今日の画像は、スイスアルプストレッキンのスナップ『インターラーケンへの車窓から』、北大路欣也主演の『藤沢周平原作・三屋清左衛門残日録』、奥穂のジャンダルムより厳しく、難しい北穂高の『迫力抜群のゴジラの背を進む麻莉亜』、マツダの新サブブランド『マツダスピリットレーシング・ロードスター2.0』。そして、広島の里山縦走『三滝山~丸山~大茶臼縦走Ⅰ』です。三滝山のもみじの紅葉をすませ、三滝山Bコースで山頂を目指します。

 


















































■■『待っておれ、今助けてやる』
縄をたぐりながら、清左衛門は叫び、たぐった縄で輪をつくりながら、岩から駆けおりた。そして岩の根もとにおり立つと、波に濡れていない小さな岩を慎重に眼でえらんで、海の中に踏み込んで行った。岩から岩に、小さくとびながら、釣りをしていた大岩を回ると、波に浮いている奥之助の姿が見えて来た。清左衛門は足場を固め、投網を打つように縄を投げて、奥之助をつかまえにかかった。

半刻後、清左衛門が燃えそうなものをあつめて火のそばにもどると、奥之助が起き上がっていた。顔に血色がもどっている。
『だいじょうぶか、もう少し横になっている方がよくはないか』
『いや、もうだいじょうぶだ』
うつむいたままで、奥之助は言った。

『火種が残っていたから、助かったのだ』
と清左衛門は言った。海からひき上げると、まず火を燃やし、それから奥之助の濡れた着物をはいで身体をこすってやり、肌着を一枚と綿入れを分けて着せてやった。

その間奥之助は眼をひらいてふるえていたが、顔色は真青で表情はまったく動かなかったのだ。清左衛門は一番下の肌着に胴着っをまとっただけで、その上から蓑を着て寒さをふせいでいる。

『火がなければ、2人ともこごえてしまうところだった』
清左衛門は言って、あたりを見回した。日は落ちて、青白い薄明かりのいろが海辺を覆っている。波は黒く、その波のはるかに遠い沖に、血のいろをした夕焼けの名残がのこっている。

『さて、とても着物がかわくまでは待っておれんな。暗くなるし、腹もすいて来る』
『・・・・』
『あの山を回ると村がある。あそこまで歩けるか。歩けたら着る物を借りて、家にもどるとしよう』
『わしはもう少しここにいる』
しゃがれ声で、奥之助が言った。


■■<プロスポーツ、『米との経済格差』>米大リーグで『大谷翔平(29)』、『山本由伸(25)がドジャースと結んだ契約の金額は日本のプロスポーツではありえない。年俸換算では大谷が100億円、山本が40億円。ロッテの佐々木朗希(22)もポスティングによる早期の米移籍を希望しているという。



彼らが海外に舞台を求める理由は、お金よりも高いレベルの勝負を求める本能の方が大きい。だが、報酬が高いほどレベルの高い選手が集まる。米大リーグ機構・MLBとの経済格差がこのままでは、日本のプロ野球は才能ある若者にとってMLBへの通過点にすぎなくなる。

30年前、MLBと日本野球機構NPBの市場規模に大差はなかった。プロスポーツも経済活動の一環。『失われた30年』で生じた日米の経済格差の現実を、プロ野球と大リーグは分かりやすく示している。

米国のプロスポーツの右肩上がりの収益力を支える最大の柱は高騰する放映権料。MLBでは全米向け中継分と各球団ごとの地域向け中継分を合わせれば年間5,000億円を軽く超えるという。一方、日本のプロ野球はリーグ全体で推定約500億円。圧倒的な差はなぜ生まれるのか。

日本は球団ごとの権利がばらばらで放映権を一括して販売できないから、収入を最大化できないなどの指摘がある。確かに権利を束ねれば増収につながる。だが、米国の放映権の高騰を考えれば焼石に水。



結局、スポーツへの意識の違いが大きい。米国はスポーツのライブ中継は有料が当たり前。地元チームの試合は定額課金サービスで楽しむ。広告主ではなく視聴者がお金を払うなら、放映権料は視聴者数と提供金額によって増えていく。

現在はインターネットの動画配信業者が加わってコンテンツの争奪戦が激化。さらにスポーツベッティング(スポーツの賭け)の解禁がライブ中継の価値を上げ、放映権の高騰に拍車をかけている。

日本でも専門チャンネルや動画配信でスポーツ中継は有料という流れは生まれているが、人気スポーツになるほど有料化への抵抗は強い。『スポーツは誰でも楽しめるもの』という意識があるからだ。

スタジアムやアリーナで観戦するチケットも米国は需要が多ければリセール市場で値段が上がる。大リーグのワールドシリーズのチケットなど庶民には手が届かない。日本なら社会問題となるだろう。

こうした意識の違いは、社会のあちこちで見られる。どちらがいいかはさておき、少なくともプロスポーツの日米格差は解消どころか、縮小するのさえ難しい。(日経・北川和徳筆)



◆スポーツベッティング・賭けなんていうと、PTAの叔母様方が『賭博中毒者を出す社会悪なる仕組みは絶対反対』と声を上げるだろうな。しっかし、大谷、山本らのスーパースターでなくても、横浜から大リーグに挑戦する今永昇太が、カブスから年平均1,500万ドル(21億8千万円)のオファーを受けている。今永の2023年の年俸は、この10分の1をも下回る、なんと1億4千万円なのだ。プロの選手なら、自分の選手能力を的確に評価してくれるグラウンドでプレーをしたいだろう。当然、今永の成功は、今阪神で活躍中の投手陣への励みにもなるだろう。カープの森下もなにやらMLBとつぶやいているさらし。人生は1度しかないし、選手生命はそれほど長くはない。活躍に見合うグラウンドを探すのは当然の帰結ではある。Jリーグも同じだ。今や、高校生選手が、Jリーグ入りなしで、直接欧州のクラブにスカウトされる時代だ。うかうかしておられないねえ、宮本J新会長殿。


■■<追悼『八代亜紀』>純粋に歌の仕事がしたかった。『クラブ歌手になりたい』と夢を口にした娘を、父は初めてたたいた。『仕送りはしないぞ』と父。『新年を貫くわ』と娘。感動同然で郷里の熊本を飛び出しのが当時16歳の『八代亜紀』である。

ハスキーな歌声は銀座のクラブで受け入れられ、人気の歌い手になった。そこで安定した収入を捨て、レコード歌手として勝負をかけたのは昭和46(1971)年のこと。重いボストンバッグを持ち、夜の街を回って歌を売り込む日々。手のひらにできたマメはつぶれ、血がにじんでいた。

八代の覚悟を支えたのはクラブの女性達から託された願いだという。『世の中には悲しい女が大勢いる。あなたの歌声を、そんな女性達に聞かせたい』。だからレコードを、と。出世作『なみだ恋』のヒットはデビューから2年後だった。

♪心が忘れたあのひとも 膝が重さを覚えてる(『雨の慕情』)。 
♪しみじみのべばしみじみと 思い出だけが行き過ぎる(『船歌』)

歌い出しであれサビであれ唇が歌詞と旋律を覚えている。そんな名曲の数々を残し、八代亜紀が亡くなった。

◆『悲しいね』と笑いながら歌い、『楽しいね』と悲しそうに口ずさむ――。歌唱の極意を問われ、そう語ったという。その人の歌声はときに女の情念が揺らめく『艶歌』になり、地震の被災地に届ける『援歌』にもなった。『私の歌は常に誰かの気持ちを代弁してきました』と。

歌はレコードからCDへ、そしてネット上へと足場を移し、消費される時代になった。『艶歌の女王』が残した名曲達にはしかし、歌い継がれていゆくに違いない。世代を超えて聞き手の情を揺さぶった歌声は、これからも人々の胸の中で共鳴し続けるだろう。(産経抄)



♪夜の新宿 裏通り 肩を寄せあう 通り雨
誰を恨んで 濡れるのか 逢えばせつない 別れがつらい
しのび逢う恋 なみだ恋

♪夜の新宿 こぼれ花 一緒に暮らす しあわせを
一度は夢に みたけれど 冷たい風が 二人を責める
しのび逢う恋 なみだ恋

♪夜の新宿 裏通り 夜咲く花が 雨に散る
悲しい運命を 占う二人 何故か今夜は 帰したくない
しのび逢う恋 なみだ恋 

◆八代亜紀の突然の死。難病で苦労されたらしい。ご冥福をお祈りします。

 

熊本・八代で見た、ナベヅルがたたずむ懐かしい風景を思い出しました。