今日の画像は、スイスアルプストレッキンのスナップ『ラウターブルネンのキャンプ村』、北大路欣也主演の『藤沢周平原作・三屋清左衛門残日録』、奥穂のジャンダルムより厳しく、新潟魚沼の難ルート『麻莉亜の八海山トレッキング』。そして、大柄な魅力の『タチアオイⅡ』です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■■『じつは隠居してから、例のおやじの一件を調べているのだが、ちょっと上の方にうかがいたいことが出て来た。いや、面倒は何もない。ご家老衆のどなたかに一言聞けば済むことだ。お主に迷惑はかけぬ』

『そういうことなら間島さまが一番くわしいだろうさ。よかろう、紹介状を書こう』

 

清左衛門は鷹揚に言った。間島家老なら、清左衛門の紹介状を持参する人間を、粗末には扱わないはずだった。それに近頃またキナ臭い匂いをはなちはじめた派閥争いにも抵触せぬところがいい、と清左衛門は思った。

 

間島弥兵衛は、内藤寅之助のようにつぎは筆頭家老にのぼる器などと言われることもないかわりに、遠藤治郎助が筆頭家老の時も、遠藤派がしろぞいて朝田弓之助が権力をにぎった後も、ずっと家老職にとどまっている不思議な老人だった。

 

実務にくわしく、間島家老がいなかったら藩政は闇だなどという声もあり、そういう実務派的な肌合いが、間島を派閥を超えた存在にしているのだと思われた。

 

『さあ、話はこのぐらいにして蟹を喰おうじゃないか』

清左衛門は言いながら、銚子をつかんで平八を見た。そして服をみはった。大塚平八は汗をかいていた。それもただの汗ではない。襟元から、やや薄くなった頭から、ぼうぼうと湯気が立っている。

 

もちろん平八は懐紙を出して、顔から首のあたりをしきりに拭いているのだが、そんなことでは追いつかない、おびただしい汗だった。

 

『どうした平八、暑いのか』

『うむ、酒をいただきすぎたようだ』

茹でた蟹のような顔いろで、平八はそう言ったが、清左衛門には平八がそんなに湯気が立つほどに酒を飲んだとは思えなかった。

 

■■<惑う観光大国ニッポン③『「混み過ぎ」に訪日客失望』>『落ち着いた雰囲気を楽しみにしてきたのだが』。山梨県富士河口湖町の河口湖近くでは、想像を超える混雑と喧騒に失望を隠さない外国人観光客の姿が目立つ。富士山をお見渡せる展望台へ上るローブウエーは長い時で2時間待ちだ。

 

駅前のほうとう屋には午前中から長い行列ができる。『団体の方も1時間以上お待ちいただきます』との係員の説明に、『諦めるしかない』と残念そうに引き返してしまう外国人も。『かつては閑散としていた』という冬季でも町の至る所に観光客が溢れるようになった。特定の観光地に人が集中する現状に、外国人観光客の日本に対する満足度が下がっている。

 

東京観光財団などが2023年12月に行った調査では、浅草など有名観光地を抱える台東区で『混雑を感じた』と答えた外国人観光客は過半数の58.9%。『人が多すぎて本来の楽しみ方が出来ない』『歩きづらい』との回答も複数あった。

 

混雑が際立つ人気観光地を避け、外国人観光客は日本本来の魅力を残している場所を探している――。海外ではまだ知名度が低い地方の観光地はこう読んで、チャンスを捉え始めた。

 

『大変なことになったぞ』。山口県庁で騒ぎが広がった。米紙NYタイムズが世界の観光地を紹介する企画の24年版で、山口市を上位で選定。山口県の村岡知事も『世界が気付き始めた』と意気込む。盛岡市も同様のきっかけで人気に火がついた経緯がある。

 

山口県は『インバウンド推進室』を設置し、広報と受け入れ体制を整備してきた。県内の観光施設を支援するコーディネーターの任命や、海外プロモーションの選任職員の配置をしているが、この機会を捉えて、さらに攻勢を強める。

 

従来アジアに偏っていた海外のプロモーションは欧米豪にも拡大する。インバウンドの利用を見据えて山口市をはじめとした県内の主要観光地を巡る観光周遊バスの運行を年内にスタートすることも決定した。

 

観光問題に詳しい龍谷大学の阿部教授は地方の観光地にインバウンドを呼び込むため、『コンセプトを持ったプロモーションや広域連携といった工夫を凝らす必要がある』と語る。

 

山口駅で電車から降りた観光客の案内をしていた女性は『不安と期待の両方』と身構える。貴重なチャンスを生かせるか。地方の知恵と入念な準備がカギを握る。(日経)

 

◆本当にNYタイムズの『山口推奨』のニュースには驚いた。それほどもちあげるほどの観光名所ではあいからだ。が、今や、その観光名所でないこころが、次の観光名所なるという考えなのかもしれない。とにもかくにも、山口県庁はでんぐりがえりの大騒動だね。

 

■■<資生堂が1500人の希望退職者を募集…『ツバキ』『ウーノ』を1600億円で売却しても・・・>資生堂が、日本事業を統括する資生堂ジャパンにおいて、1500名もの希望退職者の募集を行うと発表した。2022年末時点の日本事業の全従業員は11185人。13%もの人員削減を断行することになる。資生堂は人材配置適正化や生産性向上を目的としての、コスト削減目標金額を、2024年で30億円、2025年においては70億円に設定している。さらなる人員削減も視野に入っているという。世界に誇る日本の老舗化粧品メーカーに何が起こっているのか?

 

◆『シャンプーなどパーソナルケア事業売却も効果が薄く』 2023年12月期は前期比8.8%の減収だった。営業利益に至っては4割も減少している。業績好調だった2019年12月期の営業利益は1138億円。現在はその1/4以下だ。資生堂が苦戦している様子は、本業で稼ぐ力を見る営業利益率の推移によく出ている。2019年12月期の営業利益率は10.1%だった。その後、コロナ禍で1%台まで低迷するも、2021年12月期に再び10.0%に急回復する。このとき資生堂は、大胆な経営合理化を進めていた。

 

その最たる例が『ツバキ(TSUBAKI)』、『ウーノ(uno)』などのパーソナルケア事業の売却だ。2021年にヨーロッパの投資ファンド、CVCキャピタル・パートナーズに1600億円で事業譲渡した。

 

その他にも、化粧品ブランド『ベアミネラル(bareMinerals)』、『バクサム(BUXOM)』、『ローラ メルシエ(Laura Mercier)』をアメリカの投資ファンドに770億円で売却した。『ドルチェ&ガッバーナ(Dolce&Gabbana)』のグローバルライセンス契約も解消している。

 

その甲斐あってコスト削減効果が生まれた上、アメリカとヨーロッパでの増収が寄与したことも相まって営業利益率は高まった。しかし、すぐに稼ぐ力が削がれてしまう。主戦場である日本と中国がなかなか回復しないのだ。

 

◆『中国人観光客の爆買い消失が痛手』 資生堂は日本で1/4、中国で1/4を稼ぐという収益構造をしている。日本の売上高は、2019年12月期が4515億円だった。2023年12月期は2599億円である。『ツバキ(TSUBAKI)』などのパーソナルケア事業の2019年12月期の売上高は、1055億円だ。事業譲渡の影響を加味しても、1000億円近く戻っていないことになる。

 

国内の主要な販売チャネルの一つは百貨店の化粧品売場だ。資生堂の日本の売上高が戻らない理由は、全国百貨店化粧品売上の推移を見るとわかりやすい。百貨店化粧品売上は2018年に550億円を超え、2019年は600億円に近づいたものの、コロナ禍で350億円まで急減した。

 

結局のところ、メーカーにとってうれしい得意客の大半は、百貨店で買い物をするアジア圏の海外観光客だったのである。しかも、中核にいたのは中国人観光客だ。

 

2019年12月の中国人観光客は71万人で、全海外観光客の3割を占めていた。それが2023年12月は31万人で全体の1割にまで縮小している。しかも、今の中国人観光客は、爆買いに象徴された強い消費意欲が消滅している。景気の冷え込みが影響しているのだ。

 

◆『百貨店による手厚いサービスは人気が下火に』 いまや日本人の8割はドラッグストアで化粧品を購入している。NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションは、全国18~69歳を対象として化粧品についての調査を行っている(「化粧品購入行動に関する調査結果」)。それによると、2022年にドラッグストアで化粧品を購入する人の割合は83.9%。3年前もこの比率は変わっていない。

 

一方、百貨店は4.5ポイント低下して20.7%となった。コロナ禍以降、日本人もデパートの化粧品売場からは遠ざかっているのだ。Amazonや楽天などのECモールサイトは好調だ。9.1ポイント上昇して33.0%となっている。

 

百貨店の化粧品販売は、専門のアドバイザーが提案するコンサルティング型の販売方式だ。それが定価でも売れた理由であり、資生堂は販売員の質の向上に力を入れてきた。しかし、現在は棚に陳列するだけのドラッグストアやECモールが主要な販売チャネルとなっている。こうなると、コストパフォーマンスが重視され、従来の提案型のビジネスモデルが通用しない。

 

資生堂の人員削減は、旧来型の化粧品販売の方法が転換点を迎えたことを物語っている。

 

◆『中国の国産メーカーが存在感を発揮する時代に』中国もさえない。資生堂の2019年12月期、中国の売上高は2162億円。2023年12月期は2479億円だ。コロナ前比で14.7%増と勢いがないのだ。

 

ジェトロによると、中国の化粧品市場は2023年が5169億元。2019年比で21.5%増加している。資生堂は市場拡大ペースに乗り切れていない。化粧品の最大手といえばフランスのロレアルだが、中国では肌質が似た日本の化粧品の支持が高かった。しかも、資生堂のような日本の大手メーカーは高品質で安全性が高く、清潔なイメージが醸成されていた。

 

2019年1月の資生堂の中国の店頭売上が前年同月比20%超で成長するなど、かつては勢いがあった。資生堂はいまの中国のビジネスが不調な要因として、ALPS処理水の海洋放出後の日本製品買い控えを挙げている。この説明だと短期的な影響のように見えるが、様相はもっと複雑で深刻だ。法整備が進んで、中国国内のメーカーのシェアが拡大しているのである。

 

ジェトロによると、中国の化粧品関連の新規企業数は2018年が140万社、2020年は281万社、2021年には440万社となった。2023年1-~11月の中国化粧品輸入額は、日本が前年同期間比17.2%の減少。フランスは4.2%、イギリスは35.5%、アメリカは21.9%それぞれ減少している。

 

中国政府は2021年1月に『化粧品監督管理条例』を施行。化粧品成分と製品、製造、広告、サプライチェーンなどに関する明確な要件を規定した。規定を設けて国産ブランドの標準化を図ったのだ。

 

◆資生堂ねえ。イメージは、お金持ち、健全企業のものだったがねえ。こうも中国に揺さぶられらのかねえ。かわいそう。そういえば三菱自動車も中国で失敗し、撤退したねえ。