第13話((雨降って地固まる)) | **我が人生の旅路**

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                     英 満(はなぶさ みつる)

 梅雨の時期になるとふと思い出すことがある。
 会社を設立してまだ半年も経たない頃、とある地方議員さんとその奥さんのお友達にPCのお世話とサポートをして欲しいとの依頼がきた。
 当時、会社の運営が軌道にのるまでの間ということで、関西から友人が応援にきてくれていた。その彼がとってきた仕事であった。
 私はデスクトップパソコンをハンドメイドにより提供していた。メーカーのPCではなくオリジナル的なものを好むお客さんにとってはこの手作りパソコンはうけがよかった。
 が、そういうお客さんはある程度パソコンのことを知っている人たちであった。
 だからこの話を聞いた時、「普通のお店で売ってるPCでいいんじゃないかな!?」と友人の彼に言ったが、彼は、「それではうちのアピールにならないし、もう話を進めてしまったから。」と言い返した。
 私は、彼がせっかくとってきた仕事なんだし、とこの件を承諾した。
 商品を無事納品してその後のサポートもやっていた最中、議員さんの奥さんがうちのPCにケチをつけてきた。奥さんは、PCは全く使用していなかった。
 私のところのPCが高かった、というのがクレームの全てであった。そこを通してあと2台納品していたが、3台とも返品の上、支払い代金を全額返金して下さい、という連絡が入ってきた。これには驚いた。
 既に納品して1ヶ月以上経過していたので、めちゃくちゃ言いよるな、と少し憤慨した気持ちになった。
 私は、議員さんにはお世話になっていたが、奥さんとは殆ど面識がなかった。家の中のことは奥さんが仕切っていたらしく、議員さんはこの件に関して何も言ってはこなかった。
 友人の彼に、「議員さんの立場を考えて、この件は奥さんの言う通りにしとこう。段取りの方宜しく頼みます。」と言った。
 それに対して彼は、「お金返さんでもええんちゃうの!!」と聞いてきたので、「今は損をしよや。」とだけ答えた。
 梅雨のある雨の夜、私は議員さん宅にPCを引き取りに行った。奥さんにお金を渡してPCを車に詰め込んでさっさと戻ろうとしたとき、議員さんが玄関から出てきた。
 車に乗ろうとしていた私に議員さんは、「○○くんすまんね、許して欲しい。」と言って深々と頭を下げられた。
 私は、「気になさらないで下さい、私は大丈夫ですから。」と言い、笑顔で別れた。 
 帰りの車の中で、「この仕事はすべきではなかった。しかし、承諾したのは私なのだから、責任をとらねばならないのは当然である。」と思った。そして、「今後このような失敗をしないよう心がけていこう☆」と決意した。
 この件は、私のその後の仕事のあり方を決定するものであった。
 それは、私の直接知りうる範囲のお客さんとの関係において我が社はうまくやっていくことができるのだ!!ということであった。
 このやり方では会社を大きくしていくことは無理に違いない。だけど、小さくても堅実な会社にはしていけるはずである。
 みえないお客さんではなくて、傍にいるお客さんへのサポート=心と心がふれあえる、そんな仕事にこれからもずっと携わっていきたい♪
<対応年代:30代>