第53話((0時間目)) | **我が人生の旅路**

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                     英 満(はなぶさ みつる)

 高校入学後、少しして、時間割に1時間目の前に「0時間目」なるものが出現した。何だこれは!?、と思った。
 この「0時間目」の授業は、いわゆる課外授業(補講)にあたるものだった。
 早速、その「0時間目」のことを家で祖父母に話(夕食時、今日の出来事等を話するのが習慣になっていた。)した。
 すると祖父は、「課外とか受けんでもいいぞ。ばぁちゃんが早く起きないけんようになるしな。」と言った。
 それに対し、「余分に勉強するのいややし、ばぁちゃんのこともその通りやけん、やめとく。」と祖父に返答した。
 祖母は何も言わずに、ただ微笑んでいた。
 翌日、担任の先生に「課外受けないことにしました。祖母を早起きさせるのがちょっとかわいそうだと思ったので。」と話した。
 そう言うと、「お前ならまぁいいか。分かった。」と言って、すんなり課外を受けなくていいことになった。
 実の所、余分にお金を出して、課外を受けられる程の余裕は、祖父母しかいない我が家にはない、というのが実情だった。
 今思えば、学校からの教科書と問題集に亡き父が使っていた参考書等でよく受験勉強ができたな!?、と思う。きっと運が良かったのだろう。
 時々、祖父の知人がやっている本屋さんで立ち読みをさせてもらい、足りない知識等の補充をしたりしていた。(殆どは、好きなものを読んで、というか眺めていたような気がするが。)
 さて、この文章を書き始める少し前に、「あ、そうだったのか。」と思った。
 それは、「0時間目」って必要だったんだ、ということだ。
 教育事業を手がけてきて、本指導(絶対に最初から受講させるべきもの)の前に「0時間目」の前指導を設定しておけば、本指導に遅刻する生徒はほぼいない、ということが実証できたからだ。
 そう、当時の高校もきっと1時間目の授業からきっちり指導できるよう、「0時間目」を設けていたのだろう。
 「0時間目」、受けなかったけど、ありがとう♪
<対応年代:10代~50代>