今日の画像は、スイスアルプストレッキンのスナップ『インターラーケンへの車窓から』、北大路欣也主演の『藤沢周平原作・三屋清左衛門残日録』、奥穂のジャンダルムより厳しく、難しい北穂高の『迫力抜群のゴジラの背を進む麻莉亜』。そして、元気な『ムラサキカタバミ』と、雨に濡れる『ムラサキカタバミ』です。

 
























        <ぱお絵画教室>








■■鶴子町の保科塾を出ると、顔にポツリと雨があたった。おどろいて見上げると、低いところに灰色の雲がいっぱい出ていて、上空には風があるらしく雲は西から東にいそがしく動いている。雨を落としたのは、その雲らしかった。

激しく動く雲の間に、まだ七ツ(午後4時)頃の青い空が見え隠れしていたが、西空は日暮れのように暗くなっている。
――ひと雨来そうだな。
と、三屋家の隠居清左衛門は思った。いそいで鶴子町を抜けて河岸の道に出た。その道を西に行って、雁金橋のひとつ手前の小さな橋を南に渡れば、家に戻るにはかなりの近道になる。

雨は一度ぱらついただけで、清左衛門が河岸に出た頃はやんだ。しかし空は歩いている間にもみるみる暗くなって、木々の葉が半ば落ちてしまっている町が、にわかに荒涼とした気配に覆われるのが見えた。やはり雨を恐れているのだろう、すれ違う通行人が小走りに駆けて行くが、武家である清左衛門は町人のように駆けることもならない。見えて来た橋を目指して足をいそがせた。

だが、やはり間に合わなかった。清左衛門がようやく橋に踏み込んだ時に、川の上流に雨音が起きて、水面をたたくその音はたちまち清左衛門がわたっている橋に達した。清左衛門も橋も、みるみる濡れた。

たまらず、清左衛門も走った。橋を駆け抜けると、そのさきは小禄の武家屋敷がならぶ百人町である。道の両側には、雨宿りする門もないような家が続いたが、左手にようやく粗末な草葺きの笠門が見えた。清左衛門はその下に逃げ込んだ。

懐紙を出して、まず脇の下に抱えていた風呂敷包みをぬぐい、それから髪と衣服をぬぐった。風呂敷の中身は、保科奎一郎から借りて来た老子、孟子の抄本と唐詩正声である。
『今塾生はこれを読んでいます』
保科は清左衛門の晩学の志をほめてから、その本をわたして、ひととおり眼を通してから、塾生と一緒に講義を聞いてはいかがかと言った。

――あの人は・・・。
大物になりそうだな、と清左衛門はやや小やみになった雨の様子をたしながら、まるで年長の人間のようなどっしりした貫禄で物を言った保科奎一郎を思い返している。

保科は実際はまだ34歳だった。藩命で江戸に遊学して幕府の昌平黌に学び、そのあとも江戸の高名な学塾に学んで、4年前に帰国したばかりだが、藩では帰国した保科をすぐに藩校彰古館の助教に任命した。相当の学者でも、藩校に奉職する時は典学からはじまるのが普通だが、その身分を越えての抜擢である。

保科に対する藩の期待の大きさが窺われた。事実保科奎一郎は、いずれは藩校の中枢に坐る司業、学監の地位にすすむ器だろうといううわさも、清左衛門は耳にしていた。


■■<NMN狂騒曲Ⅷ『デジタルプラットフォームの責任』>相手業者の代表者は『パターンがあるから似たようなのができるこはある。後で作ったがたまたま似たのなら引き下がろうと思った』と答えた。業者の代理人弁護士は楽天からの撤退理由について、『レビューが大量に消えるトラブルがあり、抗議しても楽天が戻さず、こちらから出店をやめた』と説明。NMNの含有量を9割と表示していた点は『表記ミスですぐ是正した』としている。

朝日新聞が楽天とアマゾンで人気のNMNサプリを調べたところ、2商品でNMNが検出出来なかった。そのうち1商品を扱うのが楽天から姿を消したこの業者。もう1商品も、親族の業者が販売していた。

 

 

     <NMN \64,800 アマゾン>



楽天やアマゾンは『デジタルプラットフォーム』と呼ばれ、消費者に『売買の場』を提供しているだけ、というのが建前だ。ただ、販売業者への取材では、売り上げの3割が広告費や手数料などの形で通販サイトへ払われる例もある。

楽天は『個別の業者については回答しかねる』としつつ、『食品は安全性の調査などの対策を強化している。含有成分の虚偽表示の商品は販売者が意図せず扱う可能性もある』とした。

アマゾンは『サイト上で商品を販売する外部事業者には法令や規制、規約の順守を求めている。安全性の低い商品や規約違反の商品が掲載されないよう事前に阻止し、問題のある商品の検出にも努めている』と回答した。

昨年5月施行の『取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律』では、消費者の苦情があれば調査や必要な措置を講じることを『努力義務』と規定した。

ネット取引の消費者問題に詳しい板倉陽一郎弁護士はこう話す。『不良品が見つかれば、通販サイトが販売業者に代わって返金などの対応をする例はあるが、それは消費者が声を上げた場合の話。埋もれた被害の対応まで期待するのは難しい』。


■■<あの人への手紙『子供達へ ありがとう』>親の役目は、子供を社会人として送り出すことだと聞いたことがあります。だとするなら、私達の役目は任務完了です。

母親として2人の男の子を育てる中で、将来の教育環境を考えて就職を、と40歳を前にパートから正社員の仕事に就くことが出来ました。

教育資金のためにと思っていましたが、仕事は思いのほか順調で、自身のスキルを高める場となりました。パソコンでの文書作成や電話応対など、いくつかの資格も取得して自信を持つことが出来、子供達のためと勢い込んでの仕事が、本当は自分の成長になっていたのだと気付きました。

あなた達は志望校に入り、卒業し就職して家庭を築いています。先日、長男が双方の両親を旅行に招待してくれ、『夫婦の両親と旅行なんて仲がいいんだねと言われたよ』と微笑んでいました。



次男一家は海外勤務が多く、私達は勤務地に2週間くらい滞在し、あちこち旅行を楽しむことが出来ます。

今は親としてあなたたちから有り余るほどのご褒美をもらっています。子育ては親を成長させてくれ、世界を広くしてくれたのですね。

ありがとう。私達の家族でいてくれて。今、幸せですよ。(ペンネーム・アップルパイ 大阪78)

◆やさしい、アップル・パイさんだねえ。素晴らしい。


■■<『脆弱な中国』がいる未来>シンガポールに隣接するマレーシア・ジョホールバル州で話題の『ゴーストタウン』を見る機会があった。経営不振の中国不動産大手『碧桂園控股』が開発する超巨大プロジェクトだ。

広大な土地に『完売』の高層マンションが林立しているが、街に人の気配はない。購入者の多くが海外にいるためだ。なぜ彼らは辺鄙な開発物件をこぞって買ったのだろうか。

シンガポールの金融関係者がカラクリを教えてくれた。『あの物件は中国で人民元で買えたからだ』。碧桂園の国内高額物件の特典だったこともあるという。

人民元には厳しい資本規制があり、将来に不安を抱く富裕層は資産を海外に移すため地下銀行やハンドキャリアーなど様々な苦労を重ねている。この物件は人民元を外貨資産に替える便利な手段だったというわけだ。

習近平政権下の中国は『強さ』と『弱さ』の両極端のはざまにある。挙国一致で進める科学技術振興や軍事大国化が加速する一方、国家としての脆弱性がますます目立つようになってきた。なかでも、国を信頼できずに流出するヒトやカネの潮流は、中国の覆い隠せない『不都合な真実』にほかならない。国連が公表した『国際移民 ストック』統計で、中国の移民数はすでに1,000万人を超えた。

とりわけ病巣の深さを示すのが、知識層や富裕層に脱出願望が強い点だろう。英移民支援会社の予測によると、2023年の富裕層(投資資産100万ドル超)の純流出国1位は中国だった。過去最高の1万3,500人で2位のインドの倍以上となった。純流入上位にはオーストラリア、UAE、シンガポールが並んだ。



◆日本はこれまで中国の強さを前提として防衛戦略や経済安全保障などの対中戦略を議論してきた。習政権の異質さが加速する以上、今後は『脆弱な中国』をにらんだ対策も前倒しで進めていく必要がある。問題は弱さ前提の戦略は選択肢がより多岐にわたることだ。

日本が中国から流れ込む人や資金を受け入れるなら、前もってスパイ対策や外国人向け不動産規制の是非を議論しなければならない。移民問題も『どんな人々をどれくらいどんな目的で受け入れるのか』によって取るべき手段は様々だ。

投資家向けビザを例に取れば日本には『経営・管理ビザ』がある。500万円以上の出資や事業所の確保などが要件で、来年度にも企業家は当初の出資金や事業所が不要となる予定だ。

世界的な人材確保競争を受けた緩和措置だが、有力なアントレプレナーが起業する国を選ぶ場合、基準はビザだけではないだろう。新規ビジネスに関する規制や資金調達、情報ネットワークといったビジネス環境も大きな要因となるはずだ。

一方、富裕層向けの投資ビザとして見た場合、オーストラリアやシンガポールは10億円単位の最低投資や雇用創出を永住の用件として提示する。超富裕層に人気のシンガポールは議会報告によると11年以降、投資移民から6,000億円超の直接投資を獲得した。

結局、中国の『強さ』と『弱さ』の両極を見据えた対中政策は『日本はこれからどういう国になりたいのか』という国家戦略が先なければ定まらない。日本に今問われているのは、そのグランドデザインを描く力がるかどうかだ。

ちなみに前述した世界の富裕層の流出入予測において日本は純流出国10位だった。日本の富裕層が脱出しているためだろう。中国の弱さより先に日本が直視すべきなのは、自らの『不都合な真実』であるようだ。(桃井裕理筆)

◆もっともなる議論だねえ。第一、日本にはスパイ防止法を作る考えがあるのかどうかも疑わしい。北朝鮮による拉致問題の教訓を国家政策に何にも役立出せていない。そればかりか、冤罪の創出に力いっぱいの投球をしている警察、検察官僚だ。日本の先行きは暗い、なあ。