今日の画像は、スイスアルプストレッキンのスナップ『ラウターブルネンの谷の雪解け水』、北大路欣也主演の『藤沢周平原作・三屋清左衛門残日録』、奥穂のジャンダルムより厳しく、新潟魚沼の難ルート『麻莉亜の八海山トレッキング』。広島南アルプス『春日台団地~権現峠~火山~武田山~大町トレッキングⅨ 武田山下山の風景』です。

このトレッキングルートは、広島市内から春日台の団地までバスで上がり、下山後の大町からはアストラムラインで帰るというまったく交通便利で結構なルートではあります。

 


















             <空 堀>

              <廓 跡>













     <ボランティアでつづれ織りに整備された登山道・大町コース>





        <毘沙門台団地と、背景にある権現山、阿武山>
























■■『どうするかはこの女子との談合次第。ご隠居は気になさらん方がよろしい』
『いや、大いに気になる』
と清左衛門は強い口調で言った。

『ざっくばらんな話をしよう。この前黒田欣之助が参って、この女子とは会うなと申した。小癪な言い分だが、事情があるとのことゆえ諒承した』
『・・・・』
『で、もう会わぬつもりだったが、今日はむこうからたずねて参った。他意はない。秋茄子と青菜をとどけて来たのだ。そうだな、おみよ』

清左衛門が振りむくと、おみよがいそいでうなずいた。おみよの顔は、恐怖でひきつっている。清左衛門は、軽くその肩を叩いてやってから男にむき直った。

『何を話したかが気がかりだろう。格別のことは何も話さぬ。稲の出来、秋茄子のうまい漬け方といったものだ。おみよにたずねたくばたずねてみてもよいが、無駄なことはせぬ方がよいのではないか』
『無駄かどうかは、こちらで判断させてもらう』
と男が言った。あくまでおみよをどうにかするつもりらしかった。

『さようか。では、わしはこれでこの人から一切手をひくが、ひとことだけ言っておく』
しゃべりながら、清左衛門は平松与五郎はまだかと思った。あの話を聞いた以上は、このままおみよを男たちに渡すわけにはいかないのは自明のことである。

『こちらはもっぱら下手に出て、手の内も残らず明かして来た。この女子に事なかれとねがうためだ。その気持ちを踏みにじってだな、この女子にもしものことが起こるような時は、ただでは済まさぬ。このことは承知しておいてもらうぞ』
『・・・・』


■■<佐和子のこの人に会いたい『中尾ミエ⑥』>
阿川:仕事を始めてからも反抗はしておられたんですか。
中尾:若い頃、丸くなれってよく言われて、で、丸くなったのよ。そしたら、ものすごく自分自身がつまんなくなっちゃって。これなら私じゃなくていいじゃん、と思って、そこでそうか、丸くなれってことは、持っている武器を磨いておきつつも、隠す技を身に付けりゃいいんだと気付いたの。

阿川:あと中尾さんって自分の境遇に文句を言わないタイプですよね。
中尾:置かれた環境で楽しく過ごす術というか、どういう環境であれ任せてください、みたいな部分はある。



阿川:その術はどうやって身に付けたんですか、ご両親の影響とか?
中尾:生れついてのものかな。父は遊び人だったし、母は自分で命を絶ったんですが、お葬式の時、私が笑って母を見送ったら、姉に『こういう時よく笑っていられるわね』と言われたんです。だって、笑って送らなきゃその人の人生全部を否定することになっちゃうんじゃない。でも、そう言われても私、強いなって自分でも思った。次の日から仕事しますって言ったら、『いや、休んでください』って周りに止められたけど。

阿川:根がたくましいというか、前向きというか・・・。
中尾:自分がそこでできることを探したり、楽しむのが得意なのかも。だから逆境も結構好き。渡辺プロに30年いて、辞める決断をしたのも、ずっといたら私は大事にされるのが分かっていたららなんです。



阿川:居心地がいいことを良しとされない。
中尾:ええ、ここでぬるま湯に浸っちゃったら、私、ダメになると。今だったらもうひと頑張りできると思って事務所を出たの。


■■<クリーンな新エネルギー『地中水素に熱視線』>地質学者は、CO2を排出しない新エネルギー資源の『ゴールドラッシュ』が始まると指摘し始めている。これまでは注目されていなかった、地中に存在する天然水素のことだ。



米地質調査所USGSの未公表の調査結果によると、全世界には5兆トンもの水素が埋蔵されている。米西部コロラド州デンバーで開かれた全米科学振興協会AAAS年次大会で公表前の調査結果に目を通したプロジェクトリーダーのエリスは『大部分の水素は手の届かないことろにあるだろうが、数パーセントの採掘でも、予測される年間5億トンという需要を何百年も満たせる』と話す。

燃料と工業用――特に肥料用アンモニアの原料――としての水素はこれまで天然ガスに含まれるメタンの改質でつくられてきた。その際に排出されるCO2を回収すれば『ブルー水素』、回収しなければ『グレー水素』となる。

それより少量の製造方法として、再生可能エネルギー由来の電気で水を分解して生成するのが『グリーン水素』だ。だが、コロラド鉱山大学のチャン教授は、天然水礎(『地中水素』あるいは『ゴールド水素』と呼ばれる)の利用はブルー水素やグリーン水素に比べて安価になると説明する。『ゴールド水素のゴールドラッシュが到来しようとしている』とチャン教授はAAAS年次大会で述べた。

その将来性は投資家の関心を引き付け始めている。米新興企業のコロマは2023年、米マイクロソフト共同創業者ビル・ゲイツの環境ベンチャーキャピタルVCである米ブレークスルー・エナジー・ベンチャーズBEVなどから9,100万ドル(140億円)の資金を調達した。

コロマのハーガラCBOは『地中水素は低炭素である上、土地や水資源への影響とエネルギー消費も少ないクリーンな水素の生産という並外れた可能性をもたらすものだ』と話す。

これまで科学者の間では、地中の微生物のエサになったり、化学反応で他の化合物になったりするため、地表近くに純粋な水素はほとんど存在しないはずだとみられていた。

だが、コロラド大学のテンプルトン教授は、鉄分を豊富に含む特定の鉱物が水と反応して水素が大量に生成されているというのが現在の地質学者の見解だ、とAAAS年次大会で述べた。

水素は油田や天然ガスとは異なる地質学条件を必要とする。『我々は正しい場所で正しいツールを使って水素資源を探してこなかった』とプロジェクトリーダーのエリスは言う。地質学者は今、世界各国で天然水素の埋蔵を発見している。2月には南欧アルバニア北東部のブルチザにあるクロム鉱山で年間200トン以上の水素が噴出していると研究チームが報告した。



西アフリカ・マリ共和国のブーラケブグー村が天然水素の採掘の発祥地とされることが多い。2012年以降、ほぼ純粋な水素が掘削孔から減圧せずに噴き出ており、村に初めて電気が供給されるようになった。

エリスはブーラケブグー村にある水素のガス井について、1859年の石油産業誕生に比肩する水素ブームにつながる可能性もあると指摘する。石油は同年、米東部ペンシルバニア州タイタスビルで、エドウィン・ドレークが掘り当てたのが始まりとなった。

◆ふーむ、面白いねえん。これは日経の英FT記事の転載だが、天然水素がふんだんに採掘できれば、EVなどしちめんどうな車よりも、水素自動車が無公害車として先頭に立つだろうなあ。何年後かねえ、その実現は。


■■<負担・痛みの議論放棄、『亡国の「帳尻合わせ政策」』>昭和、平成の時代に繰り返した『政治とカネ』の問題が令和の世で再び起きた。国会は疑惑の追及に時間を費やしながら実態解明に至らないままだ。賃上げや物価上昇という成長機運を政治が後押し出来ない状況が続けば、日本経済の再興は遠のきかねない。

『月500円弱』という言葉が2月6日、Xで飛び交った。少子化対策の財源として2026年度から徴収する『支援金』の1人当たりの負担だ。岸田首相が金額を示すや不満が噴出し、引用数の多さを示す『トレンドワード』に入った。

◆『財源は改革だ』 原因は首相の説明にある。500円の負担に理解を求めるのではなく、社会保障支出を圧縮して保険料を下げた上で支援金をとるので『実質的な追加負担はない』との論法を取った。

負担増の説明を避けたのは政治の責任だ。政府内で財源を議論し始めた昨春、官房副長官だった木原誠二ら首相周辺は関係省庁に『財源は身を切る改革だ』と迫った。行政の無駄を減らして財源をつくるという理屈にし、負担増には触れるなという意味だった。この時期は衆院解散・総選挙の観測が流れていた。

◆『反発避け、先送り』 日本は衆院選から次の解散まで平均2.8年。参院選も足すと1990年以降の選挙は22回で、英国の8回やドイツの9回の倍以上。地方選を含めると『重要選挙』は毎年ある。負担増の議論は選挙への影響を気にして先送りになりがちだ。防衛力強化の財源に充てる増税の開始時期もいまだ決まらない。



そうしている間に、国と地方を合わせた長期債務残高は足元で1,285兆円に膨らんだ。国際基準でみたGDP比は255%とG7の中で圧倒的に高い。

財政悪化は政策の幅を狭める。脱炭素とデジタル化を推進するための税制優遇措置は22年度、100億円ほどの想定適用額の半分も使われなかった。菅前政権が肝入り政策として導入したものの、財政に配慮した厳しい要件で企業が二の足を踏んだ。

成長に必要な政策を打とうにも、政治が財源論に及び腰では実効性を伴わない。霞が関の官僚に財源との『帳尻合わせ政策づくり』を強いるだけだ。

政治の役割は合意をつくること。人口が減る日本は『痛みや負担を誰がどう分担するか』を決め、成長分野へ財源を回すしかない。その決定者たる政治家が自らの裏金疑惑の説明から逃げていては国民を説得して理解を得るなど不可能だ。

政府・与党だけの責任ではない。1月からの国会論戦で野党は批判に傾斜し、少子化対策で財源を含めた負担増の議論は乏しい。フランスのマクロン大統領は昨年、財政状況を改善する年金改革を実施した。受給開始を62歳から64歳に上げ、公営企業の優遇も減らした。抗議デモが起き、支持率が落ちても断行したのは日本と対照的に映る。

政治を考える際、投票する有権者にも責任の一端があることは忘れてはならない。イタリアのファッション産業が競争力を持った一因は審美眼を持つ消費者が国内に多かったためとされる。経営に例えれば政党はメーカー、政策は商品、有権者は消費者である。

◆岸君の断末魔が迫っているねえ。ドラ息子の乱行といい、裏金処理の無責任な説明といい、与党の人気、支持力は相当落ちたと見るが、どうだろうかねえ。