が通るコースは、危険な地峡内を最短でも4日間歩く必要がある。だが、サンビセンテに着くコースは最短で2日だ。関係者によると、密航業者『コヨーテ』に支払う金額は、バホチキートのコースが1人当たり300ドル(4万4千円)ほど。だが、サンビセンテのコースは最高で3千ドル(44万円)求められるという。アフガニスタンの首都カブール出身の男性(38)は2,500ドルを払った。

『決して安くはないが、ダリエンは危険だと聞いていたので少しでも安全に渡りたかった』。自身はジャーナリスト、妻は政府職員としてアフガニスタンで働いていた。生活が一変したのは2021年8月、イスラム主義勢力タリバンが権力を掌握してから。

妻は職を追われ、男性も英語が話せたことから『欧米の手先』とみなされた。身の危険を感じてアフガニスタンを出国したのは同年9月末。パキスタン経由でブラジル北東部のパラー州に辿り着いた。同じ境遇の人が集うコミュニティーがあり、居心地は良かった。ブラジル人らは仕事の世話もしてくれたが、工場勤務の月給は1,300レアル(39,000円)だった。

『ブラジルは私達を寛大にも受け入れてくれた。でも1,300レアルでは、子供の教育はおろか食事も満足にできない。リスクを取ってでも、米国に向かわなければならなかった』。

アフリカ・カメルーン出身の男性(36)は政治的な迫害に遭い、6年間米国で暮らした経験を持つ。故郷では、1982年からビヤ大統領の長期政権が続く。男性は反政府活動で数回投獄され、2014年に米国に亡命。だがトランプ全政権時代に強制送還されたという。

辛い経験があっても再び米国を目指す男性はこう話す。『良い生活を夢見る権利は自分にだってあるはずだ。それは米国でしか叶えることができない』と。

バホチキートやサンビセンテでの取材はパナマ政府の許可を得て行った。取材では政府当局者の立ち会いはなく、記事の検閲は受けていない。(軽部理人筆)



■■<今永昇太、メジャー初登板で『123年間で1人しかいなかった記録を樹立』 米記者伝える>米大リーグ、カブスの今永昇太投手が1日(日本時間2日)にシカゴで行われたロッキーズ戦で大リーグデビューし、先発して6回を2安打無失点、無四球で9奪三振という快投を披露した。1901年以降、大リーグデビュー戦で無四球、無失点で9奪三振を記録した投手は2人しかいないという衝撃の記録も発掘され、話題となっている。

MLB公式のサラ・ラングス記者は自身のXで『少なくとも1901年以降、MLBデビュー戦で無四球、無失点での最多奪三振:2024年ショウタ・イマナガ:9、2018年ニック・キンガム:9』という記録を紹介。また米イリノイ州の地元放送局『マーキー・スポーツ・ネットワーク』のクリストファー・カムカ記者も自身のXで『MLBデビュー戦で9奪三振、無四球を記録した1901年以降のカブス選手:今日のショウタ・イマナガ』と紹介している。

今永は2回無死からブライアントを三塁手のエラーで出塁させたものの、快調にアウトを積み重ねた。四死球もなく、2回以外は3人で終わらせていった。6回も先頭のモンテーロを中飛、ドイルを右飛に仕留め2死。ここでブラックモンに中前へ初安打、ロジャースにも中前打を許し走者一、二塁のピンチを背負ったものの、ジョーンズを三振に仕留めチェンジ。この回限りで降板した。



ラングス記者はさらに『ショウタ・イマナガの5回2/3までノーヒットは、MLBデビュー戦でのカブス投手としては、少なくともライブボール時代で(1920年以降)最長タイ』と紹介した。1996年5月16日のアマウリ・テレマコ投手以来だという。

◆まさに、『カブスに今永あり』だねえ。モチ、『カブスに鈴木誠也あり』でもあるがねえ。ご立派。


■■<『鉄と時代のダイナミズム』足かけ60年・下>過去60年の鉄鋼業界の変化の幅は大きかったが、私個人の人生の振幅もそれに負けないほど大きい。

かつて徳川家康が『関東の華』と称えた前橋は利根川と赤城山に囲まれた美しい街だ。そこで18歳まで過ごし、生まれて初めて海を見たのが中学2年の修学旅行というローカル人間。江ノ島から眺めた太平洋の雄大さに心を打たれた。家庭は貧しく、東大進学後は家庭教師のアルバイトと奨学金で自力で生計を立てた。東大駒場キャンパスの目の前にある商店街に通い、1杯25円の通称『ケーザイラーメン』で糊口をしのいだ日々が思い出される。

ただ、当時は『貧乏』が時代の標準で、『自分がかわいそう』とか『みじめ』とか思ったことは一度もなかった。東大生の中には裕福な家の子女もいることはいたが、2~3割は自分と同類の貧乏学生だったように思う。

そんな私が会社に入り、米ハーバードビジネススクールに留学させてもらい、経営者を経て最後は経済団体のトップを務めたのも、時代のダイナミズムの反映だと思う。貧しさから這い上がったかつての日本は社会的流動性に富んでいた。出身地や階層に関係なく、希望を失わずにコツコツと頑張れば、何とか展望が開けたのだ。

私の奇跡が読者のみなさんにどれほど価値があるものか。あまり自身はないが、その時との時の課題にがむしゃらに取り組む人生も面白いと思う。(三村明夫元日本製鉄会長・社長筆)



◆貧しさに負けて犯罪に走る若者が多い現在、その昔、このような苦学生が功成りて企業のトップになり、また経済団体のトップに上り詰めた。まさに、明治の時代を彷彿させる立身出世のl物語ではなるなあ。素晴らしい・

 

■■<広島の新エース・大橋祐紀が恩返し弾2発で2戦連発6ゴール>明治安田J1第7節、サンフレッチェ広島vs湘南ベルマーレが7日にエディオンピースウイング広島で行われ、ホームの広島が2-0で勝利を収めた。

 

前節FC町田ゼルビア戦の勝利で3試合ぶりの白星を手にした、3勝3分けで2位サンフレ。町田戦で負傷交代した荒木隼人が先発を外れ、スクランブル時と同様、中野就斗が[3-4-2-1]の3バックの中央に入り、右のウイングバックでは新井直人が加入後初先発を飾る。

 

片や2連敗で4試合未勝利、昨年に続いてスタートに苦しむ18位の湘南も、逆転負けの東京ヴェルディ戦からスタメンを1人変更。奥野耕平に代わって大岩一貴が起用され、[3-5-2]の3バックの左に。田中聡がアンカーへ戻った。プレス強度は互いに持ち味。球際のバトルや空中戦が熱を帯び、セットアップ時は互いに隙のないため、攻守切り替わり後のワンプレーが前身の有無に大きくかかわった。

 

サンフレに流れが傾き始めた25分には、満田誠がボックス手前からが足を振るが、湘南もすぐさまデザインされた左CKから池田昌生のボレーと、簡単には主導権を握らせない。

 

両チーム1人ずつを交代した後半は、早々に意外な形で試合が動く。広島は48分、加藤陸次樹のスルーパスにダイアゴナルランで反応した大橋が抜け出すと、かわされた湘南GKソン・ボムグンは体を掴んで倒してしまい、PK献上のレッドカードと三重罰に。湘南は急遽、岡本拓也を下げてGK馬渡洋樹を送り出すこととなった。

 

このPKを大橋がど真ん中に力強く蹴り込み、52分にホームチームが先制。恩返し弾の新エースは、2戦連発今季5ゴール目とした。

 

優勢の広島だったが、川村拓夢が左足を気にして74分に途中交代のアクシデント。86分の満田のヘディングもGK馬渡のスーパーセーブに阻まれ、追加点を奪えない。前線の個に打開を委ねる湘南は、87分にルキアンが単独突破からシュート。直後にはカットインから途中出場の18歳FW石井久継が右足を振るも、枠を捉えられない。

 

広島は後半アディショナルタイム、加藤のフリックスルーパスから抜け出した大橋がネットを揺らすと、一度はフラッグアップされたが、VARチェックの結果、ゴールが認められ、ようやく大きな追加点を奪取。GK大迫敬介をはじめとした守備陣は固く、無失点でタイムアップ。2連勝を飾り、昨季から続く無敗記録を『13』に伸ばした。

 

◆スコアの上ではサンフレが快勝だが、内容的にみるとそれほどでもない。代役選手が若く、ここ一発の壁が尽き破れなかった雰囲気ではあったなあ。それでも白星は白星だがなあ。大橋は佐藤寿人の再来のような感じがするねえ。今季20ゴールを挙げて、サンフレの優勝に貢献する、の、か、な。