大きくなった時には、今日、見た人たちはみんないなくなるんだ | Photo by Semmei

Photo by Semmei

旅の記憶

その人は、僕より12歳年上でとても変人でしたが
今の僕にとてもとても大きな影響を与えた人です
年に一回くらいしか会えなかったけど、僕が写真で食っていくって言ったら
半年に一回は電話をしてくれて
「ちゃんと生活してるか?」
「早くいい人見つけて結婚しろよ」と声をかけてくれました

彼の仕事場の机の上には僕のポストカードが飾ってあったそうです




小学校2年生の時
なぜか理由は分からないけど「死」と言うものにとても疑問を持ってました
「人はなぜ死ぬのか」「死んだらどうなるのか」そんなことばかりを聞いていた僕にある日、父親は名古屋の人ごみの中に僕をつれて行き、帰りに三越の中の喫茶店であんみつとババロアを食べて帰ってきました
何を話したのかを全く覚えていないけど唯一覚えているのは
「せんめいが大きくなった時には、今日、見た人たちはみんないなくなるんだ」
その言葉だけはなぜか小学校2年生の僕に強く刻まれました

母親が死んだとき、いつも大きな声で笑い話しかしなかった親戚のおばちゃんが
僕にあった瞬間
「心配しなくてもいい、誰もが必ずこの道を通る」
と言ったこと



もっとその人の写真撮っとけば良かったな~
彼がこの世からいなくなってもうすぐ2年



人の生や死を封じ込めたような写真が撮りたい

滲み出る過去も、先を見る目も、その人の瞬間を切り取って人生を封じ込めた写真の中には
生も死も混在しているはず
その写真にはきっと言い訳のような説明も、第三者から答えを求める質問もないはず




この写真はナショナルジオグラフィックのカメラマンに褒められて、僕が写真で食べていこうと初めて思った一枚です