学校行事の一つ、運動会。両親を亡くしていた私には祖母が見に来てくれていた。
とある年、祖母の体調が悪く運動会を見に来る事ができなくなってしまった。
「無理せんでいいけ、今日は一人でいい。」、と祖母に言い、小学校にその日は行ったのを覚えている。
運動会は何事もなく進行し、お昼の昼食の時間をむかえた。
今日はばあちゃんがおらんけ、どっか一人で食べんといけん、と思い、誰もいない(確か体育館の裏だったと思う。)所を見つけそこで弁当を食べた。
幼少の頃から一人でいる事が多い私には「さみしいな」と思う気持ちはなかった。
こんな誰もいない所で弁当を食べようと思ったのは、まわりの大人に気を使わせたくなかったからだ。
祖母の作ってくれたおにぎりを食べながら「ばあちゃんが今日これなかったから人とは別の景色を見ることができた、よし♪」、と思った。
天気のいい中、午後のプログラムも無事に終わった。運動会、それなりに楽しかった。
家に帰り、夕食時、今日の運動会の事を祖父母に話した。
「そうか、一人は○○だけやったか?」、と祖父から言われたので、「うん。」とだけ私は言った。
すると祖父から「今経験して感じている事が必ず役立つからな、はげめ。」、と言われた。
祖母の顔を見ると、祖母はいつものように微笑んでいた。
還暦近く生きてきた今から考えると祖父が言ったその時の言葉の意味がよく分かる。
「お前にはもう両親はいない。どのような事をしてもそれを埋め合わせはできない。だからお前はお前の人生を切り開いて欲しい。『いなかったからこそ』のいい人生を!」、と祖父は私に☆
<対応年代:10代>