映画『僕たちは希望という名の列車に乗った』 | 普通人の映画体験―虚心な出会い

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私という普通の生活人は、ある一本の映画 とたまたま巡り合い、一回性の出会いを生きる。暗がりの中、ひととき何事かをその一本の映画作品と共有する。何事かを胸の内に響かせ、ひとときを終えて、明るい街に出、現実の暮らしに帰っていく…。

2019年7月19日(金)「アップリンク吉祥寺」(東京都武蔵野市吉祥寺本町1丁目5−1 吉祥寺パルコ地下2階、吉祥寺駅北口から徒歩約2分)で、15:00~鑑賞。

「僕たちは希望という名の列車に乗った」

作品データ
原題 DAS SCHWEIGENDE KLASSENZIMMER
英題 The Silent Revolution
製作年 2018年
製作国 ドイツ
配給 アルバトロス・フィルム/クロックワークス
上映時間 111分


『アイヒマンを追え! ナチスがもっとも畏れた男』本ブログ〈February 05, 2017〉 本ブログ〈February 07, 2017〉でドイツ映画賞6部門を制した気鋭のラース・クラウメ監督が、旧東ドイツで起こった知られざる史実に触れ、新たな創作意欲をかき立てられた実録ドラマ(青春群像劇)。1956年のハンガリー動乱で市民が犠牲になったことを知った高校生たちが、純粋な気持ちから授業中に実行した2分間の黙祷が“社会主義国家への反逆”とみなされ、当局によって追い詰められていく中で繰り広げる葛藤と友情の行方を描く。事件の当事者となった19人の生徒の一人、ディートリッヒ・ガルスカ(Dietrich Garstka、1939~2018) が自身の体験を記したノンフィクション“Das schweigende Klassenzimmer:eine wahre Geschichte über Mut, Zusammenhalt und den Kalten Krieg”(2006)(大川珠季訳『沈黙する教室 1956年東ドイツー自由のために国境を越えた高校生たちの真実の物語』アルファベータブックス、2019年)を下地にしている。レオナルト・シャイヒャー、トム・グラメンツ、ヨナス・ダスラーをはじめ、『あの日のように抱きしめて』などのロナルト・ツェアフェルトや、『ヒトラー暗殺、13分の誤算』などのブルクハルト・クラウスナーらが共演。

ストーリー
まだ「ベルリンの壁(Berliner Mauer)」が建設される前の1956年の東ドイツ。スターリンシュタットの高校に通う19歳のテオ・レムケ(レオナルト・シャイヒャー)とクルト・ヴェヒター(トム・グラメンツ)が、列車で西ベルリンの駅に到着した。労働者の子であるテオとエリート階層のクルトは、対照的な家庭環境で育ちながらも固い友情で結ばれ、しばしば祖父の墓参りを口実にして西ベルリンを訪問していた。この日もちょっとした冒険気分で映画館に忍び込んだ二人は、思いがけないニュース映像を目の当たりにする。スクリーンに映し出されたのは、自分たちの国と同じくソ連の強い影響下に置かれたハンガリーで、数十万の民衆が自由を求めて蜂起した様子だった。
ハンガリー動乱の光景がまざまざと脳裏に焼きついたままスターリンシュタットに戻ったテオとクルトは、テオのガールフレンド、レナ(レナ・クレンク)など数名の仲間と共に、同級生パウル(イザイア・ミカルスキ)のおじさん、エドガー(ミヒャエル・グヴィスデク)の家を訪ねる。そこでは法律で禁じられている西ドイツのラジオ局RIASの放送を聴くことができる。ラジオに耳を傾けると、ハンガリーの民衆蜂起は悲惨な結果を招き、数百名の市民が命を落としたという。ハンガリー代表の主将である英雄的なサッカー選手プスカシュも死亡したとの知らせは、生徒たちにショックを与えた。
後日、クルトが教室で皆に呼びかける。「ハンガリーのために黙祷しよう。死んだ同志のために」。しかし東ドイツでは、ハンガリーでの蜂起は“社会主義国家への反革命行為”という非難を免れない。それを懸念したエリック(ヨナス・ダスラー)は「気は確かか?」と反発するが、テオもクルトに加勢して「ソ連軍は撤退すべきだ!」と主張する。そして多数決の末、クラスの20名中12名の過半数が賛成し、一同はその直後の歴史の授業で2分間の黙祷を実行した。
彼らが純粋な気持ちで行なった黙祷は、大人たちの深刻な反応を呼び起こした。教師から報告を受けたシュヴァルツ校長(フロリアン・ルーカス)は、来春に卒業試験を控えている生徒たちのために事を穏便に済ませようとするが、郡学務局の女性局員ケスラー(ヨルディス・トリーベル)が調査に乗り出してくる。一人ずつ呼び出された生徒たちは、事前に意思を統一して「黙祷はプスカシュのために」と答えるが、政治的な意図を疑うケスラーは納得しない。プスカシュの死がRIASの誤報だったと知らされたテオは、どこで西側のラジオ放送を聴いたのかと詰問される。そして「特に反抗的」という理由でテオに訓告処分が下され、製鉄所で働くテオの父親ヘルマン(ロナルト・ツェアフェルト)は、「次は退学だ」と校長から警告を受けることに。
当局の厳しい調査は、さらに続いた。人民教育相のランゲ(ブルクハルト・クラウスナー)までが直々に教室にやってきて、「1週間以内に黙祷の首謀者を教えろ。さもないと、クラスの全員を卒業試験から締め出す」と言い放ったのだ。その一方的な宣告に生徒たちは激しく動揺し、最初に黙祷を呼びかけた“首謀者”のクルトは責任を痛感せずにいられない。彼らにRIASのラジオを聴かせたエドガーは当局に拘束され、テオの将来を案じてランゲに赦しを請うたヘルマンはすげなく追い返されてしまう。あまりにも急激な事態の悪化は、もはや誰にも止められなかった。
再び首謀者の特定に執念を燃やすケスラーの聴取が始まった。生徒それぞれの家族の複雑な事情を入念に調べ上げた彼女は、脅迫にも似た尋問で彼らを一人ずつ精神的に追いつめていく。もしも生徒たちが首謀者の存在を認めなければ、彼らは卒業資格を剥奪され、この国での輝かしい未来を閉ざされることになる。大切な友を密告してエリートへの階段を上がるのか。それとも信念を貫いて大学進学を諦め、労働者となる道を選ぶのか。かくして人生を左右する過酷な決断を迫られたテオとクルト、そしてクラスの仲間たちは、大人たちの想像を超えた驚くべき行動に出るのだった…。

 アップ ダウン
「沈黙する教室」①
「沈黙する教室」②
「沈黙する教室」③
「沈黙する教室」④

▼予告編