映画『アンナ・カレーニナ ヴロンスキーの物語』 | 普通人の映画体験―虚心な出会い

普通人の映画体験―虚心な出会い

私という普通の生活人は、ある一本の映画 とたまたま巡り合い、一回性の出会いを生きる。暗がりの中、ひととき何事かをその一本の映画作品と共有する。何事かを胸の内に響かせ、ひとときを終えて、明るい街に出、現実の暮らしに帰っていく…。

2019年1月22日(火)下高井戸シネマ(東京都世田谷区松原3-27-26、京王線・東急世田谷線下高井戸駅から徒歩2、3分)で、12:15~鑑賞。
「アンナ・カレーニナ ヴロンスキーの物語」
作品データ
原題 Анна Каренина. История Вронского
英題 Anna Karenina:Vronsky's Story 
製作年 2017年
製作国 ロシア
配給 パンドラ
上映時間 138分


ロシアの文豪トルストイの『アンナ・カレーニナ』(1877年)にヴィケーンチイ・ヴェレサーエフ(Vikenty Veresaev、1867~1945)の日露戦争の体験記(“In the War”〈1906〉)を取り入れ、ヒロインの死後の物語を描いたドラマ。軍医のセルゲイ・カレーニンは、幼い自分と父から母を奪ったアレクセイ・ヴロンスキーと出会い、母の真実を聞かされる。監督は『ゼロ・シティ』『蒼ざめた馬』のカレン・シャフナザーロフ。出演は『提督の戦艦』のエリザヴェータ・ボヤルスカヤ、『オーガストウォーズ』のマクシム・マトヴェーエフ。

ストーリー
日露戦争が勃発した1904年の満州。軍医として戦地に赴いていたセルゲイ・カレーニン(キリール・グレベンシチコフ)のもとに、患者として一人の大佐が運ばれてくる。彼の名は、アレクセイ・ヴロンスキー(マクシム・マトヴェーエフ)。名を聞いて、セルゲイは凍りついた。
この男こそ、幼い自分と父から母を奪い、さらには母が自ら命を絶つ原因となった人物だった。一時は殺意を抱くほど憎んだ相手だが、年齢を重ねた今、母の真実を知りたいと願うセルゲイ。その問いに答えて、ヴロンスキーは言った。「人は記憶を捏造する。愛の真実は無数にある」と。そして、彼にとっての真実を話し始める。
1872年の冬。母親を迎えるためにモスクワ駅を訪れたヴロンスキーは、政府高官アレクセイ・カレーニン(ヴィタリ―・キシュチェンコ)の妻アンナ・カレーニナ(エリザヴェータ・ボヤルスカヤ)と出会う。後日、舞踏会で再会したアンナとヴロンスキーは、急速に親密になっていく。二人の関係はたちまち世間の噂となり、アンナの夫カレーニン伯爵の耳にも届く。やがて、夫からヴロンスキーとの関係を問い詰められたアンナは、彼への愛を吐露してしまう。さらに、アンナはヴロンスキーとの子を身籠っていた。だが、世間体を気にするカレーニン伯爵は、離婚を認めなかった。そんなアンナの周りからは次々と友人たちが去り、ヴロンスキーと暮らすことのできない彼女には、嫉妬や猜疑心が芽生え始める。紆余曲折を経てヴロンスキーの子を出産したアンナは、ついにカレーニン伯爵と離婚。だが、夫が手放さなかった息子セルゲイ(マカール・ミハルキン)とは別れることに。娘のアーニャが生まれながらも、セルゲイと会えないことに苛立つアンナは、密かに息子の誕生日にカレーニン伯爵の屋敷を訪問。再会したセルゲイに、善良で立派な父を愛するよう泣きながら訴える。その一方で、罪悪感に苛まれたアンナは、ヴロンスキーとの間に生まれた娘を愛することができずにいた。ヴロンスキーはそんなアンナを持て余しながらも、社交界から距離を置き、家族で田舎へ移る計画を立てるが…。

▼予告編