今日の画像は、スイスアルプストレッキンのスナップ『ラウターブルネンの谷、ミューレン滝の水遊び』、北大路欣也主演の『藤沢周平原作・三屋清左衛門残日録』、奥穂のジャンダルムより厳しく、新潟魚沼の難ルート『麻莉亜の八海山トレッキング』。そして、紫色が鮮やかな『寒あやめ』と、パッションカラーの『枝垂れ梅』です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■■『今貴公をさがしながらこっちへ来たところだ』

と平八が言ったので、清左衛門はおどろいた。

『わしをさがして?』

『さよう。屋敷に行ったら、嫁女が今日はこちらだと申す。それで回って来た』

『何か急用か』

『いや、急用というわけでもないが・・・』

平八は言葉をにごした。

 

『ちと、頼みがある』

『この隠居に、何の頼みがあるか知らんが・・・』

清左衛門は、表通りの屋根のはずれに沈みかけている日に眼をやった。日が落ちるとにわかに空気が冷えてくる。そんな季節だった。蟹のみそ汁で、熱く燗した酒を飲んだらうまかろう。

 

『近年みつけた酒のうまい店がある。つき合え』

と清左衛門は平八を誘った。

 

花房町の城下の南にあって、道場がある紙漉町とはかなりはなれている。清左衛門と大塚平八が小料理屋『涌井』ののれんをくぐった頃には、日は城下の西の丘の陰に沈みかけ、町には青白い靄のような夕色がただよいはじめていた。

 

2人は『涌井』の奥座敷に落ち着いた。

『蟹が入っているかな』

清左衛門が聞くと、顔馴染みのおかみが、まだ足を動かしている蟹がありますと言った。『涌井』は海から上がったばかりの魚を、大急ぎではこんで来て喰わせるので評判がよかった。

 

『茹でますか、それとも味噌汁になさいますか』

膚がきれいで、眼に少し険のあるおかみが言った。おかみのみさは30前後で、険がある眼と頬骨が出ている顔のため美人とは言えないが、いわゆる男好きのする女だった。

 

■■<75歳を待たずに死亡、なぜ増えているのか 『65歳以前の努力』が必要>私は医師という仕事柄、有名人の訃報にはくまなく目を通します。自分が後期高齢者になったこともあります。そこで気になっているのは、昨年来、75歳(後期高齢者)を待たずに亡くなられる有名人が多いことです。平均寿命は、男性81.05歳、女性87.09歳(2022年)。人生100年時代と言われるいま、75歳前というのはいかにも早すぎます。

 

『先生、最近、早死にする有名人が多いと思います。なにか理由でも?』と、本当によく聞かれます。

 

『Dr.スランプ』『ドラゴンボール』で知られる漫画家、鳥山明さんが1日、68歳で亡くなったことが報じられ悲しみに包まれました。死因は急性硬膜下血腫でした。同じ日に国民的アニメ『ちびまる子ちゃん』でまる子を演じる声優のTARAKOさんが63歳で急死したことも伝えられアニメ界の相次ぐ訃報に驚きました。

 

70代の死も昨年来、多いように感じます。八代亜紀さん(歌手、73歳=膠原病・急速進行性間質性肺炎)、坂本龍一さん(ミュージシャン、71歳=直腸がん・肺転移)、谷村新司さん(ミュージシャン、74歳=急性腸炎)、伊集院静さん(作家、73歳=肝内胆管がん)、門田博光さん(元プロ野球選手、74歳=糖尿病・脳梗塞)、大橋純子さん(歌手、73歳=食道がん)、もんたよしのりさん(ミュージシャン、72歳=大動脈解離)らが亡くなり、みな、75歳前でした。

 

鳥山さん、TARAKOさんのように70代を待たず世を去った方もいます。北別府学さん(元プロ野球選手、65歳=成人T細胞白血病)、寺尾常史さん(元大相撲・寺尾、60歳=うっ血性心不全)、長岡末広さん(同・朝潮、67歳=小腸がん)、KANさん(歌手、61歳=メッケル憩室がん)…。

 

このように列記すると、有名人ほど早死にするように思えます。しかし、それは印象にすぎないでしょう。有名人は訃報が大きく扱われますが、突出して多いというデータはありません。

 

一方、印象が生まれる余地がない日本人全体の統計から、75歳以前の死亡者数を見ると、確実に増えています。なぜなら、現在75歳前の世代というのは、人口が最も多い『団塊世代』(1947~49年生まれ)とそれに続く世代だからです。厚労省の『簡易生命表』によれば、男女共80歳を越えている平均寿命を待たずに多くの人が亡くなっています。そして、平均寿命より重要なのは健康寿命(男性72.68歳、女性が75.38歳=19年調べ)です。健康寿命は平均寿命よりはるかに早く来るのです。

 

厳しい現実を述べると、平均寿命まで生きる人は約半数で、健康寿命を境に多くの人が亡くなります。もっと端的に言うと、男性は約4分の1が75歳までに亡くなり平均寿命の81.05歳には半数が亡くなります。女性も85歳までに約3分の1が亡くなり、平均寿命の67.09歳までに半数が亡くなります。

 

このように見てくると、後期高齢者になる75歳前後にハードルがあることがわかります。

 

後期高齢者になった私の実感から言うと、『75歳』を無事通過するためには、その10年前、いわゆる高齢者と呼ばれるようになる65歳、あるいはそれ以前からの努力が必要です。食生活、運動生活などを若い頃と大きく変える必要があります。

 

人は年を取って初めて『残りの人生、精いっぱい生きよう』という思います。しかし、年を取ってからでは遅いのです。多くの有名人と接してきた経験から言わせていただくと、才能ある有名人ほど生き方を変えようとしません。若いときと同じように生きようとするのです。残念です。

 

■富家孝(ふけ・たかし) 医師、ジャーナリスト。1972年東京慈恵会医科大学卒業。病院経営、日本女子体育大学助教授、新日本プロレスリングドクターなど経験。著書計68冊。最新刊『それでもあなたは長生きしたいですか? 終末期医療の真実を語ろう』(ベストブック)が話題に。

 

◆私の知る範囲で、70歳前後で亡くなる人には、大酒豪が多いねえ。やっぱ、酒の毒に体が侵されるのだろうねえ。

 

■■<『朝日俳壇』>

・卒寿なほ踏み出す一歩草燃ゆる (敦賀市 男性)

・風葬の如く溶けゆく雪だるま (苫小牧市 男性)

・肩車されはじめての梅見かな (浜松市 男性)

・薄氷や風の記憶を閉じ込める (柏市 女性)

・もう歳のわからぬ父へ年の豆 (春日部市 男性)

 

・考へてゐるかのように雪の降る (八王子市 男性)

・火口湖の凍湖を渉朝日中 (小城市 男性)

・大和路の光あつめて梅ひらく (奈良市 男性)

・薄氷のその下にある明日かな (大阪市 女性)

・捨てられぬ父の軍手と防寒帽 (川口市 男性)