今日の画像は、スイスアルプストレッキンのスナップ『ラウターブルネンの谷、ミューレンの村から流れ落ちる滝430m②』、北大路欣也主演の『藤沢周平原作・三屋清左衛門残日録』、奥穂のジャンダルムより厳しく、新潟魚沼の難ルート『麻莉亜の八海山トレッキング』。そして美しき『スカシユリとアジサイ』です。この組み合わせがとても面白かったです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■■紙漉町は裏町になるので、道が細い。三屋清左衛門は道場から出る道を、いくらかいそぎ足に歩いていた。時刻は七ツ(午後4時)過ぎ。べつにいそぐ用があるわけではなく、無外流の稽古を終わって家にもどるだけのことだが、稽古の余韻が身体に残って、まだ全身が熱っぽかった。

 

――わしも・・・・。

まだ捨てたものではないと、清左衛門は思っていた。例によって少年たちに基本の型をしつけた後で、最後に自分の稽古にもどったのだが、今日の相手は土橋謙助という男だった。

 

土橋は御勘定目付の土橋家の三男で、いわゆる冷飯喰の身分だが、無外流の腕は優秀で、道場では五指に数えられている好青年だった。清左衛門は、今日は自分でもびっくりするほどに身体が動き、2度ばかり土橋を羽目板まで追いつめるほどの、はげしい竹刀を使ったのである。

 

『いや、お若い。身体の動きも、技もです』

『年寄りを喜ばせようと思って、そんなことを言っておるな』

『いえ、本音です。もう少しでこっちが負けるところでした。むかし取った杵柄ですかな、三屋さま』

 

多少は社交辞令が入っているに違いないと思っていても、土橋のような高弟にほめられて気分がわるいわけではない。清左衛門は土橋の言葉を思い出し、内心笑いを噛み殺しながら歩いているのである。足がはずんで当然というものだった。

 

そろそろ歩いている道の出口に、表通りを往来する人の姿が見て来ようというところまで来た時、清左衛門はその道を武士が1人、こちらに歩いてくるのに気づいた。

 

真西にむかっているその道には、折りからまぶしいほどの日の光がさしこみ、はやくも赤味を帯びた光がつくる濃い影のために、すぐには武士の顔は見わけにくかった。うつむいて、思案ありげに肩までまるめて歩いて来るその男が、大塚平八だとわかったのは、2人の間が4、5間まで近づいた時である。

 

『平八、どこへ行く』

清左衛門は声をかけた。大塚平八は清左衛門の旧友である。ここ10年あまりは清左衛門が江戸詰が多く、また身分にもへだたりが出来て顔を合わせることも少なくなっていたが、2人は少年の頃はともに清左衛門がたた今出て来たばかりの無外流の道場に通い、その後も何かと行き来のあった仲である。

 

『おお、三屋か』

大塚平八は立ちどまった。そして満面に笑いをうかべて清左衛門を見た。するとその顔にたぬ平と呼ばれた少年の頃の面影が出た。平八は色が黒くて顔がまるく、少し口がとがっているあたりが狸に似ている。そしてそのままの顔で、髪が白くなっていた。

 

■■<自民・世耕弘成議員、参院政倫審で『記憶にない』連発、過激ダンスショーも直撃>自民党の世耕弘成前参院幹事長の求心力が急降下している。14日の参院政治倫理審査会(政倫審)では、安倍派(清和政策研究会)の参院側のトップとして同派のパーティー収入不記載事件の経緯を尋ねられたが『記憶にない』を連発し、身内からも不審の目を向けられた。露出の多い衣装の女性ダンサーを招いた党和歌山県連主催の会合を巡っては、出席した自身の秘書を厳重注意したことも明かした。衆院に転出して首相を目指すという目標にも黄信号がともっている。

 

■西田『調べて報告する責任がある』  『私自身は参院への連絡役の立場との認識から、派閥全体のお金に関わることに口をはさむのは良くないと思った。積極的に確認をしなかったことを大変後悔し、反省している』

 

世耕議員は政倫審で、安倍派のパーティー券の販売ノルマの超過額を還流した経緯について、立憲民主党の蓮舫議員にこう釈明した。

 

安倍派の還流を巡っては、令和4年4月に同派会長だった安倍晋三元首相が中止を指示。しかし、7月に安倍元首相が死去し、翌月に世耕議員ら同派の幹部5人が会合を開いて、還流の再開を議論した経緯がある。

 

蓮舫議員は還流の再開を提案した出席者を再三尋ねたが、世耕氏は『記憶にない』と繰り返し『誰がこんなことを決めたのか私自身も知りたい』とも語った。蓮舫議員は『肝心なことの記憶はなくし、それ以外を雄弁に語るのはそれだけで信用できない』と皮肉った。

 

世耕議員は、参院安倍派を中心とした『清風会』(約40人)の会長も務める。同派では参院選の年に改選を迎える同派議員にパーティー券の販売額全額を還流する仕組みもあったが、世耕議員はこの日、清風会の解散を口にしつつ、全額還流は『何の相談も報告もないまま決まっていた』と述べるにとどめた。

 

こうした姿勢は、身内からも批判を呼んだ。この日政倫審に出席した安倍派の西田議員は、『知らない』と繰り返す世耕議員は『正直に話したと思う』と語りつつも、『世耕氏議員はなぜそうなったのかを調べ、われわれ会員に報告する責任がある』と不快感をあらわにした。

 

■『秘書や元秘書が過激ダンスショーに』  世耕議員は、安倍元首相の側近として第2次安倍政権で官房副長官や経済産業相を歴任し、令和元年9月には参院幹事長に就任した。安倍派の実力者『5人衆』に数えられ、危機管理とコミュニケーション能力は『誰にも負けない』と自負をのぞかせたこともある。周囲には首相を目指す意向を語り、そのステップとして和歌山県内の衆院選挙区へのくら替えも模索してきた。

 

しかし、今回の収入不記載事件は、順風だった世耕議員の評価を大きく傷つけた。世耕議員自身も、個人として還流を受けた金額は平成30年からの5年間で約1,500万円に達した。加えて、今回の事件で政治資金規正法違反(虚偽記入)罪で在宅起訴された安倍派の会計責任者、松本淳一郎被告は、世耕氏が同じNTT出身として、同派に紹介したとされる。

 

この日の政倫審では、問題となった党和歌山県連主催の会合に『懇親会にはうちの秘書も参加していた』と認めた。女性ダンサーが登場する企画は、世耕議員の秘書を務めた川畑哲哉和歌山県議が考案。会合には別の現役秘書も出席しており、一連の模様は写真付きで大きく報じられた。

 

世耕氏は『ああいう写真が撮られるということは極めて不適切だった。秘書の監督責任として厳しく注意し、今、謹慎を申し付けている』と釈明した。

 

自民中堅は世耕議員の苦境をみて『権勢をふるってきだけに、周囲から人が離れるのも早いだろう』と突き放すように語った。(奥原慎平筆)

 

◆近畿大学経営一族としての世耕議員は、参議院議員から衆議院議員に鞍替えして首相を目指すなどと豪語していたが、政倫審の発言や態度を見る限り、首相の器ではないね。踏み込みが足りなく、不誠実であり、知恵と勇気がみられない。とても、とても、首相の器にはみられない、だよな。情けない。

 

■■<ブラザー、3度目の変身へTOB 『ミシン→プリンター→産業器械』>ブラザー工業が3度目の変身に向けて攻めの一手を打った。業務用プリンターメーカーのローランドディージーDGが進めるMBO(経営陣が参加する買収)に対抗し買収提案することを発表した。同意を得ないまま買収に踏み切る背景には、ペーパーレス化で稼ぎ頭のプリンター製品の成長が見込めないという危機感がある。

 

日本経済新聞の取材に応じた石黒副社長は、ローランドDGについて、『産業用プリンターで非常に高いシェアと技術力、販売力、プラン努力を持つ』と話した。だが、ローランドDGは、『事前の連絡を受けておらず、ブラザーの株式公開買い付けTOBは当社取締役会の賛同を得て実施されたものではない』とそっけないコメントで応じた。

 

すれ違う両社だが、連携の始まりは2019年12月に遡る。インジェクトプリンターの共同開発プロジェクトを始め、資本提携の可能性を含めた協議を重ねてきた。ローランドDGは低溶剤インクを使ったプリンターで市場シェアの5割を握る。ペンを縦横に動かして楽譜などを作る自動製図機にはじまり、プリンター製品へと主力製品を移した。

 

1908年創業のブラザーはミシン専業から情報機器、プリンターと事業を多角化してきた。後発のプリンターでは大手と競合しない小型機の開発に力を入れた。ニッチな市場を切り開く戦略は両社とも共通する。産業器械はブラザーにとって3度目の変身の切り札ともいえる。

 

連携を強化してきたブラザーは23年9月、ローランドDGに全株取得を申し出たが、ローランドDGは24年2月にMBOを決めた。公開買い付け届け出書によると『中長期的視野での企業価値定価の蓋然性が払拭出来なかった』とする。

 

ブラザーは今回、TOB価格、5,200円、を23年9月の4,800円から引き上げた。MBOにともなうTOB価格(5,035円)より高く設定した。ローランドDGにこだわるのは、連結売上高の6割を占めるオフィスや家庭向けなどのプリンターに代わる事業の育成が必須だからだ。商業用の印刷機や工作機械などがその候補で、売上高に占める割合を23年3月期の3割から31年3月までに5割に高める計画だ。

 

ローランドDGは看板用の広告などを印刷するサイネージ用のプリンターに強い。水溶性のインクを得意とするブラザーとは補完関係にあるという。買収後もローランドDGの現経営体制やブランドは維持する方針だ。

 

ブラザーは手元の現預金が1,000億円超と、堅実な名古屋企業を代表する。640億円を投じる対抗TOBは変身への覚悟を示している。

 

◆まさにTOBは『時はカネ成』を地でいく、企業変身の妙手ではあるがなあ。同意を得ない、敵対的TOBには何かとトラブルがつきまとう、なあ。それにしても。名古屋の企業は何かにつけて、手堅いなあ。